第65話 セクハラのお時間です。
そもそもなぜ僕がセクハラをしようとしているのか。
一番の理由(建前)として、僕に対するセクハラをやめてほしいからである。
彼女たちにセクハラをすることによって、いかに、普段自分たちがひどいことをしているかを身をもって体感すれば、まぁ、やめるとはいかなくても少しは軽くなるだろう。
他の理由としては、言わなくてもわかる、男だからである。
……どちらかと言うとこっちの理由の方が主というのは内緒である。建前って大事だよね。
まずは、私が今日の夜、寝るであろうベットの上で翼の手入れをしているアムエルにセクハラをしていこうと思う。
別に僕が巨乳好きだから最初にアムエルを選んだわけではない。
……その抜けた羽、ちゃんと片付けるんだろうね。
「アムエルー」
「なにかしら?」
「アムエルってぇ、すごくイイ体してるよね」
そうして言いながら僕はベットに座り、アムエルの腰を持ってこちら側によせ、その流れでふとももをなでてみる。
あー、これこれ、これよ。
すべすべで、手に吸い付く感覚がとても気持ちがいい。
さて、アムエルはどんな顔をしているか……
「……」
いや、怖。
僕の顔をじっくり、瞬きなしで見ている。
そうしてゆっくり目を閉じて、再び開く。
そして言った。
「なるほど、誘っているのね」
「違います」
「恥ずかしがらなくていいのよ」
アムエルの翼が僕の体を包み、僕はベットに押し倒される。
僕はアムエルに押し倒されて、視界には彼女しか映らなくなる。
アムエルのきれいな黒髪が重力によって垂れ下がり、僕の顔にかかって少しくすぐったい。
「いやほら、ノーシャもいるから……」
別に僕はナニがしたいわけではない。ちょっと触りたいだけなんだ!いや間違えた、君たちにセクハラがどれだけひどい行為であるかを教えようとだな……
「その方が燃えるじゃない」
「いや、こういうのは、まだ早いと思うんだよね」
「夫婦の営みよ?遅いくらいだわ」
そう言いながら、アムエルが顔を近づけ、キスをしようとする。
その瞬間、視界の端から(といってもアムエルの翼で包まれているため、周りはほとんど見えないが)蹴りが飛んできた。
「セイ!」
その蹴りをアムエルは翼をうまく使って受け流し、床に着地する。
蹴りが飛んできた方を見ると、蹴りの主はノーシャだった。
いやまぁ当たり前か。
「何?、邪魔しないでちょうだい」
「護衛、ですから」
「本音は?」
「うらやましい」
ノーシャが血涙がでるんじゃないかと思ってしまうほどに顔を歪ませて言った。
「そもそも!なんで私じゃなくてアムエルさんに手を出すんですか!私はいつでもウェルカムなのに!」
「ふん、彼はムチムチが好きなのよ」
「ぐぬぬぬぬぬ!」
アムエルはノーシャの悔しそうな顔を見て、ふふんと勝ち誇ったように胸を張った。
「あ、ウザい!ウザいですよその顔!その仕草!大体、私はアムエルさんが私たちの家に住んでから思うようにセクハラが出来なくて困ってるんですよ!」
ホントか?セクハラの頻度は変わってないと思うが。
「あら、鬱憤が溜まっているのかしら?」
「溜まってますね!え?なんですか?相手してくれるんですか?」
「いいわよ、相手してあげる。私も邪魔されてイライラしてるの」
そういって、お互いファイティングポーズをとる。
いやまてまて!
ここで暴れられたらたまったものではない!
普通にいい部屋だから、高そうなツボ、掛け軸とかあるんだぞ!
なんとかして止めねば。いやそもそも僕が蒔いた種だから自業自得か。
「僕のために争わないで!」
まさかこのセリフを言うことになるとは思わなかった。
「邪魔しないで頂戴」
「そうです、女同士の戦いに口を挟まないでください」
そんな、どこかで聞いたようなセリフを…!
二人の喧嘩は止まりそうにない。しかし、僕にはこの場を収める素晴らしい案がある。やってみる価値ありまずぜ!
「ここは、野球拳で決着をつけよう」
「野球拳、ですって?」
「野球拳、ですか?」
お、空気が変わったぞ、これはいけるのではないか!




