side 赤い悪魔
久しぶりに空き倉庫で一人になろうかと思い来てみたら、めちゃくちゃ金になりそうな少女が縛られて放置されてて、つい舌打ちしちまった。
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俺は顔が醜悪で親からさえも触ってもらった記憶もなく、気付いた時には親に捨てられ残飯漁って生き延びている毎日だった。それが覆ったのは10歳になった時だ。教会は、よくパンや屑野菜スープを配っているから腹を満たすために通っていた。ある日いつもと違い人が沢山いて、表通りの子どもや俺と同じ裏で生きてる子どもが大勢いて皆俺と同じくらいの年だった。訝しげに見ていると皆どこか期待に満ちた顔をし、ますます俺は眉間に皺を寄せた。
そんな奴等を眺めていると急に肩に手を乗せられ体が跳ねた。振り向くと、こんな近くに来るまで何故気付かなかったのかと疑問に思うほどいい匂いをさせた薄い顔の平凡な男が俺の肩に手を乗せていた。
「君も魔力検査しておいで。」
俺に軽々しく触れる男が気味悪く逃げるように検査の列に並んだ。この時の気味が悪い男を後に師匠と呼ぶなんて、この時の俺は思いもしなかった。
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「おい、くそ師匠!俺に厄介ごと押し付けんじゃねぇ!」
「うんうん、君を拾って本当に良かったよ。」
「チッ!」
師匠がニコニコした顔で言ってくるが俺にはニヤいた顔にしか見えず苛々しながら師匠の仕事対象を追っていた。気に入らねぇが髪艶を出すために頭に油を塗り、醜悪な顔はお面で隠すと他人には見た目が分からねぇ。そして髪艶とこの強烈な匂いで今まで俺を避けてたのが嘘の様に気色わりぃ顔して人が寄ってくるようになりやがった。仕事はやり易いが俺は師匠以外の他人が別の生き物に見えるようになった。チッ、胸糞わりぃ。
そんなこんなで、いつの間にか俺は裏で赤髪なんて呼ばれてて、それを知って喜んだ師匠が独り立ち祝いにって全身真っ赤な衣装をくれた。俺は師匠の黒髪と違い赤毛で目立つ為、今まで布で隠して仕事することも多かったが今後は隠すことを禁じられ更に全身真っ赤な衣装をきてからしろと無茶を言われた。
「くそがっ!」
師匠の無茶な要求がなければ、サクッと終わらせていたのにという思いと逃げ惑う対象者に苛立ち、そのままナイフを投げつけた。
男から血が吹き出て辺りを真っ赤に散らしながら暴れまわる俺とは違う生き物に更にナイフを刺すと動かなくなった。
「う~ん、20点。地面汚しすぎだし時間もかかりすぎ。あと対象者に気付かれたのが一番ダメ。まだまだだね。」
俺は舌打ちしながら黙々と後処理をしながら「てめぇが赤い服着て仕事させるからだろぅがっ!」と文句を言うが師匠からは「ふふっ」と言う笑いしか返ってこなかった。
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そんな事が数回続いていると俺はいつの間にか気配を消す事が出来るようになっていた。
「うんうん、僕くらいになると気付かれるけど目立たなくなってきたね。あとは回数こなすだけだから今後は1人でやりなさい。この部屋は君にあげるからね。」
「くそ師匠、行くのか。」
「僕も年だしね。この辺は僕のことを恨んでる人が沢山いて、ゆっくりできない。もう充分働いたし、後継者も作った。依頼人に義理立てもした。まぁ、今後君が依頼人から依頼を受けるかは君が決めるといいよ。…じゃあね。」
10歳の時に師匠に拾われてから調度10年経った。10年前、まだ30代に見えた師匠は、この10年で一気に老け込み今は50代後半に見える。本当の年齢はわからないが出会った時と変わらず薄い顔に笑みを作っているが瞳の奥は何を考えているのかわからなかった。
そんな師匠から手紙がきたのは2日前。俺が所有している倉庫に2日後つまり今日行けと、ただそれだけ記載された手紙が届いた。通りを歩くと不穏な空気を感じつつ、ただ行くだけならと、いつも被っている面を外し倉庫まで行った。すると、誰かの気配がし警戒したが存外俺は師匠を信用していたみたいで、躊躇なく師匠の手紙どおりに倉庫を開けた。
そして、冒頭に戻るってわけだ。
少女に近づくと泣きもせず、じっと俺を見ていた。肝が据わってんなと思いながら近付き、とりあえず親元に返そうと担ぎ出した。
とりあえず俺の拠点に連れて行って口布と縄を解いてやると体をほぐし始めたが急にビクつくから何かあったのかと思いつつ少女の顔を見ると綺麗な紫の瞳に俺が映っていた。お面をしてないことを忘れていた俺は自分の醜悪な顔が少女の瞳に映っているのを見て顔が歪んだ。そして少女の態度が急におかしくなった理由がわかった。多分今まで俺の顔を認識する余裕もなく今気付いたんだろうと当たりをつけ俺は少女から離れ話しかけた。
俺の問いかけに対して少女はおかしな返答をしてた。そして俺は顔を晒したままだったが少女は嫌そうな顔もせずに笑顔を見せてきた。抱き上げても嫌がりもせず俺に抱き上げられ、抱き上げてから俺は俺が触れても大丈夫な人間に人生二人目にあった事に驚きと共に歓喜した。近くで見ると更に可愛さが分かり、こりゃ精霊が付くと更に拐われやすくなるなと思いつつ広場まで連れて言って降ろしてやり騎士がいる方を教えてやった。
俺は師匠以外は人の形をした物にしか見えなかったが、この少女は違ったみたいで少女とやり取りしている内に、いつの間にか人に見えた。降ろした時に安心したのか潤んだ瞳で上目使いに見てきたとき俺の中でよく分からない感情が渦巻いて、無意識に「あー」と声を発していて戸惑いつつ少女を残して隠れた。少女はキョロキョロと俺を探していたが見つけきれずにお礼を言って去って行った。無意識に口角が上がり人にはぜってぇ見せられない面をしているのを自覚しつつ俺は金にならねぇ仕事に向かった。
蛇足:この後彼はマリーンを拐った経緯を調べに行きました。




