第14話 霊視ではないもの
鴻上志乃を八汐レイクホテルへ呼んだのは、千尋だった。
公式な捜査協力者ではない。
むしろ疑っているからこそ、現場での反応を見たかった。
三階。
312号室。
志乃は廊下を歩きながら言った。
「ここだけじゃないんですね」
「何が?」
「電話」
千尋の視線が鋭くなる。
電話が部屋から部屋へ移るように鳴った事実は、公表していない。
「どうして知ってる?」
「家族から」
「そこまでは説明してない」
志乃は一瞬黙った。
「推測です」
歩き続ける。
308号室前。
志乃が館内電話を見る。
じっと。
「何?」
「何となく」
数秒後。
リリリリリン。
折原が飛び上がった。
電話が鳴った。
千尋は受話器を取る。
無音。
「どうして分かった?」
「分かってません」
「霞ヶ瀬の通路も?」
志乃は答えない。
「私を犯人だと思ってます?」
「可能性は考えてる」
志乃はわずかに笑った。
その後、地下へ。
隠し通路。
志乃は壁の前で足を止めた。
「向こうに空間があります」
まただった。
調べると、壁の向こうから小さな機械室が見つかる。
古い交換設備。
配線。
小型バッテリー。
遠隔操作装置。
「電話を鳴らしてた設備?」
折原が言う。
技官は頷いた。
「可能性があります」
千尋は志乃を見る。
「どうしてここだと分かった?」
「音が聞こえた気がしたんです」
「何の?」
志乃が答えようとした、そのとき。
カン。
志乃の身体が震えた。
カン。
二回目。
技官が設備を確認する。
「こっちは動いてません!」
三回目。
千尋は待った。
来ない。
志乃が低く言った。
「出た方がいい」
「なぜ?」
「三回目が鳴る前に」
千尋は彼女を見た。
「それ、誰から聞いたの?」
志乃は答えなかった。




