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開戦前夜

 さて、ハロウィンも近付いたある日・・・


「あ~ムカつく。やってらんねえ!」

「何よ、出勤してきて最初の言葉がそれ?」

「アイツだよアイツ。日の出の魔女だよ。」

「まさかアンタ、あれに絡んだ訳じゃ無いよね。」

「あーしが絡んだんじゃねえよ。アイツからちょっかい出して来たんだよ。」

「それでもあれは止めときなさい。この職場最強の戦闘力よ。いくらアンタでも勝てる相手じゃないわよ。」


「先輩。天使には引き下がれねえことだってあるんすよ。」

「ミチコは特に多そうね。」

「何がいいかなあ。やっぱり金属バット?」

「止めときなさいよ。」

 ここでコールが鳴ってくれる。

 誰よりも素早い動きでこれを取る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私、タイムリープ転生させてもらった浜本敬三郎と言います。23才です。」

「ハマモト様ですね。ご用件をお伺いします。」

「あの、ミサイルとかビーム兵器とかもらえませんか?」

「それは転生前に申し出ていただけると有り難かったのですが。」

「神様に、その世界を混乱させるからダメだと言われました。」

 いや、今まで散々やらかして来たはずなのに・・・なぜ?


「お客様は中世に赴かれたのでしょうか。」

「いいえ。太平洋戦争真っ只中です。」

「ああ、じゃあ無理です。だいたいミサイルなんて何発も持ち運べませんよね。」

「光線銃ならいけると思ったんですけど。」

「身を守るなら拳銃で充分じゃないですか。」

「いえ、敵の戦闘機を落としたいんです。」

「随分無茶なことを考えますね。」

「ええ、これこそが男のロマンですから。」

 ホント、男のロマンろくでもない・・・


「それで、ハマモト様は今どこに?」

「大和に乗ってます。」

「ああ、宇宙で無い方の。」

「オリジナルです。」

「結末はご存じですよね。」

「さっき呉を出港し、沖縄に向かっているところです。」

「今すぐ下船して下さい。」

「無理ですよ。もう海の上なんですから。」


「今なら泳いで四国か九州にたどり着けるでしょう?」

「無茶言いますね。」

「光線銃で戦闘機を落とそうと考えている方に言われたくありません。」

「いや、バッタバッタと落として大活躍。」

「男のロマンですか?」

「もちろんです。このために他人になりすまし、乗船に成功したんですから。」

「何をやってるんですか。それに今、乗員の中でロマンに浸ってる人なんて他にいませんよ。」

「何かみんなハイなんですよ。」

「そりゃそうでしょう。」


「でも凄いですよね。この巨体が実際に動いてるんですよ。興奮します。」

「大和乗艦だけで満足しないのですか?」

「ここで下りるは大和魂に反します。」

「別に、誤って転落したことにすれば、非国民なんて言われませんよ。」

「ロマン度ゼロです。」

「一番現実的な提案だと思いますけど。」

「いいえ、これが男の花道だと信じています。」

「遺書は書きましたか?」

「書く相手がいません。」

「そうでしたね。では、ご武運をお祈りしております。」

「ありがとう。それでは。」

 こうして、彼との通信は途絶えた・・・


「随分向こう見ずな方でしたね。」

「もう一度人生があるとも限らないのに、よくやると思います。」

「さすがに男のロマンは分かりませんわ。」


「それより副班長。ミチコはどうなりましたか?」

「どっか行ったわね。」

「バット取りに行ったんでしょうか?」

「私、今から休暇をいただきますわ。」

「待って下さい。私の申請も受理して下さい。」

「あなたには、この結末を見届ける義務があるわ。」

「私にそんなロマンを期待しないで下さい。」

「あら、天使の花道よ。」

「それ、死んでるじゃないですか・・・」

「じゃあ、一日だけよ。」


 次の日、エラリー先輩と遊びに行った。


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