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死に損ないの世なおし 〜怨霊幼女編〜 【閻魔の代理執行人】  作者: まこマZ
地獄での出来事集 本編未収録エピソード蛇足1〜6 全6話
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地獄での出来事 蛇足3 『神と予知夢』 (本編8話付近)

(本編からカットした地獄での出来事集を追加の蛇足として公開いたします。)


「ハッハッハッハッハー!」


 ウエヤマさん……、も、もとい……ウエヤーマン様は若干大袈裟に大笑いしているように見えた。


 で、でも……マ、マジで……か、神様……?


「あ、あの〜……こ、これは一体どういう状況なんでしょうか? どうして、ウ、ウエヤマさんが神様で……いや……ウエヤーマン様で……そして囚人として地獄でお勤めされておられるのでしょう……か?」


 彼は少しだけ悪戯(いたずら)っ子のような笑みを浮かべた。

「お〜それはのう…………ただのドッキリじゃ!」


「へ?」


「一回やってみたかったのじゃよ! ただの老人を装っておいて、後からパァーッと『実は神でした〜!』ってネタバレするのをのぉ」


「は、はぁ……」 


「いや〜結構気持ちいいのぉ! あ、なので囚人というのも唯の設定なのじゃ」

「せ、設定……?」

「わしはお主に会うためにお忍びで地獄まで来たのじゃ」

「わ、わたしに会う為に?」


 ウエヤーマン様が神であることは本当な気がするけど……。


「とは言え、公の場でワシが囚人と会う訳にもいかんしのぉ。まして地獄で会うなど以ての外」

「そ、そうなんですね」

「それでのぉ、まずは周囲を欺く為に囚人になりすましてここに潜入したのじゃ」

「な、なるほど……」


「ただのう……つい、遊び心が抑えきれなくなってしまってのぉ……。ついでにお主にドッキリを仕掛けてしまったと言うことじゃ」

「そ、そうだったんですかー!?」

「ハッハッハッハッハー! どうじゃ驚いたじゃろう?」

「え、ええ、そりゃぁ勿論……」


 さらに、この部屋は彼が作った結界の中にあり、地獄の民に気づかれる事は無いとのこと。

 初めての『結界』体験に心が躍ってしまったのは言うまでもない。


「さぁ、では本題に入ろうかのう……」


 そう言って、神、ウエヤーマン様は語り始めた。


「実はのう……、ゴホンッ! ……人類が滅亡する時(・・・・・・・・)が大幅に早まってしまった様なのじゃ!」

「え? …………。は、はいぃーーーっ!?」


 この唐突で重すぎる話題に、また頭の回転が追いつけなくなった。

「い、いきなり唐突すぎませんか……? じ、人類滅亡って……。ま、まさかそれもドッキリとか?」

「おー、スマンスマン。確かにインパクト強すぎたの……。しかし、これはマジな話なのじゃ」

 こちらが半信半疑だと見てとって彼は俺の目をじっと見つめて言った。


 その圧に押され、この神様は真剣な話をしているのだと悟った。

「マ、マジですか……」

「マジじゃ…………。わしの神友に予知夢の神というのがおっての……。彼女がそうなる夢を見てしまったのじゃ」

「よ、予知夢の神様……」

「そして『その大元の原因は現代社会における神仏や地獄軽視の風潮にある』と言ったのじゃ」


「——そ、それって…………。実はこの地獄の長官も同じような事を心配していました……」


