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いつもより少し文章長くなり遅くなりましたm(__)m
私は考えた。ここは異世界で前世の記憶通りの名前の物が使われてるのか、どうやって作られてるのかさえ私は知らないのだ。この3年間、視察という名の旅行に出かけ食べ歩き露店にある物を眺めたり、どんな暮らしをしているのか見たりした。
しかし!私は工房やらの作っている所へは訪れた事がなかったのだ!何故、何故!私は行かなかったのか…。
唯一行ったのはノットの工房のみ…
「うぅ…。」
あまりの自分の残念さ具合につい、唸ってしまっていた。
「姫様…。」
「リーン、やはり何かあったんだな。」
私が自分の残念さに唸るとアニータとヤンの疑いの眼差しが強くなった。ヤバいと思った私は咄嗟に言い訳をした。
「ちょっと息抜きに城下で遊んで服が汚れたから着替えただけよ?」
息抜きも何も特にストレスも感じず、のうのうと生きてるだけだが言い訳は大事だ!と自分に言い聞かせ視線をさ迷わせながらカップ片手に言い募った。
「ん"ん、まぁいいでしょう。姫様も無事に帰ってきてますし、今回は何も言いません。しかし、今後はヤンなしでの外出は禁止とさせていただきます。」
アニータが呆れ顔を浮かべ見てくるが嘘をついた後ろめたさに目線を合わせる事ができずカップの水面を見つめて聞いていた。するとヤンが真剣な顔で私の目線まで屈み話始めた。
「リーン、今まで変に身構えない様にと言わなかったがリーンが城下に行く度に危険な事が何度かあった。だから必ず俺を連れて行ってくれ。絶対に守る。」
あまりにも真剣な顔と口調で〝守る〟と言われ自分の顔が熱くなり真っ赤になっているであろうと自覚した。私の返事を待つようにジッと見つめてくるヤンの顔を直視することができずに私は目をギュッと瞑り返事をした。
「わっ、わかりました。今後あなたを置いてでかける事はしません。」
誰も何も言わない空間が暫く続き「ゴクッ」と喉を鳴らしたのは私かヤンかアニータか…
変に緊張した時間が続くも目を開ける事はできず、ただただ目を瞑ってた。
「コホンッ!」
わざとらしい咳き込みにビクッと体が跳ね目を開けると目の前には、くっきりとした濃い眉毛と綺麗な茶色が眼前に広がった。その茶色が遠く離れて行くのを残念に思いながら茶色の正体がヤンの瞳だと気付いた。何故目の前にヤンの顔があったのか不思議に思いながらも首を傾げアニータを見るとヤンを睨んでいた。
「ヤン、後でお話があります。良いですね?」
「あ?っあぁ…。」
二人のやり取りを不思議に思いながらも今日の反省をした。
そう!物作りにかかせない事前準備が私には足りなかったのだ。手始めに一番身近に居て知識があるノットに話を聞くことにしようと思った。
思い立ったら吉日と私はすぐにアニータにノットを呼んでくる様に伝えた。アニータと共にヤンも退室して行き私はノットが来るのを紅茶片手に優雅に待っていた。だれも居なくなったからか私の周りには精霊たちがやってきてフワフワと漂っていた。
トントントン
ノック音のあとにアニータの入室伺いの声が聞こえ私が許可するとアニータと、アニータの後ろからノットが入ってきた。
「ノット、久しぶりですね。」
「はい、参上いたしました。いかがされましたか?」
「あなたを見込んで聞きたい事があります。」
「僕に答えられることならば何なりと。」
私は表面ではニッコリ笑顔で対応していたが内心驚いていた。少し合わないうちにノットが変わっていたのだ。
見るからに枝毛や痛みが目立ってたダメージヘアから纏まりある髪になって更にパーマみたいだったのもサラサラになっていた。まだ彼と出会って3週間ほどしか経たないから体型は変わっていないが、髪と服装のみ変わっていただけだが髪の毛と服装、それと所作一つでこんなにも印象が変わるとは驚きだ。
言うならば、傷付いた野良猫からセレブ猫…まではいかないが上流猫になった感じだ。
「私は色んな土地に出向き人々の生活を見てきましたが作られている工程を見たことがないのです。ノット、あなたは物作りをしていましたね?
