無口・・・
今日は防災訓練があった。あるのだ、天界にも訓練が・・・
もちろん、天災なんて起きるはずがないのであるが、雷の神とか風の神がやりたがるのである。
まあ、こんな時でないと雷なんて見られないし・・・
ということで、今日はいつもとは違う時間に起きたせいで、眠いし疲れている。
そして、余計な事しかしない神の愚痴を言ってたら、今日最初のコールが鳴る。
「ご利用ありがとうございます。異世界転生カスタマーセンター、お客様サービス係でございます。」
「・・・もしもし。」
何か、小さくボソッとした声が聞こえたような気がする。
「もしもし。お電話は繋がっておりますよ。」
「ああ・・・」
「何かお困り事でもございましたか。」
「手紙、ではだめなのでしょうか・・・」
「申し訳ございません。ただ今メッセンジャーの数が大変不足しておりまして。ただし、弊社のホームページにアクセスしていただくと、質問コーナーなどはございますので、そちらをご利用いただければと思います。」
「アクセスの仕方が分からない。」
「そうですね。大きな教会や王宮など、スキル鑑定の水晶が置いてある場所や、ステータスウィンドウが表示される世界では『その他』のタブをクリックいただければ、アクセスが可能となっております。」
「どっちも、ない・・・」
「それでは、ご用件をお聞きしましょう。」
「みんな、良く喋る。」
「喋ると、お困りになるのですか?」
「俺、苦手・・・」
分かる。どんな世界でもだいたいは、無口な人が割を食う。
「苦手でもよろしいと思いますし、無理に合わせなくてもいいと思います。」
「でも、みんなにdisられる。」
「そういうことはあるかもしれませんね。その時は辛いかもしれませんが、そういう言葉って、ほとんど中身はないんですよ。」
「盛り上がらないって。」
「あなたが盛り上げないといけない話とか飲み会なんて、欠席したっていいじゃないですか。それは、文句をいいたい方が盛り上げるべきだと思います。」
「俺、勇者・・・」
ああ、欠席できない。いろいろと・・・
「でも、勇者が無口であってもいいと思いますよ。何だか渋いですし、カッコいいですよ。」
「先週、四天王に言われた。」
「戦いの最中にですか。」
「うん。つまらんと。」
「無視すれば良いだけではないでしょうか。」
「味方にも、言われた。」
何となく分かる。
ボス戦って派手だし、伏線回収や回想シーン、覚醒とかありそうだもんね。
「でも、大切なのは勝つことです。知ってます? 戦闘中に沢山喋った方が負けるように出来てるんですよ?」
「集中しろ。」
「そうですね。命を賭けているのに、弛んでますよね。だから、お客様は立派だと思います。誰が何と言おうとも。」
「四天王、ずっと喋ってた。」
「見事な勝利、おめでとうございます。」
「いや、引き分けだった。」
「相手が逃げたのですね。」
「やり直しだって言われた。」
勇者がノーリアクションだったことが、余程不満だったらしい・・・
「会話しないなら、もう戦ってやらないって。」
「平和になりますね。」
「良かった。」
「そうですね。そういう物事の解決方法もアリだと思います。」
「でも俺、勇者。」
「その前に、あなたはあなたです。それに、こうして悩むということは、きっとあなたはいい人です。無口なことは損をすることも多いとは思いますが、それであなたの値打ちが損なわれることはありません。」
「ストーリー。」
「気にする必要はありませんよ。勇者が負けない限り、ストーリーは問題なく進んでいきます。」
「あり、がとう。」
「では、勇者様のご武運をお祈りしていますね。」
「うん。バイバイ。」
こうして電話は終わった。
「何だか、気の毒な方でしたね。」
「ええ。主役が饒舌という固定観念、いい加減捨てた方がいいと思います。」
「でも、無口だと読者に伝わりませんね。」
「作画を頑張ればいいんじゃないですか?」
「でも、言葉の果たす役割は大きいですから。」
「それなら、転生者を俳優に限定すべきだと思います。一般人にそこまで要求するのはあんまりです。」
「そうねえ。あなたがいつも使ってる手抜き用の機械。あんなのを持ってるといいかもね。」
「全部電子音になってしまいますけど。」
「良く考えると、あなたには必要無い機械よね。」
「私もそれほど話し好きではありませんよ。ミチコといる時は無口ですし、今日も眠いですし。」
「訓練明けは大変だけど、もう少しだから頑張ってね。」
「はい。」
思い出した。
神への愚痴なら多少は饒舌になると思う。




