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転生1分以内

 さて、私の無実を再確認して安心してたら次のお客様。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「た、とにかく助けてーっ!」

「お客様、どうなさったのですか!」

「ゴブリンがっ、ゴブリンが出た!」

「とにかく逃げて下さい。」

「何とかなりませ」

「喋ってる暇があるなら足を動かしなさいっ!」

「はいっ。でも、逃げ切れそうにありません。」

「では、武器を構えなさい。」

「持って無い。」

「石でも拾って投げることは。」


 こちらからは見えないので良く分からないが、何か始めたらしい。

 受話器の向こうではギャーギャー騒ぐ声とお客様の激しい息づかいが聞こえる。


「相手が自分より小柄であれば、蹴りをかましながら包囲を突破することも不可能ではありません。」

 お客様は気合いを入れるためか、掛け声を上げて駆けだしたみたいだ。

 そして、しばらくすると息切れっぽい声と何かが地面に落ちるような音がして、しばらく時間が過ぎた。


「はぁはぁっ・・・ ああ~助かった。もうダメかと思った・・・

「何とか逃げ切ったのですね。」

「はい。ありがとうございました。お陰様で助かりました。」

「それで、ご用件は今の戦闘のことですか。」

「そうです。実は私、たった今転生してきたところで、右も左も分からない状態なんです。」

「ゴブリンということは街中では無いのですね。」

「そうですね。いきなり街中に人が現れても大混乱でしょうけど。」

「確かにそういう事情かも知れませんね。」


「私の名は殿崎和磨。こっちでの名前はまだ決めてません。」

「そうですか。トノサキ様はB-FS2071-2D『転生した元リーマンの俺が、冒険者として、そして英雄として成り上がっていく物語』という世界ですね。」

「英雄どころかゴブリンに殺されかけましたけど。」

「誰もが最初はそんなものです。こういった世界に転生した方でも、9割近くは一年以内に命を落としています。」

「厳しい世界なんですね。」

「そうですね。特に勇者や冒険者を目指した方たちは、過酷な運命を辿ることになります。」

「この世界には魔王がいるって神様から聞きましたけど、それは私が倒さなくてはいけないのでしょうか。」

「まあ一応、トノサキ様が主人公ですからね。第一候補ではありますね。」


「こんな体たらくで大丈夫でしょうか。」

「大丈夫ですよ。トノサキ様には主人公特典が付いていて、ステータスが開けますね。」

「ステータスオープンッ!」

「いいえ、インフォメーション・ディスクロージャーと念じるのです。」

「ああ、すいません。つい・・・」


「あと、アイテムボックスとスキルツリーが標準装備されていますね。初期こそ身体頑健のみですが、大器晩成型なのだと思います。」

「身体強化ではないのですか。」

「それはカテゴリー1のスキルですね。今あるのは、健康で病気になりにくい基本スキルです。」

「なるほど、このスキルを集めて進化していくんですね。」


「他のスキル0のものとしては、言語習得、屋外活動、マナー、基礎知識、家事などがありますので、ここまでは満遍なく習得された方がいいでしょう。」

「そうなのですね。分かりました。」

「それ以降は、トノサキ様の行動によって進化ツリーが分岐します。多く使ったスキルがより早く伸びるタイプですね。」

「剣を使えば剣士、といった感じですね。」

「そのとおりです。」


「魔法はありますか?」

「それはカテゴリー1からですね。最初は魔法が使える方から教えてもらう形になるでしょう。」

「何だかやり甲斐が出てきました。」

「しかしまずは、身の安全を確保するところからです。その森を抜ければ、どの方角に行っても5km以内に必ず村がありますので、日が暮れる前にそこを目指して下さい。」

「分かりました。ところで、この回線を常時接続しておく訳にはいきませんか?」

「カスタマーセンターは常に人手不足ですので、そこはご容赦いただきたいと思います。」

「分かりました。でも、女神様がいつも助けてくれるパターンもありますよね。」

「その女神が自ら作って運営責任者となっている世界ではそうですね。でも、女神なんて大抵ク○ですよ。」


「じゃあ、あれはレアケースなんですね。」

「いいえ、幻想の世界です。」

「そうなんですか・・・残念です。」

「それと、今度からは戦闘中では無く、事前にご連絡下さい。戦闘中の私語は大変危険です。」

「分かりました。注意します。」

「それではトノサキ様。良い旅を。」

「ありがとうございました。」



「無事で何よりでした。」

「はい。転生後1日未満死亡率24%が現実ですからね。」

「トラックよりこちらを注意して欲しいくらいですものね。」

「でも、いくら何でもいきなり森の中はないですよ。」

「砂漠よりはマシですよ。」

「いたんですか?」

「私は入社3日目に当たりましたわ。でも、どうしようもありませんでしたわ。」

「大変ですね。」

「その方はまた違う世界に旅立ったみたいですけど。」

「懲りませんね。」


 やっぱり、ミチコより班長より神より、私の方がマシじゃん。


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