第三章「そして夜が明ける」その一
お待たせしました。定期更新のお時間です。
今回はギリギリで投稿なので、読み返しが甘いです。その為、誤字脱字が多くなると思いますので、見つけられた際は是非ともご報告をお願い致します。
「紅太、大丈夫?」
目を開けると、心配そうに僕の顔を覗き込むマスクをした少女がいる。
学校帰りなのだろう、セーラー服姿の少女は足元にスクールバッグを置き、布団の側に座っていた。
「う〜ん、しんどい」
「熱は測った?」
「朝測った〜、九度八分〜」
「体温計持ってきたから汗拭いてから測って。タオルある?」
そう言って白いタオルを差し出してくる。
「ある。けど汗でびちょびちょだからそっち使う」
「わかった。そっちのタオルちょうだい。洗濯機に入れてくるから」
僕は頷くと、少女の持っていたタオルを受け取り、僕の持っていたタオルを差し出す。
少女は僕の差し出したタオルを持って和室を出た。
パジャマを脱いで体を拭き、側に置いてあるパジャマに着替える。
体温計は腋の下に挟む時、ひんやりするのがちょっと嫌だけど我慢だ。
襖を開けて少女が戻ってきた。
「今日の分のお薬ちゃんと飲んだ? ご飯も食べてる?」
僕は黙って首を横に振る。
「ちゃんと食べないと治らないよ? ちょっと早いかもだけどお粥温めてくるから。それと新しいお水用意するね」
枕元のペットボトルは空っぽだった。
言ってもいないのによく気が付くな。それだけよく見ているということだろう、有難い話だ。
「おまたせ」
少女はお盆に小さめの土鍋とペットボトルを乗せて戻ってきた。ひっくり返さないようにゆっくりと畳に置いてから正座する。
「ほら、体起こして。食べられる?」
土鍋の蓋を開け、蓮華を差し出してくる。
食べられそうではある。
が、少し目の前の少女を困らせたくなったので首を横に振った。
「え〜、食べないと治らないって言ってるでしょ? お薬も食後のやつだし……」
くっ、やはり言わないと伝わらないか……。
「……食べさせて?」
「はぁ、インフルエンザだからって甘えすぎじゃない?」
「……だめ?」
首を少し傾げて上目遣い。
これが今の全力のおねだりだ。
「しょうがない、熱測り終わったら食べさせてあげる」
言うが早いか、体温計が測定完了の合図を出す。
腋から抜いて液晶を見ると、三十八度八分だった。
「何度だった?」
黙って体温計の画面を見せる。
「八度八分、まだ高いわね」
「ね、まだ? 測り終わったでしょ?」
ずっと寝ていたのでお昼を食べておらず、お腹が空いていた。
「はいはい、ほら口開けて、あーん」
かき混ぜられ、掬われた卵のお粥。薄く白い湯気を立たせながら、蓮華が口元に運ばれる。
マスクをずらして二度息を吹きかける。
「いただきます」
口を開けて蓮華を頬張り、お粥を残して抜き取られる。
「はふっはふっ……」
予想以上に熱く、思わず口から戻してしまいそうになるが堪えて飲み込む。
喉も焼けそうで味なんてわかったものじゃない。
「焦って食べようとするから……。ほらお水」
水が注がれたコップを差し出してきた。
僕は急いで受け取り一気に飲み干す。
「あっついよ! 火傷するかと思ったじゃん!」
「ちゃんと冷まさないからじゃない」
「そりゃそうだね!」
「それで? どうなのよ?」
目線を合わさずに聞いてくる。
「どうって?」
「味よ、味。美味しかったの?」
「熱くて全然わかんなかった」
マスクしながらでもわかるくらい、がっかりしないでほしい。
俯きながら溜息なんて吐かないでほしい。
「はい、上の方の掬ったからまだマシのはずよ」
再び蓮華を僕の口に持ってくる。
さっきのがあるので少し怖いが、それでもお腹は減っている。
四度、蓮華を吹いて口を開ける。
「あーん」
口に入れられたお粥は、舌で潰せるくらい軟らかく炊かれており、卵の風味と強めの塩味が口に広がる。
「おいしい!」
ぼくの言葉に少女は柔らかく目を細める。
「そう、それは良かった。頑張って作った甲斐があるってものね」
そうか、この少女が作ったのか。料理なんてしないものだと思っていたが。
「ありがと。……が作ってくれたんだよね?」
ん? 僕は今なんて言った?
