表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/250

生態系の頂点

 私もそろそろ2年半経つ。


 まだまだ新人に毛が生えた程度だけど、それなりに後輩もいて、それなりの存在感も出てきた。

 この職場は比較的職員の入れ替わりが多いが、それでも平均勤続年数は7~8年といったところだろう。

 日の出の魔女のような百年選手もいるが、私でも少しはヒエラルキーが上がって来た感じはする。

 まあ、後輩がミチコなので、忙しさは相変わらずだけど・・・



「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「我はガロン。ファンタジー世界で最強のドラゴンをやっておる者だ。」

「ガロン様ですね。それにしても、ドラゴンって凄いものをチョイスしましたね。」


「皆、人として良い思いをしたくて次の生を得るのであろうが、本当に何者にも脅かされずに安寧に長生きしようと思ったら、最強種になるべきなのだ。」

「おっしゃる通りですね。でも、知らない生き物になるのは勇気がいるのですよ。」

「まあそうだな。それで、散々偉そうな事を言った後で恐縮ではあるが、少々困ったことになっておってな。何か良い知恵があればと思うて話しかけてみたのじゃ。」


「承知しました。ご用件をお伺いします。」

「うむ。我は洞窟の中で暮らしておるのだが、出口が狭くて出られんのじゃ。どうしたら良い。」

「破壊できないのですか?」

「岩がとても厚くてな。押してもビクともせぬ。」

「魔術とかドラゴンブレスは使えないのですか?」

「何分狭くてな。そんなものを使ったら我が大怪我してしまう。」


「では、少しづつ掘り進めるしかありませんね。」

「身動きするのも大変でな。それも難しいのだ。」

「どうして、そんな所にいるのですか?」

「生まれた時からここだ。多分、ここで卵から孵ったのであろう。最初は小さかったから出口から出られたが丁度寒い時期でな。戻って寝て起きたら出られんようになっておった。」


「大人のドラゴンが出られないのに、卵はどうしてそこにあったのでしょう。」

「人間が運び込んだか、母は小さいのかは知らぬ。とにかく生まれてこの方、他のドラゴンに会ったことは無い。」


「ところで、お歳は?」

「だいたい200才だ。」

「その間、飲まず食わずですか?」

「いや、人間がお供え物をしてくれてな。それで何とかなっておる。」

「発見されているんですね。」

「ああ、今では著名な観光地になっておるらしく、参拝客は多いぞ。国王も即位したら挨拶に来るぞ。糞も清掃してくれるし、何とかなっておる。」


「人身御供とかされないのですか?」

「そんな物はいらぬ。我も元は人ぞ。人なんて食べたくないぞ。」

「それはそうですね。」

「我はリンゴが一番好きじゃぞ。まあ、一口で200個ほど食うが。」

 さすがの巨大さである。


「しかし、至れり尽くせりならいいじゃないですか。」

「いや、最強種に生まれたからには、一度くらい羽ばたいてみたいし、ドラゴンブレスも放ってみたいではないか。」

「まあ、そうですね。でも、一度も使ったこと無いということは、そういう機能をお持ちで無いかも知れませんよ。」

「いや、その気になれば腹から湧き上がって来るものはあるぞ。多分、使えると思う。」

「身体を鍛えてないから飛べないかもしれませんよ。」

「鍛えればいいのだろう?」

「みんな怖がって近付いてくれなくなりますよ?」

「自分で狩ればいいのではないか?」

「信仰の対象から恐怖のドラゴンになってしまいます。」

「我はそんな乱暴はせぬぞ。」


「でも、注意しないといけない点がございます。」

「何だ?」

「ガロン様が洞窟を掘り始めた時点で、人間は態度を変える可能性がございます。」

「恐れ始めるということか。」

「はい。人間と直接、言葉を交わすことはできますか?」

「いや、できぬ。身振り手振りだ。」

「では、誤解されてしまいますね。穴掘りを邪魔されたり、毒を盛られたり、軍を派遣されたりといった行動を取るかも知れません。身動きが取れない、ブレスが吐けない、食料や水も貰えない状態では、さすがに勝ち目は無いと思います。」


「それもそうだな。ならば、どうすれば良い。」

「狭くて不便だということを何とか伝えて、人間に穴を広げて貰うのが良いでしょう。」

「なるほど。それなら体力に不安のある我でも何とかなるな。」

「岩の硬さも推測できますし、ある程度広がれば、少しづつ自分で掘り進めることも出来るようになります。」

「何年かかるか分からんけどな。」

「あくまで少しづつです。人間に警戒されないように。」

「分かった。何とか伝えてみる。」

「でも、今の生活が一番良いと思いますけどね。食っちゃ寝なんでしょう?」

「最強種なのにな。」


「最初に言っておられたではないですか。何者にも脅かされずにのんびり暮らせてます。」

「全く自由が無いがな。」

「まあ、観光資源ですね。」

「全く、最強種とは言え、ままならぬものじゃ。」

「では、何とか外に出られるよう、お祈りしております。」

「うむ。祈られるのは慣れておるからな。感謝する。」

 こうして通話は終わった。



「出られないなんて、ウケる~。」

「アンタが行って、出してあげれば?」

「え~ダリ~。」

「アンタと入れ替わったら良かったわね。」

「耐えられんねえっすよ。暴れられないなんて。」

「あなたなら暴れると思うわ。」

「まあ、ジャックナイフの二つ名は伊達じゃ無いからね。」

「ああ、あったわね。そんなの・・・」


 理性的な最強種なら人にとっては良き隣人だけど、暴れ回る天使ってのは邪神と同じようなもんだからなあ。

 こういうのが後輩にいると、私のヒエラルキーは上がんないよね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