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第二十六王子

 さて、最近ちょっとだけ職場に変化が出てきている。

 そう、今は日の出の魔女が入院中でいないのだ。


 私はシフトが違うので影響は限定的と言えるが、出勤時に隣の班を見ると、超過勤務中の職員が明らかに少なく、皆に笑顔がある。

 多分、あそこは風通しが良くなって全体的に仕事が捗るようになったのだろう。

 日の出の魔女自身もよく問題を起こし、皆で尻ぬぐいをしてたようだから・・・


 だいたい、お局様って業務遂行能力は低いのよねえ。

 彼女の場合は類い希なる戦闘力が備わってるけど・・・



「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「こんばんは。私、異世界で王子をやってますエリックと申します。日本語ですいません。」

「エリック王子ですね。ご用件をお伺いします。」

「私、生まれて1年半になりますが、早くも人生を見失ってます。そうしたらいいのでしょうか。」


「ということは、王子は1才なのですね。」

「はい。今はよちよち歩きです。こっちの言葉はまだマスターしてませんので、日本語で話しています。多少、舌っ足らずなのはご容赦下さい。」

「大丈夫。よく聞き取れますよ。しかし、王族であれば王位を継げなくてもそこそこの生活は保障されていると思うのですが。」


「ところが私、第26王子なんです。兄が25人、姉が17人、お腹の中のまだ見ぬ弟妹が3人いるみたいです。」

「随分子だくさんの王様なんですね。」

「第一王子は27才で、私より年上の息子がいます。」

「まるで明治か大正ですね。」

「姉はどこかに嫁ぐのでしょうが、私なんか将来どうなってしまうのでしょう。」

「そうですね。どこかに小領地をもらうといっても、上に25人もいますからね。通常はどこかに婿入りか、騎士か文官といったところではないでしょうか。」

「別に王族でなくても良かったくらいの扱いですね。」


「でも、特筆すべき能力を示せば、大逆転も夢ではないのが王の血を引く者です。チートなどをお持ちではないのですか?」

「ここに来る際にガチャを引かせてもらい、酒豪のスキルをもらいました。」

「ハズレですね。」

「言わないで下さい。」

「しかし、王子様には前世での経験がありますし、何より精神は大人です。大きなアドバンテージを持っていると言えます。」

「それはそうですが、前世での私は平凡な会社員でした。私個人に高い潜在能力がある訳ではありません。」


「しかし今は、王族の血を持っています。」

「兄弟が40人以上いますけど。」

「でも王族って、だいたいボンクラでしょう?」

「小説の中ではそうですね。」

「早くから勉学に励み、さらに知識チートを活かせば、王は無理でも甥御さんの代には宰相とかになれるのではないですか?」


「頑張ればいけるかも知れませんね。」

「これはあなたの人生です。何が出来るかも重要ですが、何をしたいかもよく見極めて下さい。」

「何、をしたいか・・・」

「例えば、政治だけではなく、学術研究や実業の世界も検討するとか、将来のお相手を探すとか、やるべきことはこれから沢山あります。」

「確かにそうですね。」

「そして今は、言語習得が喫緊の課題です。」

「教科書無しで言語習得する、良い方法などありますでしょうか。」


「まずは、王子様のお世話係にジェスチャーで意思疎通するとともに、その方の言葉を差し当たりはオウム返しするのが良いでしょう。そして、言語の75%は主語S、目的語O、動詞V若しくはSVOの並びです。幼児でも習得できるのですから、肩の力を抜いて、コミュニケーションを楽しんで下さい。」


「ありがとうございます。何だか、希望が出てきました。」

「しかし、どうして26番目の王子なんてお選びになったのですか?」

「はい。神様に安全快適で責任の無い生活環境をお願いしたら、こうなってました。」

「なってますね。」

「まあ、26番目なら暗殺の対象にはならないでしょうね。」


「それで、生活でお困り事とかはありませんか?」

「ここは中世らしいですけど、まだ1才ですからねえ。実感するような不便さは感じません。ただ、身の回りの物が全てお古なのはガッカリですね。今来ているおべべもピンクです。」

「王様はどんな方ですか?」

「一度も合ったことありません。母もです。」

「随分ドライですね。」


「きっと名前も覚えられてませんよ。しかも、王子なのにエリックですよ?もうちょっとゴージャスな名前でもいいじゃないですか。」

「全世界のエリックさんに失礼だと思います。」

「いいえ。私は王族ですから、大抵の方に対しては失礼ではないと思います。」

「王子様、何だかボンクラ臭が漂ってまいりましたが。」

「あっ、そうでした。エリックの皆様方、大変失礼いたしました。」

「そうです。謙虚さは生き残るために必要ですよ。」

「分かりました。頑張ってみます。」


「では、名は平凡、事績はは非凡であることをお祈りしております。」

「成功したら改名しますよ。」

「そうですが。では、お元気で。」

「ありがとうございました。」

 こうして電話は終わった。



「大変愉快な立場でしたね。」

「生まれながらにしてその他大勢って感じの方でした。」

「でも、ああいった方はしぶとく成功をモノにするタイプです。」

「そうですね。大変理知的な方でしたね。」

「目上に可愛がられることが、ああいった場合は大切です。」

「うちの職場の最年長平社員には、目を付けられたくありません。」

「それは大丈夫よ。もうあの方の眼中にはミチコさんしか写らないはずよ。」

「第二ラウンドは年明けですね。」


「私もUSJ行ってみようかしら。」

「ミチコはウガンダでお土産買ったみたいでしたよ。」

「じゃあ、私はジャマイカのコーヒーにしようかしら。」


 個人的には、スロベニアで買うのが一番いいと思う・・・


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