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クッ・・・

 さて、変化の無い毎日をただ漫然と過ごしていたら、いつの間にか8月になっていた。


 天界の住人にとって、カレンダーにそれほどの意味は無いが、私はこの5年の刑期をこなすため、たまに思い出すことにしている。

 ようやく折り返しが見えてきた。そして、次の就職先も考えておかないといけない。

 なんて、ズボラを極めた私がやっと思考をそちらに傾けようとした途端、コールが鳴る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私は、さる王国で騎士をしている、カレン・シュタールという者だ。」

「カレン様ですね。ご用件をお伺いします。」

「私は護衛騎士団の隊長をしている者だが、今、我が国は敵国に攻められ、まさに滅亡寸前なのだ。どうすればいい。」

「できれば、戦争前にご相談いただければ、良いアドバイスができたと思いますが。」

「うむ。それについては私の慢心が招いたことで、申し開きできぬ。しかし、大臣と将軍が敵国に寝返らなければ、かような事態には陥ってはいなかったはずだ。」


「カレン様は今、どういう状況なのでしょうか。」

「うむ。今は都を封鎖して立て籠もっているところだ。敵も数は多いが、さすがにこの規模の街を取り囲むのは容易でなくてな。小康状態と言って良い。」


「しかし、女性騎士とはまた、珍しいですね。」

「確かに、女性騎士を登用している国は少ない。しかし、王族には女性も多いから、私のような存在は何かと重宝されるのだ。」

「なるほど。しかも、事ここに至っても王家に忠誠を誓って踏みとどまっている訳ですものね。立派だと思います。」

「しかし、このままでは食料が尽きて敗北が必至の状況なのだ。」

「もう、残すは都だけなのですか?」

「国内の多くは敵の手に落ちたことだろう。要害にあるいくつかの砦はまだ、抵抗しているとは思うが。」


「何とか脱出はできないのですか?」

「私だけなら可能だが、王女殿下らを伴って脱出するのは無理であろうな。」

「カレン様にはチートなどはないのですか?」

「チートはない。神と契約する時にギフトはもらったが、余計な能力しかない。」

「しかし、余計とはいっても一応は神の力です。使いようによっては役に立つと思いますよ。」

「そうなのか? 魔法などない世界なので、強力なものは必要無いと渡されなかったのだが。」


「それで、どのような技があるのですか?」

「ああ、一つは剣を振ったときのアクション強化だ。効果音とか風が他の者より大きめに出るものだ。」

「強そうですね。」

「あくまで強そうに見えるだけで、本当に強くなる訳では無い。」


「他には?」

「ああ、見た目はとても麗しくしてもらったぞ。髪はもちろんブロンドだ。まあ、できればストレートが良かったのだが。」

「カールしているのですか?」

「必要以上に癖毛で毎朝困っている。」

「アニメではよくある髪型では?」

「実際に見ると引くぞ。後は使ったことは無いがくっころというスキルももらった。どういうものかは知らんが。」

「今、一世一代のチャンスですよ。」


「どういう時に使うのかさっぱりだ。」

「絶体絶命の時に使うんです。盛り上がりますし、生存率が飛躍的に高まります。」

「しかし、護衛対象が助からないのでは意味が無い。」

「ああ、このスキルは発動者にしか効果がありません。」

「残念だな。それでは私が使うことはあるまい。」

 まあ、本当に使う権利を持っていそうな人ほど使わないスキルだ。


「しかし、困りましたね。」

「ああ、ほとほと困っている。多勢に無勢だからな。このくっころを常時発動しながら敵を突破できないのか?」

「そういうスキルではありません。むしろ勝負あった時のものですね。」

「そんな使い勝手の悪いスキルなのか。ならば、正攻法しかないな。」

「敵の物資はまだ潤沢なのですか?」

「ああ、我が国の物資をいくらでも徴発可能だからな。こちらが圧倒的に不利だ。」


「もう、降伏なされた方がよいのではありませんか?」

「それを決めるのは私では無い。」

「それはそうですね。」

「まあ、私はこの国に忠誠を誓った騎士だ。何があってもこの国と命運を共にする所存だ。最後まで誇りを胸に、潔く戦うさ。」

「そして、矢尽き刀折れた時には・・・」

「くっ、殺せ・・・」

「できましたね。」

「こ、これが・・・私の新たなスキル・・・」


「どうかなさいましたか?」

「何か、私の身体が光に包まれている。剣も刀身が青白く輝いているぞ。」

「しかし、これまでのパターンを考えると、ただ光っているだけでは?」

「いや、それでも神懸かりの演出ができれば、敵を欺いて逃げられるかも知れぬ。」

「大丈夫でしょうか。」

「いや、何とかなるかも知れぬ。かたじけないが、時間も無いのでこれで失礼する。」

 こうして電話は終わった。



「覚醒、したのでしょうか。」

「まあ、間違い無くまがい物スキルだと思いますが、常人を超えていることには変わりありません。」

「何とか、無事に逃げおおせて欲しいと思います。」

「そうですわね。」

「でも、もう少し役に立つスキルをあげればいいのにと思ってしまいました。」


 彼女の無事をひたすら祈ろう。

 いや、次の就職先も真面目に考えよう・・・



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