「ほう」


「……でも、そ、そんな事で本当に人類が滅亡までしてしまうのでしょうか……?」

「神仏や地獄軽視とはすなわち、罪を顧みず悪事や罰を恐れない風潮の事じゃ。その行き着く先が人類滅亡……。この流れは、やはりお主にも信じがたい事かのぉ?」

「い、いえ…………実は、そのう……そういう可能性について考えてみた事はあります」


「なんと!? 本当かお主!?」

 ウエヤーマン様は少し驚いたように目を見開いた。


「ちょ、ちょっと厨二病的な考えかもしれませんが……」

「いや構わん。聞かせてくれ」

「わ、分かりました……」


 少し躊躇したが、以前考えた事を話してみる事にした。

「わたしは少し前まで、数年くらいの間ネットなどから流れてくるニュースを見ては世の中の理不尽さに真剣に怒っていました」

「ほう?」

「私利私欲に走り責任を取らない権力者の横暴……やったもん勝ちの世の中。どう考えても神や地獄を畏怖せぬ人々が世を支配し始めている。そういう人々がさらに増殖し状況がエスカレートしている。そういった不安を感じていました」

「ふむ」

「一方、ここ数年でそこそこ名の知れた人々が声を上げ始めたのにも気がつきました。彼らは証拠を列挙しもっともな意見を公表している。そして彼らに賛同する人々も増えてきている等とも感じていました」

「ほぉ?」

「しかし、結局何も変わらない……。小さな変化をいくつか見る事はあります。でも、大きな流れとしては全く変わっていないと言える。むしろ悪化していると感じます」


「うむ……」

 ウエヤーマン様は考え込むように目を閉じた。


「悪事がバレて制裁を受けるニュースはいくつか見ました。でも、結局は小者の話だったり局所的な解決だったり……。末端だけが処分されるといった所謂トカゲのシッポ切りで終わっていたり」

「なるほど……」

「どう考えても大多数の悪事や黒幕は見逃されている。被害者側は泣き寝入り。あるいはその被害自体に気づいていない。そして加害者は制裁を受ける事なくのうのうと生き続けている」


「うむむ……」

 ウエヤーマン様の顔が歪む。


「つまり今『悪事や悪人の罪が暴かれず罰も受けずに済む』という状況が増えているのではないか? 『因果応報が現世においては機能していない』のではないか? ……と」


「——なんと……!」

 ウエヤーマン様が驚いたように目を開いた。


「神や地獄を畏怖しない世の風潮。それで何の問題もなく過ごせる世の中。そういう新たな(ことわり)が出来上がってしまっているのではないかと……」

「……」

「何かがおかしい世の中。そんな世の中が長く続くはずは無い。例えば被害者や弱者側の不満が蓄積し、ある時爆発する。そしてそれが世の中全体に波及する……。そんな世紀末が、世界の破滅が……いつか訪れるのではないか等と考えていたのです」


「…………。フゥーーっ……。そうか〜、なるほどのぉ…………」

 そう言いながらウエヤーマン様は少しニヤついているようにも見えた。


「勿論、一方で人は……人間社会は別に何も変わっておらず昔からそういうものだという考えもあります……」

「まぁ、いつの世でも何かしらそういう事はあったじゃろうからのぉ」

「ただ、ある政治形態や統治体制が革命や内乱などによって変わるというのは我が国を含めた世界中で起こって来た事。今後も世が乱れ世界が乱れ……と進んでしまう可能性もゼロではないと……」


