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最終回、0点

「エンディングかあ、難しいですよね。」

「そうですね。そもそもエンディングを想定されていないのが世界ですけど。」


「でも、世界だって物語だって未完という訳には行きません。物語の中には未完で終わってしまったものもありますけど。」

「そうねえ。打ち切りとか作者の心情とかありますけど、世界と連動したお話は何らかのエンディングはありますからねえ。」

「時空固定の世界ならともかく、そうでない日常系世界で全滅エンドなんて、目も当てられません。」

「高齢のキャラ担当は随分焦っているそうですよ。」

「そうなりますよねえ。」

 と、ここでコールが鳴る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「あの、私、異世界でヒロインをやってましたアニー・ヘンダーソンといいます。」

「アニー様ですね。ご用件をお伺いします。」

「私、昨日ハッピーエンドを迎えて王子と結婚したんですけど、エンディングがあまりに酷かったのでやり直せませんか?」


「それは、取りあえずおめでとうでよろしいですか?」

「ハッピーエンドなのは良かったですけど、何だか釈然としないことが多すぎて納得出来ません。」

「何があったのでしょう。」

「もう、色々ありすぎて、何から訴えれば良いか分からないくらい混乱してます。」


「最も印象的な場面は何でしたか?」

「最後に全員の集合シーンがあったんですけど、悪役令嬢と黒幕の宰相まで最後のスチルに写ってるんです。」

「微ざまぁじゃないのですか?」

「いいえ、令嬢は幽閉、宰相は処刑エンドです。」

「ところがどっこい、笑顔でカットインでしたか。」

「はい。しかも最前列で。令嬢は王子と抱き合ってました。」

「視聴者からツッコミ大炎上間違い無いですね。」

「すでに案件です。」


「打ち上げの記念撮影とかじゃありません?」

「いいえ。式場を出た瞬間ですよ? 扉が開いて白いハトが飛び立つ瞬間ですよ。そのタイミングで最初に命を落とした兄までいちゃあダメでしょう。」

「でもまあ、そういう脚本だったのかも知れませんよ。特に小さなお子様が見るようなものなら。」


「最後までは完璧だったんです。ストーリーも笑いあり、感動ありで。それに恋愛だけで無く、謀略渦巻くシリアスパートや緊迫のアクションシーンとか。最後の魔法なんて美しさとスケールの大きさで、放った私もビックリの名シーンだったのに・・・」


「最後で台無しって感じですか?」

「はい。王子の衣装はバカ殿みたいなヤツでしたし、私が投げたブーケを取ったのは兄を暗殺した女性でした。他にも王宮のテラス前に集まったエキストラたちは反乱みたいな騒ぎでした。何でお城に鍬持って来てるんですか。ケーキは運んできた人がひっくり返すし、バカ殿はそれに巻き込まれてクリームまみれ。それを全無視で王様が『今日からお前が王だ』ってちょんまげに王冠被せちゃうし。もうサイテーです。」


「一日でいろいろあったんですね。」

「まだあります。私の相棒のネコ。モフモフで可愛くて。名前はマリンですけど、聖獣だったみたいで最後に人型に変身したんですけど中年おじで・・・」


「マリンちゃん。オスだったんですね。」

「いいえ、昨日まで確かに女の子でした。ピンクのリボン、似合ってたのに・・・」

「でも、サプライズ演出だったのかも知れません。」

「いくら何でも、子猫からハゲおじは酷いんじゃ無いです?」

「それはハゲ差別です。」

「いいえ、本当にショックだったのはおじの方です。」


「でも、事件が全て解決し、王子とゴールイン。披露宴会場での戴冠と、エンディングに必要なイベントは全てこなしてますね。」

「あれでこなしたと言うには、あまりに完成度が低いですけど・・・」

「真実はいつも一つです。」

「いいえ、0点です。」


「まあ、それでも長い人生のたった一日ですので。きっと10年後には良い思い出として笑い飛ばせると思いますよ。」

「結婚式、台無しだったんですけど。」

「いいえ。盛り上がらない結婚式の方がよほど深刻ですよ。そういった式も現実には多いですから。」

「まあ、歓迎されてただけ、マシでしょうか。」

「はい。大事なのはこれからです。人生のエンディングは遥か先ですから。これにめげずに頑張って下さいね。」

「今日は泣いて良いですか?」

「まだ今日は終わりでは無いでしょう。すぐに立ち直って仕切り直ししなければいけませんよ。」

「そうでした。分かりました。ここからは頑張ります。」


「では、次のステージ、頑張って下さい。」

「ありがとうございました。失礼します。」

 どうにか上手くまとめられたようだ。



「しかし、何だったのでしょうね。」

「恐らく、テスト用の脚本が流されたのではないでしょうか。」

「バグでは無いのでしょうか。」

「それはまだ分かりませんが、恐らく違うと思いますよ。何故、ヒロインだけが正常な精神状態だったのか、それがミスか故意なのかは設定したスタッフのみぞ知る世界ですけど。」


「じゃあ、大丈夫なんですね。」

「バグでいろいろおかしい点が発生するなら再度、連絡があるでしょうから、その際にエンジニアにお任せすれば、遡ってやり直すことだってできます。」

「それなら安心です。」

「いずれにしても、人生の最後で100点と言えればいいのですよ。」

「いや、多分、今日のはかなりの減点対象だと思います。」

「ナターシャさん。忘れるのです。」

「はい・・・」


 いいのかなあ。まあ、私の天使生よりは点数高いだろうけど・・・



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