表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/28

第27話 岩窟


「は……い?」


 女王リゼッタは自分の耳を疑った。


「……ナディア。もう一度おっしゃってくださる?」


「はッ、ご報告いたします。私、ナディア・エルゾーナは、ダダリ領主アルト殿と結婚いたしました」


 ナディアは鉄兜を外した素顔でハッキリと答えた。


「け、結婚……あの、アルトさまと?」


「はい。つきましては、ナイト爵を返上し、騎士団を退役したく存じます」


「そ、そうですの……」


 驚いた。


 あの武一筋の硬派な女性騎士が、なんとも晴れやかな、少女のような顔をしている。


 その素顔は、青空へ飛び立つ蝶のように自由に見えた。


 胸の奥がチクリと痛む。


(羨望……ですの? 女王であるわたくしが……)


 リゼッタは唇を噛みながらも、その矜持を持って内心をあらわさなかった。


「おめでとう、ナディア。あなたの幸せを祝福しますわ……」


 せめて祝福だけは本物であろうと、ほほ笑んでみせる。


 ナディアに対する確かな親愛の情も、また本心であった。


「はッ……ありがたき幸せ!」


 ナディアは深々と礼をすると、意気揚々と去っていく。


 その背中を見送りながら、リゼッタはこっそりため息をついた。


「陛下!」


 そんな時、脇に控えていた髪の短い女兵士が進み出る。


「何故ナディアさまをお引き止めにならないのです?」


「引き止める?」


 女はヴェダと言って騎士団の副団長である。


「ヴェダ。もうよいのです。本人が決めたことに、どうして口を挟めましょう」


「しかし、ナディアさまがいなくなってしまえば、王権にとってその損失は計りしれません。ただでさえ、革命派の動きが不穏なこの時局に」


 ヴェダは短い髪を逆立て、鋭い瞳で扉をにらみつつ続けた。


「それに私は我慢がならないのです。ナディアさまの武人としての道が台無しになってしまうことが! それもあんな、ダダリの領主のごとき取るに足らない、フザけた男になど……」


「黙りなさい!」


 リゼッタはふいに声を上げて、自分の声の大きさに驚いた。


(わたくしとしたことが、なにを苛立って……)


「陛下……?」


「……下がりなさい、ヴェダ。少しひとりになりたいのです」


 リゼッタがそう命じて目を伏せると、さすがの副団長も恐れ入って退出した。



 ◇ ◆ ◇ ◆



「うらぁあああ……!」


 俺は魔境の第一地区のボス、人喰いトロールへ向かって剣を振りかぶった。


 ――グルオオオオ……!


 剣は敵を真っ二つにし、森を青い血に染めた。


 戦闘能力「1005」の身体は軽く、しなやかだ。


「す、すげえ……」


「さすが若」


 悪ガキ軍団は言葉を失う。


「よし、これでこの地区の魔物はしばらく出現しないぞ。今のうちにほこらを作ってしまうんだ」


「へ、へえ!」


 俺は連れてきた建設集団の一部にそう命じた。


 魔境ではボスを倒すと、その区域の魔物が一時的に出現しなくなる。


 さらにほこらを建てれば、永続的に安全地帯となるはず。


 これで魔境は領土化。


 安全に資源を採取できるというワケだ。


 人喰いトロールの地区には、薬草が自生しているので、これを採取し、回復薬を作ったりできるはずだった。


「今日はこのへんで切り上げですか?」


「いいや。もう少し先まで行こう。目当てのものがあるんだ」


 そう言って、俺は悪ガキ軍団と一部の建設集団を連れて魔境を進んだ。


 さらに行くと、しだいに森の木々は衰え、岩が目立つようになってくる。


 やがてまるで草木も生えない地区へ出ると、そこには急峻きゅうしゅんな岩山が立ちはだかるのであった。


「ここだ。目当ての場所は」


 岩山にくりぬかれたような大穴がある。


 昼だというのに、闇がこちらを覗いてくるような暗さ。


 俺はその岩窟へ足を運んでいった。


「うッ……」


「……こりゃあ」


 コワモテの悪ガキどもも後ずさる。


「オマエら、ひょっとしてオバケが怖いのか?」


「……ひっ」


「オバケ!?」


 どうやら図星らしい。


「バカやろう! オバケが怖くて兵隊ができっかよ。早くたいまつ焚いてついてこい!」


 そう怒鳴ると、みんなようやくベソかきながらついてきた。


「……ったく、オマエらの顔の方がオバケよりよっぽど怖えよ」


 炎に照らされた顔に傷のある連中を振り返ってそうぼやく。


「そりゃねえっすよ、若〜」


 さて、この岩窟でオバケには遭遇しなかったが、モンスターは出現した。


 メタル・リザードや吸血コウモリ、ストーン・スパイダー……などなど。


 こういった通常モンスターは悪ガキどもの経験のため、ケツを叩いて倒させる。


 30人でかかれば問題なく倒せた。


 森ほどではないが、割と広い空間だからな。


 やがて、この岩窟のボスがあらわれる。


 ――ゴゴゴゴゴ……!


 岩ゴーレムだ。


「で、でけえ!」


「あんなの無理だよぉ」


 と、さすがに恐れる。


 俺はみんなを下がらせ、言った。


「ゴーグル。悪いけど、お前の大木槌を貸してくれ」


「う、うん……」


 俺が大木槌を受け取り振り向くと、岩の巨人と視線が合う。


「うおッ……」


 岩ゴーレムの拳が、俺の頭上に振り下ろされた。


 間一髪、避ける。


 それは岩窟の岩を砕き、激しく土埃を立てた。


 攻撃力だけ見ればあのゲオド中将と同等かそれ以上かもしれない。


 だが、身躱しは発動していたぞ。


「おらッ! よそ見してんな!」


 俺は土埃から飛び上がり、木槌を振り上げる。


 ――ゴ、ゴゴゴゴ(汗)


 木槌が岩ゴーレムの脳天を直撃!


 ヤツの頭が、メリメリと胴へめり込む。


 首のない岩ゴーレムは膝をつき、ゆっくりと地へ伏した。


「よし、ここにもほこらを建てよう」


「わ、わかりましたんで」


 建設集団がほこらの建設に取り掛かった。


 一方、悪ガキどもが尋ねる。


「やれやれ、これで終わりですか?」


「まあ、戦いはな。だが、もうひと作業あるから手伝え」


 俺はそう言って、四次元BOXからツルハシを三本出して言った。


「これは?」


「王都で買ったツルハシだよ。カネがなかったから三本しかねえけど……」


「何をしろってんで?」


「岩窟には石炭と鉄鉱石が埋まっているんだ。とりあえずの量でいいから、ちょっと掘っていくぞ」


 こうして採掘した鉱石を四次元BOXへ収納し、引き上げた。


 さて。


 魔境から帰り、村へ行くと、今度はモノ作り集団の作業場へ向かった。


「この中で金属を扱ってみたいヤツはいるか?」


 そう募集すると、10人ほどが立った。


 5人を『製鉄師』に、5人を『鍛冶屋』として任命する。


 また、彼らを活かすためには『高炉』と『鍛冶場』という施設が必要だ。


 建設集団から10人ほど連れてくる。


「この事業にはダダリの興亡がかかっているからな。頼むぜ!」


「おおおお!」


「やってみせますぜ!!」


 こうして鉄アイテム用の20人チームが完成した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