不公平じゃないですか?
さて、今日もヤツは欠勤だ。また、私の実家の裏手の峠をかっ飛ばしてるんだろうか。
あれ、夜中に迷惑だから、止めて欲しいんだが。
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「アタシ、コニー・レイブル。男爵令嬢よ。」
「コニー様ですね。ご用件をお伺いします。」
「アタシ、ヒロイン役やってんだけど、ちょっと文句言いたくて電話したのよ。」
「お客様は恋愛モノの世界にお住まいなのですね。」
「そうよ。今は貴族学校に入学して2週間よ。」
「では、攻略対象と最初のイベントをこなした後くらいですね。」
「そうね。イベント自体は予定通りクリアしたわ。」
「それでは、順調にスタートした訳ですね。」
「まあ、アタシくらいになればね。」
そりゃあ、最初から恋愛世界だと知った上でそのルックスなら、誰でもある程度は上手くやれるだろう。
「でもさあ、ヒロインと悪役令嬢って不公平じゃない?」
「それはそうでしょう。」
「そうじゃなくて。悪役令嬢は自分が悪役かヒロインざまぁかを知ってるのに、ヒロインはどっちか知らずにプレイさせられるでしょう? それって不公平じゃない?」
「そんなことはありません。コニー様は転生時に神から啓示を受けませんでしたか?」
「恋愛世界のヒロインってお願いしたら、こうなってただけよ。」
「ヒロインなら、悪役令嬢をざまぁするのでは?」
「そう思わせといて、実はこっちがざまぁされるって展開かも知れないじゃん。」
「希望を聞かれたのなら、そのような詐欺みたいな展開にはならないはずです。」
いや、神はよく間違う。
あれのほとんどは転送先をチェックしない、うっかりさんの仕業だ。
「でも、悪役令嬢はストーリーを知った上で回避してくるよね。」
「悪役令嬢が転生者であった場合はそうでしょうね。破滅願望でも無い限り。」
「じゃあ、そうで無い場合はどうなの。」
「NPCは設定通りの動きをします。ですので、簡単に見分けは付きます。」
「まだ、王子の婚約者と絡んだことないから分かんないけど、それでチェックすればいいのね。」
「向こうも転生者であれば、ヒロインの行動を分析するはずですよ。」
「でもその場合、アタシは王子と一緒になれないのよねえ。」
「コニー様。あれって青春恋愛モノってカテゴライズされてますけど、実際は不倫モノですからね。ヒロインなんて素敵な名前で配役されてますけど、間女ですからね。」
「そういう言い方しないでよ。悪女から王子様を救う天使でしょ?」
「天使なんて、そんなにいいものじゃないですよ。」
「アタシは見た目天使よ。超カワイイし、髪もピンクとブロンドのグラデーションだし。」
「それでも、天使は良くないです。妖精がお薦めです。」
「分かったわよ。」
私って、何て誠実なんだろうと思う。
「それでも、悪役令嬢はフェアじゃ無いと思うわ。身分高いし、最初から王子様と婚約してるし。」
「人間、皆平等ではありませんよ。生まれも立場も能力も異なります。その時代においては、男爵令嬢であっても、社会の中ではかなり恵まれていますし、コニー様の見た目だけで人生イージーモードです。」
「それはそうだけど、悪役令嬢と比べたら不利じゃ無い?」
「それを覆す物語です。勝ち確なら恋なんてする必要ありません。金持ちとお見合いすればいいだけです。」
「お姉さん、超現実主義ね。」
「どうせ、男性がほぼイケメンな世界なんですから、わざわざ難しいところに挑戦しなくても、そこそこ良い感じの殿方は沢山いるじゃありませんか。どうせ、30年経てば王子もモブも大差無い見た目になります。」
「たしかに、この世界の中年をみたらそうだけど。」
「昔アイドルだった人が、60を過ぎてモブ以下の見た目になる例は多いでしょう?」
「確かに、アレでも昔は凄いイケメンだったんだよねえ。」
「そちらの世界でも、イケオジなんてほとんどいないでしょ?」
「まあ、そうよね。」
「男女問わず、それが分かった途端、落ち着くのです。」
「いやいや、アタシまだ落ち着いてらんないんだけど。」
「人生二度目なんですから、もう少し悟った方がいいですよ。」
「これ、恋愛世界なんですけど・・・」
「平等でないことがご不満なら、ストーリーに従わない選択もあるんですが。」
「バッドエンドにならない?」
「何がバッドかは、コニー様が決めることです。」
「ほら、魔王が出てくるとか。」
「その場合はヒロインが覚醒すればいいだけでは?」
「アタシにそんな変身能力ないわよ。」
「なら大丈夫です。魔王なんかいない設定です。そういったことは必ず兆候がありますので、注意していれば誰にだって簡単に分かります。」
「危ないのヤなんだけど・・・」
「王子を狙って安全な恋なんて無いですよ。」
「分かったわよ。自然体でやるわよ・・・」
「そうですか。では、コニー様の恋の成就を、お祈りしております。」
「・・・・」
こうして電話は終わった。
今回はあまり上手く行かなかった。
「ご納得いただけましたか?」
「不公平かどうかについては、上手く説明できましたけど、他は納得してなかったみたいです。」
「でも、何を選ぶかはお客様次第ですからね。」
「そう言っていただくと、少し気が楽になります。」
「そういうことが考えられるようになっただけ、ナターシャさんも成長しましたね。」
「いいえ。決してそんなことは無いはずです。」
危ない危ない。最近、副班長の慰留工作が巧妙になってきてるからなあ。
気を付けないと・・・




