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絶縁したら・・・

 その後、自動販売機でいつものブラックコーヒーを買い、机の引き出しからお菓子を出して休憩を取る。

 ブラックを嗜む幼女天使なんて、絵にならないけど・・・


 そうして無口にモグモグしていると、次のコールが鳴る。


「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」

「私、異世界で高校生をやってます。桂木京介といいます。」

「カツラギ様ですね。ご用件をお伺いします。」


「私、陰キャがイメチェンしたら急にモテモテになる世界で主役をやっています。陰キャ時代の幼馴染みとか後輩なんかと縁を切ってオシャレに変身したんですけど、モテないんです。何か間違ったんでしょうか。」


「つまり、絶縁ざまぁの世界なんですね。」

「ええ、私を馬鹿にする人たちが手のひらクル~をするけど、『もう遅い』ってヤツです。」

「お客様の前世のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」

「はい。中村寛二です。」

「C-CC6124-2D、『イメチェンで成り上がれ、若き妄想が滾る世界』ですね。」

「あれ?妄想なんですか?」

「でも、イケメンにはなれたんですよね。」

「はい。髪型を変えてコンタクトにして、服もシマ○ラで買い込みました。」

「ここで普通は絶縁したはずの女性がすり寄って来る展開ですが、残念ながらここはお客様がそういう妄想を滾らせる世界です。」


「じゃあ、ざまぁは無いのですか?」

「まあ、あるかも知れない、といった程度の可能性はあると思います。」

「無いんですか。かなりガッカリです。」

「絶縁したわけですからね。カツラギ様だって、すり寄ってこられると困るでしょう?」

「まあ、ぶっちゃけウザいですね。でも、彼女たちとは本当に何も無いんでしょうか?」

「それは分かりません。その世界はカツラギ様の妄想がストーリーには影響しない仕様になっています。妄想はモチベーションを高める燃料の役割を果たしているとお考え下さい。」


「何の役にも立ってませんね。」

「でも、陽キャになって成り上がるのが本筋ではあります。」

「全くモテませんけど。」

「見た目が本当に良くなったのであれば、モテるようにはなると思いますよ。結局のところ、男性は見た目が10割ですから。」

「随分身も蓋もないことをおっしゃいますね。」

「現実は歪曲して見てはいけませんよ。」

「それなら私は既にモテているはずです。何せ、見た目はモデル以上になってますから。」


「イメチェンしてどのくらい経ちましたか。」

「二週間ほどです。」

「ならば、そろそろではないでしょうか。周囲はまだ様子見といったところでしょう。」

「すぐに女子に囲まれると思ってました。」

「それはありません。昨日まで神はボサボサで清潔感ゼロ、無口で背筋が曲がっていた人がいきなり変わったら、まずは警戒されますよ。」

「そんなもんでしょうか。」

「あなたから女性に話しかけたりしましたか?」

「それができるならイメチェン前でもモテてたと思いますよ。」


「では、あなたから行動を起こした方が早いですよ。」

「正直、勇気がないんですよ。」

「女子だって同じですよ。そこは妄想パワーで押し切らないとダメです。陽キャはそんなことで躊躇なんかしません。」

「まだまだ陽キャへの道は遠いんですね。」

「はい。周囲があなたを陽キャ認定したら、それを好む女子が寄って来ます。」


「女子全員にモテる訳ではないのですか?」

「きっとそこはカツラギ様の妄想力次第の部分もあるのでしょうが、普通、物静かな女性は自分から近寄っては来ないと思いますよ。」

「確かにそうですね。そして、私がモテ始めたらざまぁが起きるかも知れませんね。」

「そうです。その意気です。ただし、ざまぁ後の報復には充分注意してください。」


「報復なんてされるんでしょうか?」

「油断は禁物です。人の恨みは怖いですよ。悪口でイメージダウンを狙ってきたり、こじれてストーカーと化したり。」

「元々、ウザ絡みしてくるタイプの子たちではありましたけど。」

「小説のような展開にはならないと思って下さい。ただし、ざまぁをやってしまうと小説に近付くとお考え下さい。」


「ざまぁは小説でしか起きないことだから?」

「リアルな世界でざまぁはほぼ起きません。発動条件が複雑過ぎますから。しかし、ざまぁが起きた後の人の行動は、僅か数パターンしかありません。泣き寝入りして終わってくれればいいですが、それはあいての性格次第ですから。」

「確かにそうですね。ロード・オブ・まざぁをシミュレーションすると同時に、その後も妄想しないといけませんね。」

「捗りますね。」


「でも、妄想ばかりで、実際はモテていないような気がします。」

「真の陽キャは立ち止まりません。考えません。よって悩みませんし疑問も持ちません。とにかく信じるのです。」

「分かりました。私が信じるのは自分の妄想だけにします。」

「その意気ですよ。」

「ありがとうございます。頑張ります。」

 こうして元気に通話は終わった。



「ああ、今日も良い仕事したわね。」

「センパ~イ、随分陽キャをdiaってたけど、マジ?」

「あら、来てたのね。」

「変な訓練に出てダリーんだよね。二度寝したら遅刻した。」

「陽キャでも二度寝するの?」

「寝る子は育つんだよ?先輩。」

「どうせ私は陰キャですよ。」


「先輩は陰キャっていうより、陰の実力者になるタイプだよねえ。」

「陰の実力者、会ってみたら赤ん坊ってのは、笑い話にしかならないわよ。」

「いや、養鶏場の娘の方がウケると思うんだよねえ。」

「弁当屋の娘に言われてもノーダメージよ。」

「センパイって結構陽キャの会話に付いてくるよねえ。」


 いや、ただ言い返してるだけなんだけど。ミチコにとっては会話なのかな?

 とにかく、陰キャの私は口論の最中に掛かってきたコールをミチコに任せて、トイレに逃げ込む。


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