第14話 明日にいけない
吸血鬼の眠る家 永野家 私室 PM11:55
時が知らない間にループしているのが恐ろしくて眠れなかった。
何が起こったのか確かめたいという気持ちもあったが、純粋に理解できない事が知らない間に起こるのが怖かったのだ。
だから、今意図的に眠ろうとしても、絶対眠れないだろう。
「何でこんな事に」
文句がでる。
二度目の1月10日が実は俺の勘違いで1月11だったらどれだけ良かったか。
でも違う。
やっぱり今日は紛れもなく1月10日で、それでいて同じ事が繰り返されていた。
俺の行動で変わった事もあったけど、でも関わらないところではおおむね同じ事が起きていたはずだ。
「……」
何か俺にできる事があれば良かった。
そしたら不安も少しは紛らわせることができたのに。
でも、俺には時間のループに関する知識もないし、出来る事なんてありはしないから。
無言で部屋の中で途方に暮れているしかないのだ。
そうこうしている内に深夜の12時。
午前0時だ。
携帯の時計の時刻表示を見つめていると、その時が来た。
途端に、何か音がする。
「っ!」
どんどんと何かを叩く様な音、誰かを急く様な調子で叩かれている音が。
辺り一帯に響き割ったった。
なんだこれは。
しばらくびびってその場を動けなかったけれど、じっとしていても詳細は分からないので、おそるおそる音の発生源を探る。
「上?」
音は上からしていた。
天井とかではない。
もっと、上の方。
空からだ。
窓を開けて夜空を見ると、空がひび割れていた。
「は……?」
何だこれ。
意味がわらかない。
音がするたびに、空日ひび割れが起きて、夜空がコンクリートの壁のようにボロボロと剥がれ落ちてきている。
こんなおかしな状況だと言うのに、しかし周囲の住民は誰も騒いではいなかった。
「……母さんっ。父さんっ!」
いい年になって、両親の名前を必死になって呼ぶなど恰好悪いにも程がある。だが、仕方ないだろう。驚きすぎてそんな事どうでもよくなってくる。
しかし、下の階の寝室にいるであろう母と、そして父の姿を探しに行くがどこにもなかった。
忽然と姿を消したみたいだった。
誰もいない寝室を前にして頭を抱えるしかない。
「何だよ、一体何がどうなってるんだ」
次第に音が大きくなってくる。
夢だと思いたかった。
質の悪い悪夢だと。
けれど、俺は眠っていない。
なぜなら眠れなかったから。
これなら何も知らないまま眠っていた方が良かった。
けど、今更眠るなんてできっこない。
眠って、それでどうする。
この異常事態が収まるのか。
そもそも何でこんな事が起きてるんだ。
「――っ!」
ふいに携帯が震える。
メールの着信だった。
そうだ時刻の確認をした時からずっと持ってたのだ。
「茉莉?」
『未来ー、大好きー。えへへ』
気が抜ける様なメールだな。
お前が俺に懐いていることはよく知ってる。
だが、こんな夜中にあの幼なじみからメールを受け取ったことは一度もない。
あいつはたまに夜更かしはするが、基本的には健康な生活を送らせているからな。
電話をかけてみる。
『未来、まだ起きてたのー? 眠った方が良いよー』
それを言うなら年下のお前の方がだろ。
だけど、少しあいつのおかげで冷静になれた。
いや、茉莉は「ここに」いるのか……?
俺の両親はいなくなってるのに。
「茉莉、お前外の事分かるか」
『外ってー?』
「いや、分からないなら何でもないんだ」
『未来、落ち込んでるー? ちょっとこわい?』
「何でだよ」
『あたしはねー。未来の幼なじみだからー』
だからよく分かるって事か。
俺が茉莉の事をよく知っているように。
響いてくる音は段々大きくなってくる。
外は、あまり確かめたくないな。
一体どうなってるんだか。
あんな風景を見た後なのに、冷静でいられる自分に少し驚いた。
茉莉があんまりにも呑気だからだろう。




