真実はいつも・・・
でも、国家権力から逃げ切るのって大変だなあ、なんて思っていると次のコールが鳴る。
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「もしもし。僕、小学生の蝦夷川古潭。探偵だよ。」
今度は追いかける側の人だ。
「ああ、あれのバッタもんの方ですね。」
「お姉さん酷いなあ。」
「第一、高校生のクセに『中身は大人』って言い切る自意識の高さはちょっと・・・」
「いや、あれはただのキャッチフレーズだよう。」
「それで、エゾガワ様、ご用件はございますか?」
「いやあ、もうかれこれ30年も小学生やっててさあ・・・」
「せやかてクド-。」
「いや、それ実際は言われた記憶無いからね。」
「いかにも言ってそうなセリフなのに。」
「そうじゃなくてさあ。ダレて来ちゃったんだよねえ。」
「それはさっさと組織を壊滅させないエゾガワ様の都合ですよね。」
「いや、あれは編集部の・・・」
「だいたい、解決した件数を考えたら、一日2件でも進級してないとおかしいくらいじゃないですか?」
「僕だけがおかしいんじゃないよ。ずっと小学生とか5歳児なんて、他にも居るじゃ無いか。」
「他が居るからあなたもいいということにはなりません。いつまで彼女を待たせるつもりですか。」
「それを言われるとなあ・・・」
「では、問題は解決しましたね。」
「いや、そうではなく。最近は似たような事件ばかりで・・・」
そういや、科捜研の人も同じこと言ってたなあ・・・
「制作委員会に新しいライターさんを加えればいいだけでは?」
「いや、尺に合わせるには技術が必要でさあ。」
「劇場版だってあるじゃないですか。」
「今はあれだけが楽しみなんだよねえ。」
「通常版は飽きて来ちゃったと。」
「そうなんだよ。最近はトリックを見破るのは単なる余興でさあ。」
「まあ、台本があるなら事前に知ってるはずですしね。」
「いや、推理はガチでやってるよ。」
「じゃあ、尺の調整というか、編集は大変ですね。」
「まあ、考える時間は充分あって、放送はダイジェスト版だからね。」
「時間無制限のクイズ番組みたいですね。それが分かってからクライマックスの撮影をすると。」
「そうだよ。まあ、難しいのは犯人捜しじゃ無くて、トリックそのものだよ。」
「まあ、台本の最後を見れば、犯人は明らかですもんね。」
「それはそうだけど、これだけ長くやってるとさあ、もう台本なんか無くたって犯人すら簡単に分かっちゃうんだよね。」
「そんな方法があるんですね。」
「容疑者の持ち物検査をすれば、一発で分かっちゃうんだよねえ。」
「分かりました。全身タイツですね。」
「お姉さん、僕の助手にならない?」
「お断りします。子供の面倒なんて見てられません。」
「いや、一番手が掛かるのはおっちゃんだから。」
「そうでしたね。」
「まあ、そういうことで、僕が飽きて来ちゃった原因は分かったでしょ。いくら推理好きでも、素人の考えたトリックを相手にするの、いい加減疲れてきたんだよ。」
「でも、本筋は元の姿に戻ることですから、終わりたければご自分でストーリーを進めるほかありませんね。」
「スタッフの説得かあ・・・」
「もう、黒幕の正体も知っているんでしょう?」
「そりゃあね。最後のどんでん返しも決まってるよ。」
「私は大阪に住むライバルの彼女こそが怪しいと思ってます。」
「バーロー。そこは絶対にないだろ・・・」
「巷ではいろいろ考察されているようですけど。」
「まあ、僕もラストを知ってて何事も無かったかのように振る舞うのはしんどいけどね。」
「なら、一刻も早く乗り込んで壊滅させて下さい。」
「分かったよ。」
「エンディング、期待してますよ。」
「うん。じゃあね。バイバイ。」
こうして通話は終わった。やっぱり、あのバッジを使って話してたんだろうか。
「解決しましたか?」
「真実はやっぱり一つでした。」
「長寿番組の宿命ね。」
「でも、ああいうのは一話完結で無いと。」
「そのとおりよ。ほとんどはメインストーリーと無関係っていうのはダレるものよ。」
「その点、私はちゃんと折り返しましたからね。」
「まだ折り返し地点を回ったところじゃない。」
「まさか、ここまで続くとは思いませんでした。」
「この調子で10年」
「いくら副班長のお願いでも、お断りします。」
「まあ、冷たいわねえ・・・」
私はあと2年半で完結する。真実はこれ一つだ。




