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また、明日。  作者: 蒼空


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第七話  38回目の修正

壊れた世界の中で、

最後まで信じられるものは何だろうか。


記憶か。

言葉か。


それともーー。

『ーー38回目の修正を開始します』


その声は、

空から聞こえた。


男なのか、

女なのかも分からない。


感情のない、

機械みたいな声。


世界が止まっている。


風も吹かない。


周囲の人間たちも、

動きを止めたまま固まっていた。


「......なんだよ、

  これ」


掠めた声しか出なかった。


夜空には、

巨大なノイズが走っている。


テレビの砂嵐みたいに、

空そのものが壊れていた。


梨乃が、

俺の腕を強く掴む。


「悠真、

  目を逸らして」


「は?」


「早く!!」


珍しく、

叫ぶみたいな声だった。


でも。


遅かった。


空を見た瞬間。


頭の奥で、

何かが弾ける。


『38回目』


その言葉を聞いた途端、

大量の記憶が流れ込んできた。


笑う梨乃。


怒る梨乃。


泣いてる梨乃。


全部、

違う日。


でも全部、

同じ夜。


『今日こそ、

  君を助けるから』


『また失敗した』


『なんで、

  いつも死ぬの......』


頭が割れそうだった。


「っぁ.......!!」


膝をつく。


吐き気。


視界が滲む。


知らないはずの思い出が、

感情ごと流れ込んでくる。


「悠真!!」


梨乃が慌てて支える。


その瞬間。


また、

別の記憶。


雨の駅前。


びしょ濡れの梨乃。


そして。


『俺が死んだら、

  お前、

  一人になるだろう』


それは、

確かに俺の声だった。


『だから、

  忘れるくらいなら』


『ずっと、

  今日のままでいい』


息が止まる。


「.......俺、

  本当に言ったのか」


震える声で聞く。


梨乃は、

苦しそうに目を閉じた。


「.......うん」


「なんで」


「覚えてないの?」


その言葉が、

胸に刺さる。


覚えてない。


でも。


その時の感情だけは、

痛いくらい伝わってきた。


怖かったんだ。


梨乃を失うのが。


「......俺、

  何があった」


静寂。


夜空のノイズだけが、

不気味に揺れている。


そして梨乃は、

ゆっくり口を開いた。


「君、

  病気だったの」


時間が止まる。


「......え」


「治らないって、

  言われてた」


その瞬間。


頭痛。


また記憶。


病院の白い天井。


消毒液の匂い。


そして。


泣きながら笑う梨乃。


『また明日ね』


俺は、

その言葉を聞いて笑っていた。


『.......ああ』


でも。


その”明日”が、

来ないことを知っていた。


「っ.......!!」


胸が苦しい。


呼吸ができない。


「悠真!」


「なんで.......!」


知らない。


こんなの知らない。


でも。


怖いくらい、

本物だった。


「だから君は、

  願った」


梨乃の声が震える。


「私を忘れたくないって」


夜空が吹く。


止まっていたはずの世界が、

少しだけ動き始める。


『修正失敗』


突然、

空から声が響いた。


『対象:朝比奈悠真』


『世界整合性に深刻なエラーを確認しました』


意味が分からない。


でも。


その瞬間。


夜空のノイズの向こうに、

”誰か”が見えた。


黒い影。


人の形。


でも顔がない。


それが。


空の上から、

俺たちを見下ろしていた。


「.......あれ、

  何だよ」


掠れた声で聞く。


すると梨乃は、

絶望した顔で呟いた。


「......見えちゃったんだ」


その瞬間。


影が、

ゆっくりこちらを指差した。


『不要な記憶を確認』


『修正を開始します』


次の瞬間。


梨乃が、

俺を突き飛ばした。


そして。


ーー世界が、

真っ白に染まった。

第七話読んでくださってありがとうございます!


今回は、

かなり物語の核心に近づく回でした。


ここから、

「ループする青春恋愛」だった物語が、

少しずつ別の顔を見せ始めます。

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