現代風中世ファンタジーの世界へようこそ
「あー!やっぱあーしはチャーシュー麺ニンニク抜きだわ。」
「いい加減零号機から下りて仕事しなさい。」
「ちょっちブラック買って来るわ。」
ホントこの子、制御不能だわ・・・
ここでコール。
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「私、中世世界で商人をやってますモーリス・バルゼッティと申します。」
「モーリス様ですね。では、ご用件をお伺いします。」
「私、異世界ネットカタログのチートで商売をしている者ですが、お客様のニーズを把握するのが難しくて、ご相談に上がったところです。」
ネットスーパーいやがった・・・
「それは、顧客にモニターしたり、付き合いのある同業者にリサーチした方がよろしいのではないですか?」
「本来はそうすべきなんですけど、私の取り扱う商品が他に類を見ない物であることと、この世界が一風変わっていることが原因で、上手く売れ筋商品を揃えることが出来ないんです。」
「もしかして、楕円形の盾とか鮭を咥えた熊が調度品として好まれる世界なんですか?」
「いやまあ、あれが売れないのは世界共通でしょうが・・・そうではなく、変な所が現代チックなんです。」
「それは視聴者層が21世紀人ですからね。彼らの価値観が世界観を構築する際の優先事項となっております。」
「でも、それによっていろいろ矛盾が生じてるのも事実です。」
「そうですね。そこはお客様に受容していただくほかない部分ですが、転生者も21世紀人が多いので、そういった苦情は比較的少ないのですよ。」
「私が現代の品を扱うからでしょうか。」
「そうですね。しかし、どんな世界でも普遍的に売れる物はあります。美容やファッション、甘味を始めとする食品や酒類です。」
「はい。しかし、どれも今一つですね。」
「原因は分析されていますか?」
「まず、化粧品や工業製品は使い方が分からないようです。」
「説明書が日本語だからでしょう。」
「しかし、お客様一人一人に説明する時間はありませんし、説明会を各都市で開くなんて、個人商店にとっては現実的じゃないんです。」
「まあ、使い方が分かりやすい物しか扱えませんね。しかし、そちらには電気は無いでしょうし、電化製品は電池式の物以外、売れませんからね。」
「いいえ。それが、電気はあるんです。ですから夜会なんかでも煌々と明かりが付いてます。」
「ああ、それは夜会シーン撮影の都合ですね。それなら電化製品も大丈夫ですか。」
「いいえ。コンセントがありませんし、電圧が安定してませんので精密機器は無理ですね。」
「しかし、思ったより文明が進んだ世界でしたね。」
「ですから一夫一婦制です。」
「王族もですか?」
「はい。どうやって血統を維持するんだろうと思いますが、身分を問わずそうです。」
「まあ、今は色んな事に配慮しないといけませんからね。」
「お陰で、平民にも優しい貴族が多いのは助かりますけどね。」
「じゃあ、切り捨て御免なんてことは心配しなくて良いですね。」
「撮影隊のいない所ではあるやに聞きますけどね。」
「では、常に撮影隊を同行させることをお薦めします。」
「はい。気を付けます。」
「他にもいろいろありそうですね。」
「平民でも差別用語は禁止ですし、字が読めないなんていいながら、かなり高度な会話が可能です。最新機器を驚きながらも直ぐに受け入れますしね。」
「それは、魔法の存在が大きいのではないですか。」
「そうかも知れませんね。」
「それなら、魔道具と競合、あるいはコスト競争に勝てなさそうな物も仕入れを避けるべきですね。」
「そうですね。扇風機とかドライヤーなんて流行りませんね。」
「他には何かございますか?」
「何故かみんな風呂好きです。とても衛生的ですし、環境にも優しい人が多いです。それに、喫煙者がほとんどいません。」
「では、おいてめえはいないのですね。」
「それはいます。」
「まあ、21世紀の人が不快に感じる描写は極力排除されますからね。」
「そういう理由で現在ナイズされるのですか?」
「はい。顧客のニーズによりますね。もちろん、21世紀以降の視聴者に対応した世界もございます。」
「じゃあ、私たちの生活を23世紀の人が見ることは無いのですね。」
「特にヒットしたものについては円盤が売られていると思います。まあ、作品の主旨に鑑み、当時そのままの表現でお送りしていますのテロップは表示されるでしょうけど。」
「23世紀でも円盤って作られてるんですか。」
「はい。一台で8mmフィルムからブルーレイ、HDD記憶から自動収拾機能まで、とにかくあらゆる物を記憶、再生できる機器がありますので。」
「では、私のファンも、もしかしたらいるかも知れませんね。」
「そうですね。320億人の中には、ご存じの方もおられると思います。」
「では、商売頑張らないと。」
「ところで、モーリス様の世界に特殊スチール製のゴーレムを遠隔操作する方はいらっしゃらないでしょうか。」
「いえ、知りませんね。」
「そうですか。もしいたら、その方が充電式単三電池をご所望ですので、相談に乗ってあげて下さい。」
「分かりました。覚えておきます。」
「それでは、モーリス様のご成功を、お祈りしております。」
「失礼致します。」
こうして電話は終わった。
「やはり、違和感を抱えた方は多いですね。」
「これは永遠の課題と行っていいのではないでしょうか。」
「そうねえ。でも、多少は大目に見て欲しいですね。」
「はい。どうしても不特定多数に許容してもらわないといけないですからね。」
「尖った世界はその分、かなり厳しいですからね。」
「そのようですね。」




