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第21話 いつも通りやれ


「ケケケ、まさかトルティの息子があそこまで弱かったとはな……」


 獣の毛皮をかぶった男が、馬の上でそうつぶやく。


 そう。


 彼は、北のガゼットの領主。


 粗野な姿に一見山賊のごとく見えるが、そのうしろには兵400が列をなしている。


「父上。本当にダダリ領を攻めてだいじょうぶなのですか?」


 さて、これに不安を述べるのはガゼット領主の息子であった。


「これまで領境は均衡を保ってきたというのに……」


「ケーッケッケッケ! 心配するな。キサマは王都におらんかったから知らんのだろう。トルティ亡き後の新領主はそれはもうひどいヘタレなのだ」


 ガゼットの領主は、王都での御前試合を観た時から『戦後すぐにダダリを攻めよう』と考えていた。


 闘技場で女の子にボコボコにされていたアルトとかいう少年の情けない姿。


 これまでトルティの武力により二の足を踏んできたダダリ侵攻だが、新領主がアレなら何も迷うことはない。


「父上、私が心配しているのはダダリのことではありません。ライオネのことです」


「なに?」


「我々がダダリに攻め入れば、ガゼット領はガラ空きです。その隙にライオネが攻めて来たらどうするのですか?」


「ケッケッケ、さすが我が息子。だが、抜かりはないぞ。ライオネにはちゃんと話が通っておる」


「なんと! 本当ですか?」


「ああ。むしろライオネ領主の方からダダリ侵攻を勧められたのだ。だから今日はお前も思う存分暴れるがよい」


「わかりました!……ケ……ケ……ケーッケッケ!」


 ライオネの心配がないと知ると、この息子も父とそっくりな笑い声を上げて馬先をダダリへと向ける。


 こうして、ガゼット兵はすみやかに森を南下してゆくのだった。




 ◇ ◆ ◇ ◆




 北のガゼット領が攻めて来る。


「お前たちは館にいろ」


 俺はそう言ってリリアとノンナを館へ避難させた。


 おふくろは家にいる。


 あとは弟たちだ。


「おーい、ヨルセン、セラム。お前たちも館にいろ」


「えー、ボクも戦いたいよー」


 と言うのは末弟のセラム。


「ただ留守番してろってんじゃない。館でおふくろたちを守るんだ」


「うーん……」


「わかったよ。行こうセラム」


 ヨルセンがそう言ってセラムの手を引いていった。


 で、ちょうどそんな準備の最中。


「アルト殿!」


 ふいに鎧の音と共に、背後から呼びかけられる。


 なんだと思って振り返ると、ここにいるはずのない女騎士の姿があった。


「ナ、ナディア……どうしてここが?」


「ふふふ、当たり前だろう。そなたがここの領主であることは知っているのだからな」


 ナディアは『してやったり』という感じで胸をそらし、鎧のメタリックな乳房をキラーンと輝かせている。


 マジで地の果てまで追いかけて来そうだな。


 また『勝負しろ』とか言うのだろう。


「とは言え今回は私用ではなくてな。リゼッタ様の命で……」


「あのさ!」


 俺はナディアに勝負を挑まれる前に制止して言った。


「悪いけど、俺今すッッ……げえ忙しいんだ」


「むッ、そうなのか? こちらも大事な用なのだぞ」


「わかった、わかった。あとで相手してやるから、ちょっとウチで待っててくれよ」


 俺はそう言うと、ナディアの手を引いてやかたへ連れて行く。


「おーい、おふくろー!」


「わっ! なんだい? この鎧の人は?」


 急に全身鎧の騎士が家にやって来ておふくろがビックリするので、ナディアは「失礼」と言って鉄仮面を脱いだ。


 すると、いかめしいかぶとからふわりと美しい金髪が舞い、意外に可憐な素顔が表に出る。


「おやおや、なかなか美人じゃないか」


「だろ?」


「あんた、またスケコマシて来たのかい?」


 このおふくろは自分の息子を何だと思っているのだろうか……


「先の戦争で一緒に戦った戦友だよ。せっかく来てくれたんだけど今忙しいから。ちょっとお茶でもして待っててもらって」


「あらあら。そういうことなら、どうぞあがんなさい」


「……お邪魔(いた)す」


 こうしてナディアの相手をおふくろに任せ、俺は急いで家を出る。


 やれやれ……


 そう息をつきながら庭へ出ると、ちょうど悪ガキ軍団が集合し終えるところであった。


 ……ざわざわ、ざわざわ


 先のことも考えて、今日はどうにかコイツらに領地を守らせたい。


 敵は兵400。


 敵を迎え撃つのは素人の悪ガキ30名だ。


「みんな! もう聞いていると思うが、これからガゼット領が攻めて来る!」


 そう告げると、およそ1クラスぶんの数の人々は恐怖におののく。


「やっぱり……」


「あ……あのガゼット領にオレたちが勝てるわけねえ」


「トルティ様ももういねえのに!」


 怯えるのも無理もない。


 ガゼット領は弱小ながら、ダダリ領と比べれば何倍もの領地と人口を誇る領地。


 絶対に勝てない……そんな印象が100年単位でダダリの領民たちの中に根付いているのである。


「ビビるな!」


 だが、怯えていては勝機はない。


 俺は右の拳を握り、続ける。


「俺たちは魔境で『メタル・キャタピラー』を倒してきたんだ。断言できるがヤツらにそんなマネはできない! いつも通りやれば絶対に……勝てる!!」


 ――お……ぉぉ……おおおおお!


 みんなの士気ががぜん盛り上がった。


 そこで、リッキーが木の上から叫ぶ。


「来やがった! 来やがったー! ガゼット領のヤツらでやんすー!」


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