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妖精のことがら  作者: 岡池 銀
第三章
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第三章「そして夜が明ける」その三

今回も無事更新です!

本日の「妖精のことがら」も楽しんで読んで頂けると幸いです!

 さて、準備もできたしすぐにでも出発したいのだが、一つ問題がある。

 アカネをどうするか、だ。

 つまりは学校へ連れて行くか、家に居てもらうか。

 僕としては家にいてくれる方がいいと思う。

 昨日はお風呂に入ってから上がるまでの短い時間で、我が家を真冬に変えた。

 我が家は決して広いわけではないし、窓を全て閉め切っていたから条件が良かった( いや、悪かった?)ということもあるだろう。

 それでも、十分程度で室内の季節が変わったと思える程冷えたのは、アカネの力の強力さによるものだ。

 これが教室なら……五十分も閉め切っていたら凍死するのではないだろうか。

 そうでなくとも、アカネと一緒にいるところを見られるのはまずいと思う。

 普通の人は妖精が見えないと思うが、契約者には恐らく見えるだろう。

 それがどういうことか。側にいるアカネの姿が見えたら、きっと僕が契約者だと気が付くだろう。

 もし相手が妖精を連れていなかったら、多分こちらは気付かない。昨日のソラが言っていたし、多分アカネも。せいぜい予想を立てるくらいだろう。

 奇襲でもされたら堪ったものではないし、もし知り合いが契約者だったら……。僕は相手の願いや夢を壊してまで勝とうと思えるだろうか。邪魔をして、傷付けて、最悪は殺してまで。

 ……今悩んでいたって仕方がない。まずはアカネに学校に行く事を伝えて反応を見よう。

 そうと決まれば早速ベランダに行き、アカネに話そう。

「アカネ。僕、今から学校に行ってくるよ」

 ベランダの柵に座っているアカネに話し掛ける。

「そう? わかったわ、行ってらっしゃい。気を付けてね」

 悩んでいた事が馬鹿みたいに思える程、あっさりと承諾してくれた。

「一応確認なんだけどさ、僕が出てから気付かれないように付いてくる、なんてことはしないよね?」

「なんでそんなストーカーみたいなことしないといけないのよ。寧ろしてほしいっていうフリなの?」

 違う。断じて違う。僕にそんな趣味はない。

「いや、そうじゃなくてさ、外で妖精に襲われたらとか心配するんじゃないかと思って。いざという時の連絡する手段もないから余計にね」

 柵から降り立ち、こちらを向く。

「大丈夫よ。妖精は一目見ただけで、はっきりと契約者だってわかるわけじゃないの。なんとなく、そうじゃないかって気がするだけ。ルールの事もあるから簡単には手を出せないわ」

 アカネもこう言っていることだし、これで一応安心して学校に行けるかな。

「そうだよね。それじゃ行ってくる!」

「それじゃ行ってらっしゃい。人気のない所には行かないようにね?」

「わかってる!」

 走れば五時間目に間に合うか?

 ……走ろう。間に合いそうなら走らないわけにはいかないよな。

 

「はぁ……はぁ……」

 予想しなかったわけではない。

「はぁ……はぁ……」

 普段の僕からすれば当たり前の事だろう。

「はぁ……はぁ……バ、バテた……」

 運動なんて行き帰りの徒歩か買い物の自転車くらいなものなのに、準備運動もなしに全力疾走したら通学路を半分も行かないうちにバテてしまった。

 筋トレはしてるんだけどな。体力はあまりつかなかったみたいだな。

 早く、浅くなった呼吸を整える事もせず、肺と喉と脇腹の痛みに耐えながらも、なんとか一定のペースで走り続けている。

 殺されそうな友人を助ける為なら、まだ格好も付いただろうけど、実際はただの寝坊の遅刻だ。格好悪いことこの上ない。

 

