第11話 終わらない今日
居心地の悪い基地での時間を終えて、帰路へ。
途中愛で茉莉と一緒に歩いて、近所で分かれて帰宅した。
家へと帰った俺は、いつも通りに夕飯を食べてちゃんと風呂に入って、明日の準備を整えて布団に入る。
そして、いつも通りに眠る前の空いた時間に携帯を弄っていると、メールが何通か届いていたのが分かった。
『宝探し、がんばろー』
『応援してるー』
『ヒントはねー。猫ちゃん!』
茉莉からだ。
今も自分の家で何かをしながら、俺が宝を見つけ出すのを待ち遠しく思っているのかと思うと、苦笑がもれる。
『頑張るのは、当たり前だろ』
『自分で言い出したクセに応援しなかったら薄情だ』
『猫って何の事だ。名前か、場所か?』
返信してやればすぐに、またメールが返って来た。
どうやら暇らしい。
『秘密ー。猫ちゃんは猫ちゃんだもん!』
返信。
『そうか、それならしょうがない。じゃあもう聞かん。夜更かししないで、早く寝ろよ』
『えー、もっとお話しようよー』
携帯を打ちながら慌てている茉莉の様子が目に浮かぶようだった。
それから、何度か他愛のないやり取りをした後に、お休みの挨拶をして携帯を置こうとした。
窓の外に見える近所の家々は、消灯しているところがほとんどだ。
もう結構な時間らしい。
そろそろ眠らないと明日に響くだろう。
茉莉に送った二度目の夜更かし禁止メールを、ちゃんと幼なじみが守っているか心配になりながらも部屋の明りを消して、ベッドに横になる。
今日は少しだけ良い事があった。
ほんとうにささやかな事だが、円の態度が軟化したことだ。
だからきっと明日もほんの少しいいことがあるかもしれない。
そう思い、瞼を閉じる。
瞳に映るのは、何もない暗闇だ。
吸い込まれそうなほど真っ暗で、唐突に過去の出来事を一つだけ思い出しそうになった。
けれど、何かが邪魔してるのか、ただきっかけが足りなかったのか、それらの記憶は完全に浮上するまえに、消えてなくなってしまった。
代わりに、俺の耳に聞こえてくるのは何かを乱暴に叩く音。
どんどんと。
力を込めて立てられる音は、次第に強くなっていく。
人は眠気を覚えた時、睡眠に入る前に幻聴を聞くことがあると、どこかで聞いた事がある。
くぐもってひびくそれは、なぜだかこちらを急くような調子でずっと叩かれ続けていて、眠るどころか、眠気が吹き飛びそうだった。
「……」
携帯の着信音が聞こえる。
最初に一音を耳にした時に分かった。
俺は無意識の内にとって、連絡しなければと思い、枕元に置いてあるそれに手を伸ばそうとして……。
抗いがたい眠気に、引きずられていった。
まるで俺にその携帯をとらせまいとしているように
そして……。
俺はいつの間にか、眠りに落ちていた。
けれど、1月10日は、終わらなかった。




