第18話 世渡り上手
聞き覚えのある地名を耳にして、数年前に茉莉達と共に、噂話の検証の為に大捜索した記憶が蘇った。
何でも願い事がかなうとかいう話で、石ころを七つ集めなければならないとか聞いたけど、どこの少年漫画の話だと思った。
「罪在の森は、罪を持った人間には厳しく、罪を認めた人間には優しい森だよ。けれど、懺悔の用意ができていない人間ははいるべきではないね。かなり高い確率でひどい目にあうから。ふぅ、ほんとにね」
「行った事があるのか」
「え? ま、まあね。それより……」
言ったんだろうな。
けど、どんせ何かを見たりしたとしてもそれは勘違いだろう。
動物か風に揺れた茂みか何かを幽霊とかと勘違いしただけなのだ。
本人が焦った様にして誤魔化すので、それ以上追求しないでおいた。一応初対面でもあるわけだしな。
「けど……罪を懺悔した人間がそこに足を踏み入れると、災の寵愛を受けて特別な力をもらう事ができるんだ。興味深いと思わないかい? 実際に科学では説明のつかない力を行使する子もいるんだよ。ただ、そういう子は忌み子として扱われ、村八分同然にされちゃうんだけどね。ご機嫌取りはするくせに、災を恐れるあまりに迫害はする。愚かしい事だねまったく」
呆れる様な見切りをつけているようなそんな表情を浮かべる織香だが、深くは突っ込まないでおく。
あったばかりの人間に説教ができるほど、俺は人間ができていない。
「随分詳しいんだな」
「そりゃあ、こう見えてボクは結構病弱な身でね、本とかネットとかゲームとかテレビぐらいしか暇つぶしの道具がないんだよ」
結構あるだろ。割と。
病弱だのと言ってるが、目の前の少女は健康そうに見えて、とてもか弱いという形容詞がつくような人間には見えなかった。
「何だい、その目は? 信じてないとでも言うような目じゃないか、まったく。ベットの中から動けない生活は意外と退屈なんだよ。まるで鳥籠に閉じ込めれた鳥になった気分だよ。分かって欲しいなぁ。ボクのこの憂鬱」
「鳥なら飛べるだけマシだろ」
「あー、そんなこと言っちゃうんだ。意地悪な人だなぁ。今夜ネットにこんな意地悪なこと言う人がいましたって書き込んでやるんだから」
「構ってやる人間も大変だな」
「つーん」
構ってほしそうにしていたが、すげなくあしらったら機嫌を損ねられた。
そんなベタなセリフを言って拗ねるやつが、まさか茉莉以外にいるとは思わなかった。
こんなぺちゃくちゃ喋る病人なんていてたまるか。
きっと猫かぶりがうまいだけなんだろう。
俺と違って、いちいちムカつく人間に腹を立ててやりあう事もないんだろうし、この少女の場合は大人の対応をとってみせるのだろう、
世渡りとか得意そうだな。