私が今知りたい事は硝子の材料と作り方です。知っていますか?」
「はい、マリーン様。硝子の材料ですが魔石でできております。基本的には無属性の魔石から作られますが無属性の魔石を溶かす為に火属性魔石を使います。溶かした魔石を型に流し込んだ物が一般的な硝子窓になってますがマリーン様の部屋に使われている丸い形が合わさった窓は風の魔法が得意な方のみしか作ることが出来ないため貴重とされています。僕は風魔法が得意ではないので作り方は分かりませんが…申し訳ありません。」
凄くノットがしょんぼりして私を伺っているが私の頭の中は硝子の作り方で一杯だった。
ふむふむ。ロンデル窓の作り方はクラウン法で作られている。
筒状の金属にガラスを付け、膨らましていって球体状になれば、ボンテと呼ばれる金属の竿を筒と反対側につけ、筒の方をとりはずし熱しながらボンテを回す遠心力で円形状に薄くするとロンデル窓に使われている丸い硝子ができるはずだけど…要は私が思ってた硝子材料、珪砂・ソーダ灰・石灰はあるのかは分からないが無属性魔石で代用できて、魔石は特殊な物だから魔石を加工するのに魔力が必要ってこと?
んで、ノットは硝子の作り方はわかるけど丸い形の硝子の作り方は知らないって事ね。
やっぱり実際に作ってる所を見ないと作り方は分からないわね。
「ありがとう、ノット。
アニータ?もう、ノットを私付きにしても良いでしょう?」
私の言葉にアニータは少し眉を寄せたが何事もなかったかの様に返事をした。
「駄目です。まだまだ姫様と一緒に行動をさせれません。」
「お願い…。 今すぐ私付きにして。」
「姫様…。これは姫様だけではなくノットの問題でもあるのです。姫様の我が儘でノットが周りからの悪意に晒されますよ。」
頭では理解しているが気持ちが追い付かず瞳に涙が溜まってくる。最近おかしいと思う。私は前世合わせれば、もう良い年齢で10才までは、こんなに感情に左右される事はなかったはずなのに今の年齢に合わせた様に感情が押さえる事ができなくなる事があるのだ。
「あっ、あの!僕は気にしません。」
「ふぅ、ノット。姫様を甘やかしてはなりません。」
私たちのやり取りにオロオロしながら発言したノットとため息をつき呆れた様子のアニータを見ながら私はアニータの言うことが正しい事は分かっているが、どうしても譲れないという思いがあった。
「そっ、それなら半日なら。1日のうち半分は私に、残りは勉強というのはどう?私もノットと一緒に勉強するから…だめ?」
「うっ!」
掌をくみ涙目でお願いするとアニータは一瞬口を歪めたが、すぐに元の表情に戻った。
「ふぅ~、分かりました。今までサボっていた勉学を姫様が再開なさるなら目を瞑りましょう。」
「本当?!ありがとう!アニータ!
やったわ、ノット!」
私は満面の笑顔でアニータにお礼を言いノットに抱きついた。
勉強は嫌いだ。しかし今まで家庭教師と二人の勉強だったのがノットと二人になれば楽しくなりそうだ。
私に抱きつかれ頬を染めながらアワアワしているノットと微笑ましそうに笑っているアニータ、拗ねている金属性精霊、楽しそうなリクに囲まれながら私は今後の事に思いを馳せた。
アニータ「姫様のお願いは何でも許してしまいそうになる破壊力でしたわ。あまりの姫様の可愛さに顔がだらしなくなる所でしたわ。気を抜くと大変な事になる顔を引き締めるのに苦労しましたわ。」
金属性精霊「ふんっ!ノットが楽しそうだから少しはノットと仲良くなるのを許してあげるわ!」