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「そう…。」
「姫様。この白い粉の中にはアルカの花が加わっておるのじゃ。あの花の茎が混ざったもんを食べたら最後、もう助からん。あの娘は諦めて楽にしてあげるのが、この老骨からの助言じゃ。」
持ち帰ってきた粉薬の中身を王族専属の薬師に解析してもらったが薬師からの言われた言葉は許容できやかった。
「そのアルカの花の茎を体内へ入れると、どの様な症状がでるのか教えて下さる?」
「ふむ…。
アルカの茎を摂取すると、気分がよくなり、あらゆる苦痛も楽しくなる。
遥か昔、まだ幼い青年や気が弱い兵士が常備して服用しておった。アルカを食べると恐怖がなくなるからか兵士も好んで食べ、恐れを知らん兵士が幾人も出来上がったのじゃ。
しかしの、食べ続けているとアルカの効きが弱くなり食べる量は増えていった。それが数人、数十人、数百人と増え、アルカの奪い合いが始まったのじゃ。
食べなければ途端に不安になり恐怖に駆られ人々は食べ続けるしかできなかったのじゃ。
奪い合う事により食べれない人が出始めての。その食べれなかった人は急に暴れたり奇声をあげ、ふと我にかえり守るように体を抱きしめガタガタと震えた。すると、ある日アルカを食べれない禁断症状で街中で暴れまわりアルカを持っている人物へ襲いかかり殺して奪ったアルカを、その場で動物の様に食べたのじゃ。その後は悲惨の一言に尽きるの。
虐殺の限りを尽くし奪ったアルカを貪り食べる一匹の獣の出来上がりじゃ。アルカに囲まれ糞尿を撒き散らし、口は閉じることなく涎を垂らしながらも笑い声や奇声を発する獣がの。
とうとう食べるアルカがなくなると、その者は苦しい怖いと発狂し刃物で自分をズタズタにし息を引き取った。
それからじゃ、アルカの服用は禁止されアルカを食べた者は早めに楽にしてあげる様に儂ら薬師に通達されたのは。
だから姫様、あの娘は早く楽にしてあげるのが一番の優しさじゃ。」
そう、薬師のおじいさんは悲しげに話し私にランを死なせてあげろと言ってきた。
何故!何故、あんな、小さな子が辛い目に合わなければいけないのか!私は唇を噛み締めた。そんな私の様子を見て薬師は「期限は明日までじゃ」と言い去って行った。
私はどうすれば良いのか暫く考え込んだ。ふと外を見ると、いつの間にか夕暮れになっていて空を真っ赤に染めていた。
私は決意を新たにランの様子を見に行く事にした。
「ヤン、ランの所へ行くわ。」
部屋を出て警備に立つヤンに声をかけると物言いたげな瞳をされたが彼は何も言わず追従してくれた。
「ここ…ね。」
ランが居るはずの部屋の扉の前に立ち「開けなさい」と言うと扉の前に居た兵士が鍵を出し解錠した。
「今は静かですが、お気をつけ下さい。」
扉を開ける前に一言発した兵士の声を耳にヤンが先に入り私はヤンの後ろをついて中へ入った。
ヤンの体に隠れ、すぐに見ることができなかったが部屋はめちゃくちゃになり物が散乱し、悪臭が漂っていた。
暫く歩くと、ヤンが立ち止まったので見えなかったランを見る為にヤンの体から横にずれた。
「…っっ!!!
…どういう事かしら。何故、侍女が一人も居ないの?」
私の目に映ったランは絨毯に座り込んでいた。座っている絨毯には水溜まりができランのスカートを濡らしていた。焦点が定まらない視線はどこを見ているのか分からず、口は閉じることがなく、涎が垂れていた。
「リーン、辛いだろうが彼女の世話をする…いや、できる者が居なかったらんだ。ここで働いている侍女は皆、育ちが良い家から来た行儀見習い。汚れた仕事はさせる事も、する事も出来ないんだ。」
「…っっ!」
頭の中が真っ白になり、次いで怒りで真っ赤に染まった。
如何にランの家族がランの世話をしていたのか目の辺りにし、その事に気付きもせずに連れ帰り嫌な仕事は他人にさせようとしていた自分に怒りと悲しみで涙が溢れてきた。
「なっ、ならば私がやります!ヤンは着替えを持ってきなさい!」
「いえ、いつ暴れるか分からないのでリーンの側は離れられません。
おい!着替えを持ってこい。」
ヤンはドアで待機している騎士に私を守れる位置から言伝てた。
私は、すぐにでもランに駆け寄りたかったがヤンが、それを許してはくれなかった。
「ラン…。」
口の中でランの名前を呼ぶもランは変わらず佇み時折「ふふっ、あはっ、」と笑い声を洩らすだけだった。




