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いくらランが幼いからと言っても男の人が見ているなか着替えや入浴は憚られたので力がある侍女を3人呼び私がランと一緒に入りヤンには浴槽ドア前で待機してもらった。
ランは大人しいが変わらず焦点の合わない目をしており反応を示さなかった。
一緒に浴槽に入りランを抱きしめ名を呼ぶと小さな声で「リーンお姉ちゃん」と聞こえ、急いでランの顔を覗き込むも変わらない表情に少しの落胆を覚えた。
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着替え終わったランを見つめながら、先ほど聞いた話とおじいちゃん薬師の最後の言葉が頭の中をグルグルと巡る。
〝「期限は明日までじゃ」〟
明日までに答えを出さなければ問答無用で、あの薬師はランを【楽に】してしまうだろう事が分かっていても葛藤が生まれ頭の中で薬師の言葉が何度も木霊する。
〝「期限は明日までじゃ」〟
〝「期限は明日までじゃ」〟
〝「明日までじゃ」〟
分かってる!辛いのはランであって苦しみを覚える自分がお門違いなのは!
麻薬の抜き方も前世で聞き齧った知識で確証はないし麻薬を飲めないのは死ぬほど辛いと聞く。小さなランが耐えられる保証もない。もしかしたら麻薬が抜けても、あまりの辛さに心が壊れてしまうかもしれない。
薬師の話を聞く限りでは私がやろうとしている事は苦しみを長引かせてる様に映り反対される事も頭では理している。
私がやろうとしている事は本当にランの為になるのか…
途方にくれて考え込んでいると、ふと気付くと空が鮮やかな赤を彩っていた。何となく侍女たちに指示を出したり自分がいつも通り動いていた記憶はぼんやりとあるが、決意は揺らいだままだった。
トントンッ
控えめに鳴らすノック音に私は返事をし、入室許可を出した。
「姉さま!」
ドアを開くと同時に駆け寄って抱きついてきたエヴァンの温もりが私の冷えた心を少し暖めてくれた気がした。
「エヴァン、久しぶりね。」
「姉さま、僕先生と喧嘩してしまいました。」
いつもニコニコ笑顔で喧嘩とは無縁のエヴァンから放たれた言葉に驚き顔を向けるもエヴァンは私に抱きつき顔が隠れて見る事が出来なかった。
「先生が小さな犠牲で助かるならば見て見ぬふりも必要だと申されました。けれど僕は助ける努力もせずに犠牲の上に立つのは違うのではないかと思い先生に問いかけると先生は歴史がそう物語っているものだと言うのです。
僕はどうしても納得できずに言い返したのですが先生の不況をかってしまった様なのです。
姉さま、姉さまは僕が間違ってると思いますか?」
エヴァンの言葉に頭を殴られたかと思った。
先人たちの行いを顧みて同じ失敗を繰り返さない様にするのが私たち現代人の役目だ。
薬師が言っていた事も先人の教えであり正解でもあるのだ。
しかし、エヴァンが言う様に助ける努力は必要だ。それをしなければ歴史は停滞し発展しない。
そして歴史が物語っている様に新たな試みは世間から白い目で見られる事になるだろう。
私は助ける努力をしたのか?
自分に問いかけるが帰ってくるのは否としか言えなかった。
ならば、やろう!助ける努力を!
例え周りから白い目で見られ危害が加えられても…それが私が今できる努力なのだから…
「姉さま?」
私が何も答えないからか不安そうに瞳が揺れ見上げてくるエヴァンにハッと意識を向け笑った。
私は膝を折りエヴァンと目線を合わせた。
「いいえ、エヴァンも先生も間違えではないわ。
ただ、そうね…。病気になった私1人の命と、私の命で助かる民全員、どちらか一つしか選べないなら、どちらを選ぶ?」
「…………。」
「選べないわよね?けれど、先人たちは選んできたわ。それが歴史よ。悩んで悩んで選んできた歴史の先に私たちが居るの。だから歴史を顧みて私たちは新たな歴史を刻んでいくのよ。
助ける努力も必要。けれど先人たちが教えてくれる事も大切よ。」
「………………。
姉さま、また来ます。」
エヴァンには難しかったのかもしれない。いつも元気なエヴァンが沈んだ顔のまま部屋から出て行った。
やると決めたからには出来るだけの事をやろう。そう思い向かったのは机だった。
私はペンを持ち前世の思い出せる限りの出来そうな事を書き、また、ランの治療にかかせない人材を書き殴った。
ひたすら書き続けていると朝日が窓を照らし始めていた。
「朝か…。」
論文とも言える量を一纏めにして私は大きく背伸びをした。
「ふぁ~~ぁっ!よしっ!今日も1日頑張るぞ!!」
誤字報告ありがとうございますm(__)m




