言い寄られてて、困ってます
今日は途中で牛乳を買ってきた。
そのまま飲んでもいいのだが、それではコーヒーが飲めないので、ミルクで割って飲む。
いつもとちょっと違う風味で、これはこれでいいと思う。
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「私は、異世界で王子をやってます、ジャンパウロ・ゴーギャンと言います。」
「ジャンパウロ様ですね。ご用件をお伺いします。」
「長いですのでジャンで結構ですよ。」
「ありがとうございます。」
「実は、モテすぎて困ってるんです。婚約者はいるのですが、それでもご令嬢方の猛進が止まりません。どうしたらいいでしょうか。」
「王権を振りかざしてどんどん不敬罪に問えば、止まると思います。」
「しかし、私に好意を持ってくれた令嬢たちに、できればそのような手荒な真似はしたくないです。王になった時にも都合が悪いですし。」
「そうですね。しかし、高い身分と見た目補正の効果は大きいものです。特に恋愛モノの世界ではそうなるように調整されていますからね。」
「王子だからというだけでは無いんですね。」
「まさに、陽キャリア充の極みです。」
「私は陽キャじゃありませんよ。この世界では庶民気質といいます。」
「でも、散々イキッてるじゃありませんか。」
「でも断じて陽キャではありません。それで、私の世界は恋愛モノの世界なんでしょうか?」
「調べてみますか?」
「お願いします。」
「それでは、前世のお名前をお願いします。」
「片桐周正といいます。」
「カタギリ様ですね。B-JW0081-2D『テンプレのみでお届けする、ドキドキラブのラビリンス』という世界ですね。」
「思った以上にお花畑の世界でした。」
「残念でしたね。」
「それで、のようなストーリーなのですか。」
「恐らく、ジャン殿下の思い描いた通りの世界だと思います。悪役令嬢とヒロインがいて、最後は王子様と結ばれる世界です。」
「私は浮気なんてするつもりありませんけど。」
「絶対に婚約者が悪役ですよ。」
「まあ確かに、見た目は気が強そうですけど、信じられないくらい綺麗だし、私に対してはとても優しくて純粋な人です。」
「それをつい見落とすのが、王子様の役割です。」
「残念王子がテンプレなんですか?」
「はい。殿下の役割は、浮気性でちょっとおつむが残念な腰軽王子です。」
「ちょっと酷すぎませんか?それに彼女、公爵令嬢ですよ。彼女の実家の後ろ盾が無いと、王になっても実権なんてないじゃないですか。」
「そんなことを気にしていたら下級貴族の娘と恋愛なんてできません。」
「ヒロインは下級貴族家出身なんですね。」
「お心当たりでも?」
「いや、山のようにいますから全然分かりません。その中にいるとは思いますが。」
「きっとお花畑のような方です。あらゆる意味で。」
「盛りの付いた貴族子女なんて、大体花が咲いているもんですよ。」
「その中で特にとっ散らかっている小柄な女性で間違いありません。」
「舌っ足らずなんでしょうね。」
「パステルカラーがとても厚かましい感じでしょうね。」
「まあ、敢えて探すつもりはありませんけど。」
「惹かれないのですか?」
「私は、今の婚約者が最高だと思っています。もちろん、素晴らしいご令嬢は他にもいるでしょうけど、同じく素晴らしい男性もいますから。」
「そうですね。その世界には攻略対象が他にもいますからね。」
「私は、そんな馬鹿をせず、立派な王になることが目標ですから、イキッたりドヤることはあるかも知れませんけど、浮気はしませんからね。」
「ラビリンスにはならなそうですね。」
「廊下を歩くだけでラビリンスになってますよ。」
「婚約者を見失わなければ大丈夫ですよ。」
「特効薬って無いのでしょうか。」
「その国は側妃を認めているのでしょうか。」
「勿論です。」
「では結婚したからといって、周囲が落ち着くことは難しいですね。しかし、正妃とそれ以外は明確な差がありますので、結婚は早めにしておいた方がいいでしょう。」
「分かりました。15才になり次第、すぐに結婚します。」
「失礼ですが、今、おいくつで?」
「7才です。」
まだ物語開始前だ。
「まあ、先は長いですので、お気持ちを強く持って下さい。」
「はい。頑張ります。」
こうして電話は終わった。
「大丈夫でしょうか。」
「大丈夫ではないかも知れませんね。あまりにも先が長すぎます。」
「そうですよね。ヒロインもこれから覚醒するかも知れませんし。」
「まあ、根が真面目で中身が大人なら、何とかなるかも知れませんね。」
「そう祈ってます。」
「それにしても、ミルクなんてどうしたの?」
「少し、ホワイトニングしようと思いまして。中身は大人ですので。」
「二十歳なのよね。それにしても、先はまだまだ長いわね。」
うん?どっちが?




