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まさかの異世界貴族

 さて、今年も恒例の1週間欠勤を敢行してやった。


 久しぶりに出勤して、班長から「ミチコがサボるのはお前の影響だ」と言われたが断じて違う。

 彼女のは自分で編み出したオリジナル技だ。

 そう考え、どこ吹く風で席に着くと、最初のコールが鳴る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「麿は異世界に転生して雅な生活を送っておる、藤原通平と申す。」

「フジワラ様ですね。貴族、なのですよね。」

「もちろんじゃ。従三位中納言でおじゃる。」


「それは素晴らしいですね。平安貴族ですか?」

「そうじゃ。今の目標は、百人一首に歌われるような傑作を作ることじゃ。」

「関白じゃないのですね。」

「さすがにそれは本家の棟梁がなるであろうからのう。」

「それで、ご用件は何でございましょう。」

「サッカーがしたい。」

「蹴鞠ではダメなのですか?」

「リフティングだけでは物足りぬ。フェイントとかドライブシュートとか決めたいのじゃ。」


「しかし、雅さには欠けますよね。」

「確かに、鞠に土が付くと汚れるの。」

「それに、お貴族様はあまりに体力不足です。」

「5分ハーフにしようかのう。」

「広い競技場が必要です。」

「御所ならできる思うぞよ。」

「まあ、仲間の同意が得られれば、不可能ではありませんね。」

「恐らく、世界初のサッカークラブになるでおじゃる。」

「そうですね。頑張って下さい。それで、どうしてそちらの世界に?」

「大黒様に貴族になりたいと申し出たら、ここじゃった。」

 ああ、彼にとってはね。


「何かチートはいただけなかったのですか?」

「加護はもろうたぞ。お陰で食うには困らぬ。」

「魔法は無くても陰陽道とかはあったのではないですか?」

「麿のような高貴で雅な者に、そういうのは必要ないの。ただこの世界、時々鬼とかの面妖な者が出る。」

「サッカーなんかしてる場合じゃ無いと思いますけど。」

「麿は痛いのと怖いのは御免じゃ。そういうのは下々の役目ぞ。」

「まあ、中納言様がご無事なら良かったです。」

「お気持ち、感謝するぞよ。それとじゃのう・・・」


「何かお悩みでも?」

「おなごがちと、麿の好みを外れておってのう。」

「ああ、ふくよかな方が多いのですね。」

「いや、あれはデブじゃ。不健康に膨れておる。」

「彼女たちにサッカーをさせてみては?」

「それは良いのう。女子サッカーの誕生じゃ。あの者共に、血反吐を吐かせるでおじゃる。」

「よろこんでいただけて何よりです。」


「しかし、いろいろ価値観を変えねばならんのう。」

「そこが一番の難題ですね。」

「帝から勅令を発してもらうかのう。」

「しかし、男性側の価値観を変えることも重要です。」

「何か良い方策があれば良いのじゃが。」

「フジワラ様好みの女性は宮中におられないのですか?」

「皆ブクブクじゃからのう。下級女官くらいしかおらぬが、それでは周りが反対するから、一緒にはなれぬ。」

「まずはそこからでは?フジワラ様が違う価値観を示せば、少しづつ変わっていくのではないでしょうか。」

「まずは一歩を踏み出せということでおじゃるな。」

「その通りです。」


「頑張ってみるぞよ。あと、肉が食いたい。」

「全く食べられない訳では無いのでは?」

「下級貴族はたまに食べておるが、まさか名門の麿が焼き肉を食す訳にはいかぬ。」

「たまに外へ視察に出て、そこでこっそり食べれば良いのでは?」

「そうか。他に食う物が無かったと言い訳すれば良いのじゃな。」

「鳥でも猪でも、存分に味わって下さい。」

「民の馬でも牛でも分捕れば・・・」

「それはお止め下さい。」

「分かったぞよ。牛は隣の屋敷のをこっそり分捕ることにする。」

「それって、車泥棒に等しい悪行ですよ。」

「大丈夫。彼奴の家は正六位下じゃ。バレても問題無い。」


「結構、好き勝手やってるんですね。」

「サーロインのためじゃ。多少の無理はするぞよ。」

「どこかでこっそり育てればいいじゃないですか。」

「今すぐが良いのじゃ。」

「仔牛の方が美味しいですよ。」

「そうじゃ。そうじゃった。では、仔牛をブクブク太らせるぞよ。」

「そうして下さい。他にお困り事はございませんか。」

「うむ。厠が臭うとか冬が寒すぎるとかいろいろあるが、まあ、このくらいかのう。」

「分かりました。では、中納言様のいとおかしなゴールを期待しております。」

「うむ。ありがとうじゃ。」

 こうして電話は終わった。



「平安の世は住みやすいのでしょうか。」

「都の治安さえ維持できていれば、貴族にとっては住みやすいと思います。」

「そうでした。少しづつ世が乱れていくのですよね。」

「まあ、サッカーしたいと言える状況なら、問題無いと思いますよ。」

「箸より重いものを持たない人たちを動かすのは、相当難儀すると思います。」

「それを含めて、人生の楽しみですよ。」


 秋の夜は静かだ。だから、こうして副班長と落ち着いた気分で会話できる。

 ほら、私が悪い訳じゃ無いでしょ?


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