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第13話 風神魔法カイザー・ガスト


 敵本陣はすぐそこだ。


 俺は物陰から周囲の様子をうかがう。


 ……よし、先ほどから状況は変わっていない。


 大半の兵は前線へ出払っており、本陣周辺に残っているのはせいぜい百ほど。


 あとは前線で勝敗がついてしまう前に、司令官を倒せるかどうか。


 時間との戦いだ。


「アルト殿……」


「ひやぁ!?」


 後ろから声をかけられて変な声が出た。


 振り返ると、ナディアがいつもの鉄仮面をきらりと光らせていた。


「って、ナディア!? どうして?」


「そなた一人で死地へ行かせるわけにはいかぬだろう。部下たちは傷が重いから先に帰還させたが……私はまだ戦えるぞ」


 相変わらずだなとは思ったが、正直助かる。


 今は少なく見えても、ひとたび騒ぎになればすぐに数百は寄ってくるだろう。


 現状の『戦闘力255』ではギリギリだ。


 しかも時間がない。


「よし、わかった。じゃあ、まずは攻撃魔法で敵をある程度減らす。ちょっと離れてろ」


「うむ」


 俺は右手を掲げ呪文を唱え始めた。


繊月せんげつの因果、永劫を望む星辰せいしん、森羅万象を掌中に収めし太古のロゴスよ……」


 ――ごくり……


 ナディアの唾を呑む音が聞こえた。


「ゆけ! 天穹を揺るがす雷霆らいていの息吹! 風神魔法、カイザー・ガスてゅふ……!」


 しーん……


 ヤバい、噛んだ。


「……そなた、何をしておるのだ?」


 ナディアがきょとんと首をかしげている。


 カー……!!(恥)


「ま、間違えたんだよ。誰にだってミスはあるだろ!」


「そ、そうか」


 俺はまだ顔の熱さを感じながらも、モタモタしてはいられないので、また手を掲げて呪文を唱えた。


「ええと……か、カイザー・ガスト!」


 すると刹那、突風……いや、神風が吹き荒れる。


 ――ヒョオオオオオ!!


 人が数メートル吹っ飛び、陣幕は引き裂かれ、仮設矢倉がバラバラと崩れる。


 敵本陣はにわかに混沌と化した。


「ほら、こうなるんだよ」


「……雷霆らいていの息吹はどうしたのだ?」


 というナディアの言葉は聞こえないふりをした。


「とにかく、敵は混乱しているぞ。今だ!」


「う、うむ!」


 そう言って、カイザー・ガストで壊れた本陣へ、俺たちは二騎で突撃していく。


「なんだキサマら!」


「敵だ! かかれー!」


 即座に十人ほどが向かって来たが、コイツらを蹴りと掌底でぶっ飛ばす。


 すると、こちらを脅威と認識し始めたようで百人規模の兵が一斉に向かってくる。


「敵襲だ!」


「ヤツを止めろぉ!」


 この人数だと素手はキツイ。


 俺は四次元BOXから鋼鉄の剣を取り出した。


「アルト殿! 先へ行け。司令官を探すのだ!」


「ああ!」


 ナディアが一定数の兵を引き付けてくれたおかげで、突破がずいぶん楽になる。


 司令官はどこだ……


 いた!


 胸にたくさん勲章をつけてジャラジャラとさせている。


 たぶんアイツだ。


「司令官ポピー! 覚悟しろ!」


「ひイ……」


 ガリガリで神経質そうな顔が恐怖におびえる。


 この戦争は勝ちだ。


 そう思って駆けていった時。


「もわぁ……!」


 ふいに、やわらかな、巨大なおっぱいのようなものにボヨヨンっとぶつかる。


 な、なんだ?


 顔を上げると、そこにはスキンヘッドにでっぷりとした巨漢が立ちふさがっていた。


「小僧、残念だったな」


 ゲオド中将だ。


 くそ、戻って来やがったのか。


「スレン軍にキサマのような強者がおったとは知らなかった。しかし、ここまでだ。ふんぬッ……!!」


 ゲオドは隆起した腕を振り上げ、拳をハンマーのように振り下ろした。


 ヤバい!


 俺は『身躱みかわし』を使う。


 ……が、発動しない。


 ヤツの鉄槌が、俺の頭上に降りかかる。


「ぐッ、ううッ……」


「ほう?」


 とっさに、十字ガードで受け止めはした。


 だが、『身躱みかわし』が発動しなかったということは、ゲオドの方が戦闘能力値が上だということを意味する。


「クソ、まだだ!」


 もちろん、相手の方が戦闘能力値が上だからと言って、絶対に勝てないワケじゃない。


 どんなゲームでもステータスが上の方が必ず勝つなんてことはないし、それは現実でも同じだ。


 俺は鋼鉄の剣を抜き、ヤツへ斬りかけた。


「るあああッ!」


 ――ボヨヨン……


 しかし、手ごたえがない。


 ヤツの肉、『槍殺し』に、剣が跳ね返されてしまう。


「なかなかの攻撃だ。しかし、この腹の前では無力なものよ!」


 ならば急所を狙いたいところだが、ゲオドの動きは見た目に反して俊敏で、オーガを倒した時のようにはいかない。


 逆にヤツの攻撃はガードの上からでも強烈で、俺の身体に少しずつダメージが蓄積されていく。


 何か逆転の作戦が必要だった。


「アルト殿! 気を付けよ! ゲオドが何か狙っているぞ!」


 その時、背後にナディアの声がする。


 彼女の言う通り、ゲオドはすぅっと息を吸い、大きく口を開けた。


 あの技だ。


 ――カッ……!


 ゲオドの口から魔法エネルギーが放射される。


 が、それを待ってたぞ。


「カイザー・ガスト!」


 俺は風神魔法を広範囲ではなく、一点に凝縮させて撃った。


 突風は螺旋を描き、魔法エネルギーと衝突し、押し返し、そのパワーを取り込みつつゲオドの方へ向かって行く。


「ぬおおお! そんな……」


 命中。


 爆音の後、土埃が激しく舞う。


「……やったか?」


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