「まあね。感謝してよね?」
少女は得意げに言った。
自分の作った料理を美味しいと言ってもらったんだ。当然だろう。
……待って、待ってくれ。
嬉しくなったのか、少女は次へ次へとお粥を掬っては僕の方に持ってくる。
……僕はさっきなんて言ったんだ。
僕は差し出されるお粥を息を吹いて冷ましつつ、それでもペースを落とす事なく食べている。
……何で普通に聞こえてたのに、その部分だけ不自然に聞こえなくなったんだ。
食べている時の表情は困り顔と笑顔が半分ずつと言った感じで、幸せそうに見える。
……どうして口を開いているのに何も聞こえないんだ。
……何で僕の前に僕がいるんだ。
……何で少女から表情が読み取れるのにそれ以外が黒くぼやけて見えないんだ。
……何でこんなに。
目を覚ました。
勢いよく上体を起こして、自分の体を見る。
寝汗がひどい。パジャマの色が少し変わっている。
動悸が激しく、息も上がっている。
「……涙?」
右の頬を伝う温かい涙。それを指で拭って先程の夢を思い返す。
あの夢は何だったか。
夢を思う度に心が締め付けられるように痛み、涙が出そうになる。
あれは僕の過去か?
そういえば小学生くらいの頃にインフルエンザに罹ったっけ。その時の記憶か。
それなら僕を看病していたのは母さんか?
いや、若く見えると言っても流石に無理がある。
それじゃ香奈か?
僕と香奈は同級生だ。
小学生の頃って言うのが本当なら、セーラー服なのはおかしい。
あれ?
他に大事な事があったような?
「……あっ、学校!」
慌てて辺りを見回して時計を探す。
「って、あれ? 和室?」
確かに僕は和室で寝ていた。
でも、小学三年生くらいでもう個人の部屋を貰って、普段はそこのベッドで寝ている。
家族で一緒に寝ていた頃は和室だったが。
それに布団もだ。
これは父さんの布団じゃないか。
……和室で寝ていた頃は父さんの布団に入って寝ていたっけ。
「って、そうじゃない! 時間時間……」
起き上がって襖を開け、リビングに出る。
あった、置き時計。
「時間は……十一時五十五分」
外は明るく、今日はもちろん平日だ。
さようなら、皆勤賞。ふぉーえばー。
そうだ、スマホはどうだろう? 通知とか留守電とか入っているだろうか。
案の定、たくさんの通知が溜まっていた。
学校から、清から、香奈から。
内訳は学校三件、清三十件、香奈八件。
心配させちゃったな。早く返信してしまおう。
学校へ連絡もしなきゃ。
さて、色々引っかかるところもあるが、今から学校に行っても欠席は免れないので休んでしまおう。
せっかくの休日をどうやって過ごそうか。考える前にお腹が鳴った。
「とりあえずご飯、かな」
朝ご飯、じゃないな。昼ご飯の支度に取りかかろう。
お疲れ様でした。
今回は夢編のような過去編、はたまた、過去編のような夢編でした。
最近一話ごとの盛り上がりが無さすぎて、なろうでの投稿が合ってないのではないかと思ってしまいますが、めげずに書いて投稿していきたいと思いますので、応援よろしくお願い致します。
励みになりますので、レビューや感想、評価ポイントを付ける等して頂けると幸いです。
「妖精のことがら」を今後ともよろしくお願い致します。




