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絶縁したいんですけど

 秋、いえ、すでに初冬といってもいいこの季節。

 長い夜に一人、ブラックコーヒーとヨーグルトで過ごす、憩いの時間。


 最近、私のお腹も随分白くなってきたという実感とともに、煌々と灯る明かりを見つめる。

 仕事中だけど。


 そして、そろそろかなあ、なんて思っていると、その通り電話が鳴る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「もしもし。アタシ、元聖女のリディア・シュタウナーよ。」

「リディア様ですね。どのようなご用件でしょう。」

「元彼がしつこいのよ。何とかならない?」


「もし、リディア様個人の力でどうにも成らない場合は、ご家族や高位の方の強力を得て、解決するのが一般的です。」

「そうなんだけどさあ。その元彼、王子なんだよねえ。」

「まずは、いきさつを教えていただいてよろしいでしょうか。」


「そうね。まずアタシは6才の時に聖女候補として神殿に入り、12才で力が発現してそのまま王子と婚約したの。最初から仲はギクシャクしてたけど、彼がアタシの同僚と浮気した挙げ句、アタシを聖女の座から引きずり下ろして婚約破棄したの。」


「よくある聖女追放劇ですね。」

「アタシもこれ幸いと神殿を出て逃亡を図ったけど、あの子、聖女候補としては顔だけのポンコツだったのよねえ。すぐにバレて今は処刑待ちみたい。」


「それで、リディア様は現在、逃亡潜伏中という訳ですか?」

「隣国まで逃げたのよ。でも、見つかっちゃって・・・」

「それは凄い執念ですね。」

「まあ、アタシも迂闊だったわ。お金を稼ぐために治療とかしてたから、そこから足が付いたみたい。」

「生きるためにはやむを得ませんね。」

「それで腰と頭の軽い王子からよりを戻そうとか言われたけど、断ってやったわ。」


「王族と聖女が一緒にならないといけないしきたりがあるのですか?」

「幸運の女神の加護が無くなって、王家が落ちぶれるみたいね。」

「それは、どこまでも追いかけてくるパターンですね。」

「王命まで出てるの。でも、こんなのとまた婚約なんてまっぴらよ。」


「王子から謝罪はあったのですか?」

「そんなのないわね。聖女なんだから俺様と一緒になるのが当然って感じよ。」

「もう、斬っちゃってもいいんじゃないですか?」

「個人的にはそうしたいけど、それ以前にアレと同じ空気を吸うのに耐えられないわ。」

「窒息しますね。」

「そうなのよ。顔も軽量系イケメンなのよ。一番見ててムカつくタイプ。」

 何だか分からないけど分かる。


「それで、今はどのような状況なのですか?」

「隣国の大使館に監禁されてるわ。」

「乱暴はされていないんですね。」

「ええ、身分はともかく立場というか主導権はこっちにあるからね。」

「では、差し当たっては大丈夫です。しかし、その王子はリディア様のことを好きでは無かったのでしょう?」

「そうよ。でも、王様からアタシと婚約しないと継承順位を下げるって言われたらしくて、今さらすり寄って来てるのよ。」


「ということは、近々他の王子からもアタックされますね。」

「そうなの?」

「国王からすれば、リディア様のお相手が軽量王子である必要はありませんからね。」

「確かに、既に婚約破棄したことが知れ渡っているスキャンダル王子より、まだ犯罪者では無い王子の方がマシね。」

「他の王子も素質ゼロな感じですか?」

「もうさっさと滅びろよってレベル。」

「しかし、だからといって逃亡が成功する見込みは薄いですね。」

「どんな選択肢があると思う?」


「一つ目は、他の王子を焚き付けて大使館で騒ぎを起こして逃亡する。二つ目は、その足で隣国政府に亡命する。この場合、その国の王族と結婚なんてことになるかも知れません。三つ目が大人しく一番マシな王子を選ぶ、です。」


「どれも食指が伸びないわぁ。」

「では、どうにかして逃亡するしかないですね。」

「今は監視が付いてるから無理よ。」

「帰国途中、国境を越える前に、それも夜間に抜け出すしかないでしょうね。」

「国境を越えるとダメなの?」

「軍や警察どころか、褒賞狙いの一般人にまで追われますよ。」

「確かに、この国の中なら追っ手も少ない。」


「ところで、何か魔法とか使えないのですか?」

「回復と浄化、結界だけよ。」

「自分に結界を張れば、取りあえず身の安全だけは確保できますね。」

「逃亡の役には全然立たないけどね。」

「一番楽なのは軽量を尻に敷いて、裏から操ることなんですけど。」

「だから窒息するんだって・・・」


「じゃあ仕方無いですね。リディア様の脱出劇、期待しています。」

「ありがとう。取りあえず、今夜は結界張って寝るわ。」

「お疲れ様でした。」

 こうして、電話は終わる。



「とても活きの良い聖女でしたね。」

「活魚並の鮮度でした。」

「彼女なら大丈夫。逃亡の成否を問わず、堂々と生きていけますわ。」

「でも、どうして王子はすぐに偽聖女に騙されるんでしょう。」

「そういうタイプの方が話題に上りやすいだけで、ほんの一部の失敗談が面白おかしく伝わっているだけよ。」


 それが毎月数件はコールされる不思議・・・


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