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ざまぁするなら王に限る

 さて、1月は比較的余裕がある。


 この時期は新規転生者が少ないシーズンなので、そういった入門編的な質問は減るし、4月の新規転生者もかなり落命してしまう関係上、束の間の休日というか、オフシーズンのような状態になるのだ。


「そういう時は、アンタ居るのね。」

「仲間がみんなリハビリ中だからね。魔女との再戦はもうちょっと後にするつもり。」

「4月になればアンタも現場行きよ。」

「めんどくさっ。」

「ええ、班長が一番面倒臭そうな所に送り出してくれるわよ。」

 と、ここで今日最初のコールが鳴る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「余はラセルランド王国の国王をしておる、レオン・ロンドベルⅢ世という者じゃ。」

「レオンⅢ世陛下ですね。ご用件をお伺いします。」


「余は何故か暴君と呼ばれておってな。何か評判が良くなるための知恵を貸して欲しい。」

「善政を敷けば良いのでは?」

「いや、そこそこちゃんとやっておるのだ。税金だって他国並みじゃし、隣のバカ殿よりは真面目に政治をやっておると自負しておる。」

「それでも評判が悪いわけですね。何か、お心当たりは無いのでしょうか。」

「うむ。先日、聖女を処刑してしまったのが決定打じゃったかのう。」

 そりゃあ、聖女を処刑したらそうなるだろう。


「何故、そんな酷いことを?」

「別に酷くは無いぞ。我が息子を誑かし、貴族学校の風紀も散々乱してくれたからな。当然の報いじゃ。」

「ああ、そういう世界なのですね。」

「恋愛ファンタジーと言うらしいの。しかし、あんな女狐を主役に据えておいてファンタジーとは片腹痛い。あれではまるで痴話胸糞ストーリーだ。」

「確かに、恋愛とファンタジーを付ければ何でもありみたいな風潮ってありますよね。」

「とにかく青少年の情操に悪影響を与えているな。だから、息子や側近共々断頭台送りにしてやったわ。」


「そんなに重い罪を犯したのですか?」

「国家反逆罪だからな。妥当じゃぞ。」

「それで、陛下はストーリーを知っておられたのですか?」

「ああ、大体は神から聞いて知っておったし、知らなくても何となく分かる。」

「そうですか。それで、皇子の元婚約者の方は?」

「うむ。彼女が希望したので、第二皇子の婚約者としてスライドさせてやった。」


「まあ、何となく収まる所に収まった訳ですね。」

「そうじゃ。最後のシーンはかなり胸が空く思いじゃったぞ。これぞざまぁというヤツじゃったな。」

「息子さんが処断されたのですが。」

「あんな愚か者、ああなるのが正義じゃ。」


「しかし、それで民が陛下を恐れるのはある意味、当然のことではありますね。」

「まあ、それは決定打であって、他にもたくさんのざまぁをやって来たからな。しかし、これらは皆、国王として当然の責務じゃと思わぬか?」

「その通りです。しかし、民が恐れを抱くのは当然の流れですね。それでも、評判を良くしたいと?」

「そうじゃ。そうせぬと次のざまぁがし辛いからのう。」

「ざまぁが生きがいになっていますね。」


「最初は王妃、次に財務大臣、私腹を肥やす悪徳商人や妻を冷遇する伯爵、今まで十指に余る悪を闇に葬って来た。」

「最早、時代劇並みですね。」

「ああ。今は次の標的の証拠集めをしておる。」

「ちなみに、次の標的はどなたですか?」

「ああ。辺境の森の中で魔獣を数多く飼い慣らしている娘がおる。あれは危ない。」

 いや、それはモフモフを楽しんでいるだけでは?


「内偵の調査は慎重にされることをお薦めします。」

「うむ。分かっておる。それと、国内の全貴族の家族調査もやっておるところだ。」

「それもざまぁのためでしょうか。」

「そうじゃ。娘を連れた後妻は基本的に全員調査対象だな。特に前妻の娘がいる家があるとワクワクするな。」

「テンプレですね。」

「そうは言うが、まず例外なく前妻の子はいじめられる運命であろう。」

「そうとは限りませんが・・・」


「後は嫡男に魔力や優れたスキルが無い家についても調べておるぞ。」

「ざまぁマニアと言っていいほどの徹底ぶりですね。」

「皆、どうしてこんな楽しい役を希望しないのか、不思議でならん。」

「恨まれない程度にしてくださいね。」


「それで、余のイメージアップ作戦はどうかな?」

「やはり、処断した相手がいかに悪人であったかを喧伝するのが一番ですね。」

「う~ん。ありきたりだなあ。もっと画期的なヤツを頼む。」

「では、陛下を暴君呼ばわりする者を一斉摘発してはいかがでしょう。とても思い切った策だと思いますよ。」

「おいおい。本当に暴君になってしまうな。」

「まあ、暴君に片足を突っ込んでいますからね。」

「そんなことはないだろう。スカッとした者も多いはずだ。」


「しかし、本来介入すべきで無い所にまでクビを突っ込もうとしているのですから、暴君の素質は充分だと思いますよ。」

「そうなのか。では、少し気を付けないといけないな。」

「ざまぁもやり過ぎはいけません。時代劇のヒーローだって、犯罪行為があるからあそこまで実力行使するのですから。」

「毎週、夥しい数の侍が斬られておったな。」

「あれを実際にやると正義と通り越して暴君ですからね。」

「分かった。ほどほどにする。」

「では、お国の繁栄をお祈りしております。」

「では、失礼する。」

 こうして電話は終わった。


「悪をバッタバッタ斬る。う~ん、気持ちいいだろうなあ。」

「アンタは罪の有無なんて関係無く斬っちゃいそうね。」

「その場にいるのはみんな成敗よ。」

「下っ端侍が気の毒だわ。」


 私は、班長の声が掛かっても逃げよう。


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