第四章 「目を覚ますと真っ暗でした」その一
四ヶ月くらい投稿が空くとまずいみたいなので投稿します
スマホのアラームが鳴り、目を覚ますと辺りは真っ暗だった。
午後十時。
照明を消し、カーテンを閉めきっている部屋ではそれも当たり前か。
正直に言って、まだ眠たいし寝ていたいのだが、今から寝ると午前二〜三時くらいに起きそうだし、その時間に起きてしまったら出て行く気力は無いだろう。
仰向けの体を起こして立ち上がる。
寝起きのぼんやりとした頭では気乗りしないが自分で決めた事だ。とりあえず顔を洗って着替えるか。
「おはよう……じゃなくて、こんばんはかな、アカネ」
僕は着替えてベランダに行くと、気怠げに空を見上げながら、体育座りをしている少女に挨拶をした。
「寝起きなんでしょう? だったらおはようでいいんじゃないの?」
それもそうか。
今度からは、おはようって言い切ってしまおう。
僕が静かに納得していると、思考を遮るようにアカネが話を続ける。
「ねぇ、紅太? やる気十分なのは結構なんだけど、本当に今日行くつもりなの? 昨日参加したばかりで、しかもソラと共闘できるかの返事もまだ来ていないのに?」
んー、まあ、そうだよね。この返しは予想できたとも。だから一応言い訳じみたことも考えてある。
「うん。今日行くよ。僕は参加したばかりだけど、他の妖精はもう戦っているんだよね? だったら今日行っても明日行っても、そんなに変わらないと思うんだ。それに後手に回るよりも、先に動いた方がやりやすいと思うしね」
もちろん、これは言い訳で建前だ。一番の理由を言っていない。
たった三年程の付き合いとはいえ、同級生が死ぬかもしれないなんて嫌だからね。
いや、でも契約者が戦う事はないだろうから、その心配はないか。
まあ、結果がどうであれ今晩にはきっとわかる。
コートと手袋しか出していないけど防寒対策はこれで十分だよね。
「さ、行こっか」
準備をしている間に玄関に移動していたアカネに話しかけ、そのまま家を出る。
鍵をかけて確認する。いつも通りの動作。いつもと違う事と言えば、時間が夜だという事と、アカネと一緒に家を出るという事か。
下まで降り、自転車を押して、エントランス前で待たせたアカネの元に行ったところで、そういえば、とふと思い付いた。
「ねえ、アカネ? 妖精ってどこに行けば会えるかな?」
「知らないのに行こうとしてたの?」
肩を落としながらこちらを見る。
「なんとなく予想はつくんだけどね、アカネが他の妖精の場所がわかるなら聞いておこうかなって」
「そんな風には聞こえなかったけど……勘違いさせるのも嫌だから言っておくわ。他の妖精の居場所なんて知らない。感知とかもできはしないわ」
そうか、そんなうまい話はないよな。
「まあ、近くで隠れている妖精くらいなら感知できるけど……」
「できるの⁉︎ 距離は⁉︎ どのくらい⁉︎」
思わずアカネの両肩に掴みかかる。
「ちょっと、急に掴まないで! びっくりするでしょ!」
「あぁ、ごめん!」
手を退かせて、続きを待つ。
「二メートルよ。私を中心に半径二メートルくらいが感知範囲。見ないでわかるのはそのくらい」
「結構近づかないとダメなんだね。地面の中とかはわかる?」
「わからないわ」
もう少し広かったら街を歩いているだけでも妖精を見つけられそうだが……。まあ、できないならできないなりに、やり方はある。
「オッケー、捜査は足でって事だね。それで結局……」
「場所でしょ? 山と海、どっちがいい?」
やっぱり自然が豊かで環境に恵まれた場所にいる可能性が高いか。
山なら北の市境にある七鍬山が一番近い。
東西に市を跨いで伸びた山で、傾斜が激しく標高が高い西側と、比較的傾斜が緩やかで標高が低い東側で分けられる。分けられると言ってもそれほど違いがある訳ではなく、せいぜい土地開発の進み具合が違うくらいだ。
七鍬山へは学校の遠足で行ったのを最後に行ってないな。
また行きたいとも思うが、自転車で行くにはそこそこ距離があるし、麓のあたりは緩やかな坂になっているから割としんどい。
と、なると……。
「やっぱり海かな」
海、というより、浜までだったら、七鍬山に行くよりはるかに近いし道も平坦なので行きやすい。契約者がいるだろうから沖まで出ないといけないなんて事はないだろう。
「そうだ、僕は自転車で行くつもりなんだけど、アカネはどうするの? 走ったり飛んだりするの?」
「走るのはともかく、飛ぶって何よ? 羽根なんか生えてないのよ、私」
飛べないのか。ちょっぴり残念。
「そうね、自転車の後ろに乗せてもらうとするわ」
「二人乗りって事⁉︎ ダメだよ! 危ないし法律で禁止されてるんだよ? 学校に来た警察の人が言ってた!」
「いや、誰が二人乗りしてるように見えるのよ。私は他の人には見えないのよ? ……っていうか、心配するなら深夜に出歩いて補導される事を心配しなさいよ」
矢継ぎ早に正論が繰り出される。完全に論破されてしまったな。
「わかったよ、二人乗りで行こう。でも、ちゃんと掴まっててね? 二人乗り初めてでちょっと不安だからさ」
「んー、心配はしてないけど……落とさないでね、紅太?」
そう言っていたずらっぽく笑うと、自転車の荷台に跨るのであった。
お疲れ様でした。
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