変なのしかしない
さて、スープが温かいうちに飲みきってしまおうと思っていたのだが、ここでコールが鳴る。
飲み終えてから席に戻れば良かった・・・
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「俺は異世界で冒険者をしてるマックス・ブランドンっていうもんだ。」
「マックス様ですね。ご用件をお伺いします。」
「実は、俺の周りの女子にマトモなのが一人もいないんだ。どうしてくれるんだよ。」
そんなこと、私に言われても・・・
「それで、どうマトモでないのですか?」
「俺のパーティーのメンバーで、多分、彼女が俺のお相手役だと思うんだが、コイツがボクっ子で、ギルドの受付嬢が語尾にピョンがつく獣人。聖女がツンデレなんだ。」
「みんな可愛らしいではありませんか。」
「いや、最低一人はオーソドックスなの、居てもいいだろう?」
「そのような保証はサービス対象外です。」
「いや、いないんだよ。周りに一人も。」
「そういう文化なのではありませんか?」
「ボクっ子なんて、幼い頃に稀にいるかもってレベルじゃないのか?」
「実在するからモデリングされたのです。視聴者の共感を得られないキャスティングはしませんからね。」
「いや、それなら最大公倍数を狙った配役をするべきじゃないのか?」
「ボクッ子やウサギっ子は、一部の人には強烈に刺さるんですのだピョン。」
「そう、のじゃもいるんだよ。」
「どこかの王女かにゃ。」
「その喋り方、やめてくれません?」
「何事も、大らかに笑い飛ばせる余裕を持ってもらいたいものです。」
「でも、そんなのばかりって・・・」
「正直、私には大した問題だとは思いません。ちょっと話し方や語尾が個性的なだけでしょう?」
「ツンデレ聖女はいますけど・・・」
「いくらツンデレであったとしても、聖女の資格を持つ立派な方なのでしょう?」
「アイツ、モンスターには一番容赦無いけどな・・・」
「戒律に厳格なのでしょう。」
「しっかしなあ。どうしてこういう話にボクッ子なんてレア種を入れてくるんだろう。」
「色んな女性を登場させて、彩りを演出したいのではないですか。」
「だって、語尾が違うだけだぜ?」
「そんなことはありません。中身はボーイッシュのはずですし、声優さんだって工夫してますし、何故か髪の毛も水色が多いですし。」
「ときめかないなあ・・・男の俺から見ると、どうも男になりきれて無くて不自然だし。」
「マニアはそういう所が刺さるんですよ。では、聖女様は?」
「勇者だからって勘違いしないで下さい、が口癖なんだよ。」
「それを毎日言われると萌えますね。」
「ああ。朝から晩まで言われて萎えてるよ。」
「じゃあ、彼女しかいないピョン!」
「いや、いい子なんだよ。ある意味一番・・・」
「王女は『妾にするのじゃ』とか言ってこないんですか?」
「何度もお断りしてる。」
「それで、マックス様はいかがしたいので?」
「彼女、欲しい・・・」
「ホクはのじゃがお薦めだピョン。勘違いしないで下さい。」
「ほら、酷いもんだろ?」
「確かにそうですね。でも、世間は広いです。外に目を向ければ、いい方は沢山おられるのではないのですか?」
「世の女性の半分くらいはツンデレで、残りも多くはボクッ子とギャルとニャアとワンとピョンだよ。」
「それ以外もいるのですよね。」
「残りはおばあさんだ。」
「文化ですね。」
「何とかならないのかよぅ。」
「貴族の女性はさすがに淑女をされているのではないですか?」
「ああ。ツンツンしてるな。」
「もう、そう言う世界だと思って諦めて下さい。それに人間、中身が大事ですから。」
「中身がツンデレはヤだなあ。何であんなに人気ないのにいるかなあ。」
「人気はありますよ。誰も彼女に選ばないだけで。」
「でしょ?それが世の中に溢れるほどいるんだよ。おかしくね?」
「そこでボクッ子です。」
「アイツ、結構生意気なんだよな。」
「女の子らしいボクッ子って変ですからね。」
「そこはかとなく女が残ってるのが・・・」
「そこが良い所では?」
「どうも萎えちゃうんだよなあ。」
「ところで、魔王討伐とか無いのですか?」
「聞いてくれよ。魔王ものじゃなんだよ。」
「徹底してますね。」
「のじゃは一人で充分だ。」
「それが討伐理由なのですね。」
「違うよ!いくら何でもそんな理由で戦わないよ。」
「そのうち慣れますよ。」
「もっとちゃんとした世界が良かったなあ。」
「魔王のいる世界がちゃんとしている訳無いじゃないですか。」
「いや、女性がちゃんとした世界だよ。」
「でも、モテるんでしょう?」
「一応これでも勇者だからな。」
「じゃあ、いずれ彼女くらいできますよ。ただし、選り好みはいけません。中身重視ですよ。」
「分かったよ。語尾は気にせずツンデレを避けるよ。」
「では、ご健闘をお祈りしております。」
「ああ、ありがとう。」
「私はのじゃは好きですよ。」
「私もボクッ子は刺さりませんが、のじゃとピョンは刺さります。」
「いいですわねピョン。」
「副班長はお上品キャラですから全く似合いませんね。」
「そうね。天使にピョンはあり得ないですしね。」
「一度、ミチコに言わせようかな・・・」
「あーしっ子以外は似合わないと思います。」
やはりミチコはあれ以外無理そうだ。
そう思いながら、すっかり冷めたスープを飲み干す。
ほら、やっぱり缶の底に一粒・・・