「……うむ。そしてそれらが予知夢の神が見た『人類滅亡の結末』につながる可能性もあるのぉ……」

 ウエヤーマン様は、また考え込むような仕草をしたが悲観している様子ではない。


 むしろ腑に落ちたようにウンウン頷きながら嬉しそうに目を輝かせ俺を見つめてきた。


 ……


「……そ、その予知夢は絶対に当たるんでしょうか?」


「うむ……彼女の予知夢は現時点における未来そのもの……。このまま行けば必ず起こる事なのじゃ」

 彼は目を瞑り、深刻な表情でそう言った。


「すると、人類滅亡はもう避けようが無いって事ですか……?」

 俺の声は少し震えていた。


「うむ。このまま何もせずに放っておけば……そうなのじゃが……。実は彼女はもう一つ別な夢も見ていてのぉ。……それが、お主が出てくる夢だったのじゃ!」

「え? えぇーーーっ!? ……な……何で……わたしが? って言うか予知夢の神様は私の事をご存知だったんですか?」

「いや、お主の事はその夢の中で初めて知ったと言っておった。無論ワシもお主の事をそこで初めて知ったのじゃが……」


「で、ですよね……」

 突然自分がそんな夢に登場したと聞いて、動揺すると同時に何か心をくすぐられるものを感じてしまった。


「……その夢の中でお主はのぉ……」

「ま、まさか……わたしが人類を救う…とか言うんじゃ無いでしょうね?」

「それがのう…………」


 俺はゴクリと唾を呑み込む。


「……よー分からんのじゃよ……」

「へ?」


「よー分からんのじゃ」


「ええぇーーっ!? な、なんなんですかそれーーっ!?」

 久しぶりにズッコケてしまった。


「いや、彼女が言うには……その夢は彼女にとっても何とも不思議な体験だったらしくてのぉ。……そしてそれ以来……度々同じ夢を見てしまうそうなのじゃ」

「は、はぁ……」


 ウエヤーマン様が言うには…………予知夢の神は自ら見ている夢の中で『人類滅亡の話』をウエヤーマン様に話すらしい。

 すると突然場面が変わりその夢の中に俺が現れると言うのだ。


「そ、それでその後は……?」

「何度見てもその夢はそこで終わるそうなのじゃ」

「ええぇーーっ!? って……そ、それじゃあ……」

「そう……だからよー分からんのよ」


「ヒョエ〜」


 しかし……『この夢の存在は人類滅亡の未来を変えられる可能性を秘めている』と彼女が言っているらしい。

 そして『この件について天ノ生千造が大きく関わってくるのは間違いないハズだ』とも。


 た、確かに……そうでもなければそんな予知夢に俺なんかが出てくるハズが無いんだろうけど……。


「その夢の中でのぉ、特に『彼女が人類滅亡の話をワシにした後にお主が登場する』というところがミソなんじゃ」

「そ、それはつまり……?」

「まずわしが何らかの行動を起こし、その結果としてお主が現れる。という事は、わしの存在理由とも深く関わっておるハズなのじゃ」

「ウ、ウエヤーマン様の存在理由?」

「そうじゃ……。わしが何の神であるか分かるかのぉ?」


「え?」

 そ、そうか……神様と言っても色々な神様がいて、御利益というのか……専門分野もそれぞれ違うからなぁ……。


 うーん……って、これまでの発言から察すると……

「…………ま、まさか……アニメ?」


「フォー、フォッフォッフォー! そうじゃ! ……わしはのう…………ア…アニ……アニオタの神なのじゃ!」

 彼は少し恥ずかしそうな素振りをしながらそう言った。


「な、何なんですかその『アニオタの神』ってー!?」

「お、おう! それはのう……わしのアニオタ度が過ぎてのぉ〜……アニオタの道を極めてしまったところ、神界からアニオタの神に任ぜられたという次第じゃ! ハハハ……」

「ア、アニオタの道って……」

「お、お主……信じておらぬな?」

「い、いえいえ! ウエヤマさん……いやウエヤーマン様が神様だというのは何となく本当だと感じているのですが…………。ア、アニオタ神なんて聞いたことがないですし、何か急に真実味が薄れたような……」


「お、お主......! い、痛いとこ突くな〜。 ううっ……」

 そう言って彼は辛そうに胸を押さえた。


「え? あ……あぁーーっ! ス、スミマセン失礼致しました!」


「いやいや……良いんじゃよ。わしも最初は冗談かと思ったしのぉ……。未だに名乗る時はちょっと恥ずかしいからのぉ……」

 そう言いながら彼は片方のこめかみ付近を手でポリポリとかく。


「ま、まぁ、そのお気持ちは分からなくもないですが……」

「ガーン! ……や、やはりそう思うのか? ……トホホ……やはりそうなのかぁ…………」


 あ、ヤバイ! アニオタ神様がショボンとしちまった……!


(地獄での出来事集 蛇足4 『神々の禁忌』へ つづく)

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