第17話 知識を語る少女
一花町 社 AM11:00
織香と名乗った少女は女性にもかかわらず、自分の好きな物語のキャラクターをなぞって園児、ボクなどという一人称を使いながら水が流れる様に会話を始めた。
出会ったばかりの人間だというのに相手の個人情報の一つが早急に分かったのは、彼女が結構な知識ひけらかしタイプだったからだろう。
自分と同じ暇人を見つけたと思った彼女は、饒舌になって色々な事を教えてくれた。特に頼んでもいないのに。
声を張れば遠くまでよく通りそうだが、説明する声音が今は小さく、ささやくようなそれは知性的な色を帯びている。
「この社はだね、多くの人間の遺骨が納められているんだよ」
「遺骨? 死んだ人の骨か?」
「そう。君は彩葉町の人間だね。ボクには分かるよ。気を悪くしたら申し訳ないんだけれど、彩葉町では昔いろいろと陰惨な事件がおこったからね、親族が途絶えたりして、弔う人がいなくなった墓をこっちに移した名残が残ってるのさ」
木陰のベンチを見つけて「君も座りなよ」なんて一言声をかけて来た織香が得意げに、こんな風にこの社についての知識を語り続ける。
冬の季節という事もあって、寒空のベンチに座るなんて苦行ものだが、近くの大木がちょうどいい風よけになっているのと、こだちから降り注ぐ陽光が若干強めなため、寒風に凍えることはない。
「彩葉町には災という神様がいるんだ。その神様の機嫌が悪くなると、作物が育たなかったり、天候に恵まれなかったり、洪水が起きたり、地震が起きたり、または眠っていた化け物が起きたりする。そう考えた昔の町の人たちは、災のご機嫌取りをするために、地域であぶれた人間とか罪人とかを殺して生贄に捧げていたらしいよ」
「聞いた事ないぞ」
そんな物騒でたいそうな話、地元で育った俺の耳には欠片も入ってきていない。
と、俺がそう言えば、織香は当然だとでもいうような態度で肩をすくめてみせた。
「そりゃそうだよ、日常で聞く様な話でもないし。町の評価に関わる事なんだから」
得意そうに語る彼女はとても楽しそうで、陰惨な内容にもかかわらず、俺という人間に相手になってほしくて仕方がないようだった。
彼女は笑みを浮かべながら、俺の住んでいる町がある方角を視線で示した。
「でね、その街の人達が最初に埋められていたのが罪在の森と言うんだ」
「あそこか」