 腕を振り、脚を出し、舗装された道路を蹴って進み続ける。

 身体が慣れてきたのか最初よりかは痛みが引いた気がする。

 この先の丁字路を曲がれば後少し。真っ直ぐ進めば到着する。

 ラストスパートをかけよう。そう思って、勢いをそのままに角に差し掛かると、曲がった先から人が出てきた。

「わっ! ごめんなさい! 避けて!」

「ん?」

 良かった、向こうは気が付いたみたいだ。と、安心する間も無く僕の足は(もつ)れてすっ転ぶ。

「痛ったあ……」

 なんとか受け身を取れたので頭は守れたみたいだ。膝と手の平は痛むが多分支障はないだろう。

「大丈夫ですか? 立てますか?」

 そう言って右手を差し出してくる。その手には白い手袋が嵌められている。

 危うくぶつかりそうになった相手は、二十代後半から三十代前半くらいに見えるスーツ姿の男性だった。首にはネクタイではなくリボンタイが巻かれている。

「すみません、大丈夫です」

 手や制服に付いた砂利を払いながらゆっくりと立ち上がる。

「怪我はないですか?」

 相手に怪我がないかを確認する為、観察してみる。

 一見怪我は無さそうだ。と言ってもスーツが長袖で、肌の露出が顔ぐらいなものなので実際のところはわからない。

 ……ところでこの人、イケメンだ。身長は百八十センチを超えているだろうか。顔立ちは整っているが目が細いのと右の目尻の黒子(ほくろ)は、人によっては玉に瑕になるだろうか?

「はい。貴方が咄嗟に躱してくれたおかげで、私に怪我はありません」

 怪我がないなら何よりだ。

「そうですか! それは良かった。それじゃあ急いでいるのでこれで失礼します!」

 時間は確認していないが多分結構ギリギリだろう。少し左足に違和感があるがそれなりに走れそうだ。

「あ、貴方の手当てを……もう転ばないでくださいね、学生さん!」

 さっきの人が大きな声で言ってくるが、返事をしている余裕がない。とりあえず手だけでも振っておこう。

 

 学校に着き、校門を走ってくぐる。幸いなことに柵は人一人分だけ開いていた。

 校門の横には警備員さんの詰所があり、窓を覗くと警備員さんがお茶を啜っていた。帽子の下は真っ白ふさふさか。

 

 グラウンドを見ると体操服姿の男子生徒達がボールを蹴っていた。体操服のラインの色が僕の持っている物と違うので高学年だろう。

 

 よそ見もそこそこに僕は全力疾走で玄関に入り、上履きに履き替えて教室へ急ぐ。

 廊下にはそれなりに生徒がいたので、駆け足ではなく早足。

 息を整え、汗を拭いながら教室に入る。

 中では昼休みを満喫しているクラスメイトと英語の先生がいた。

「ありゃ? 秋野くんは遅刻ですか?」

 米谷英子(よねたに えいこ)。若い女性の先生。可愛い系の美人なことと、親しみやすい性格で男女を問わず生徒に人気だ。

「は、はい……」

「だいぶ急いで来たみたいだね。その顔を見たらわかるよ。遅刻届はある?」

「ち、遅刻届ですか? ないです。どこで貰えますか?」

 遅刻をしたらそんなものが必要になるのか。

「職員室で紙を貰って、年組名前と遅刻理由を書いておいで。で、書けたら適当に先生捕まえてハンコ押して貰ってから持ってきて」

「ありがとうございます。早速書いてきます」

 そう言って壁に掛かった時計を見ると、五時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。

「あちゃ……焦らなくていいからゆっくり行っておいで。あ、それと、もしかしたら生徒指導の先生に叱られるかもしれないから、覚悟だけはしておいた方がいいかもね」

 叱られるのか。いや、初犯と言えど遅刻は遅刻。次しなければ良いだけだ。

 僕は叱られるかもしれないことと、五時間目に間に合わなかったことで憂鬱になりながら、早足で二階の職員室に向かうのであった。

お疲れ様でした。


遅刻はできればしたくないですね。

私は結構朝が弱いので寝る前のアラーム確認や、6:00、6:30のようにアラームが鳴る回数を多くして対策しています。

皆様はどのような対策をしてらっしゃるのでしょうか...?


励みになりますので、レビューや感想、評価ポイントを付ける等して頂けると幸いです。

「妖精のことがら」を今後ともよろしくお願い致します。

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