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また、明日。  作者: 蒼空


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第三話  知らない思い出

"知らない記憶”ほど、

人を怖くするものはないと思う。


それが、

自分の記憶ならなおさら。

「なんで、

  今回は記憶が残ってるの......?」


梨乃の声が震えていた。


駅前。


23時46分。


また同じ景色。


同じ夜。


でも、

今までと決定的に違うことがある。


俺は覚えている。


死んだことも。


ループしたことも。


そして、

目の前の少女のことも。


「......本当に、

  覚えてるのか?」


梨乃が恐る恐る聞く。


「いや、

  覚えてるっていうか......」


上手く言葉にできない。


頭の奥がずっと気持ち悪い。


夢を無理やり押し込まれてるみたいだった。


「お前が、

  俺は0時前に死ぬって言った」


「......」


「それで、

  踏切の音がして」


そこまで言った瞬間。


梨乃の顔色が変わる。


「待って」


「え?」


「それ以上、

  思い出さないで」


今までで一番真剣な声だった。


思わず黙る。


風が吹く。


駅前の自販機が低く唸っていた。


「......なんなんだよ、これ」


やっとそれだけ言えた。


すると梨乃は、

少しだけ困ったように笑う。


「説明しても、

  たぶん信じないよ」


「もう十分意味分かんねえから今さらだろ」


そういうと、

彼女は少し黙った。


それから小さく息を吐く。


「君は毎日、

  0時前に死ぬ」


「......」


「死ぬたびに、

  時間が23時46分に戻る」


「......」


「で、

  その記憶を持ってるのは、

  本来は私だけ」


本来は。


その言葉が引っかかった。


「じゃあなんで、

  今回は俺も覚えてる」


「分からない」


即答だった。


でもその目は、

何かを隠していた。


「......嘘つけ」


「嘘じゃない」


「じゃあなんでそんな顔してんだよ」


その瞬間。


梨乃の表情が止まった。


まるで、

何回も俺と話してきたみたいな。


「なあ」


俺は梨乃を見る。


「俺たち、

  本当に初対面か?」


静寂。


遠くで、

電車の通貨音が響く。


梨乃は少しだけ俯いて、

それから小さく笑った。


「......君は毎回、

  同じこと聞く」


鳥肌が立った。


「毎回?」


「うん」


彼女はそこか懐かしそうに、

でも少し苦しそうに笑う。


「最初は、

  もっと怖がってた」


「は......?」


「でも七回目くらいから、

  君、慣れ始めて」


「待て」


意味が分からない。


七回目?


なんの話だ。


「その後、

  二十回目くらいでーー」


「待てって!!」


思わず声が大きくなる。


その瞬間。


頭痛。


視界が揺れる。


知らない記憶。


夜の駅。


笑う梨乃。


『今日の君、

  ちょっとかっこよかった』


知らない。


こんなの知らない。


でも。


胸が痛いくらい、

懐かしかった。


「っ......!」


息が詰まる。


梨乃が慌てて近づいてくる。


「だから言ったのに......!」


「なんだよこれ......!」


「思い出しかけてる」


「何を!?」


その瞬間。


梨乃が、

言葉を止めた。


まるで、

言ってはいけないことに気づいたみたいに。


「......まだダメ」


「だから何が!!」


「君は、

  全部思い出したらーー」


そこで、

彼女は口を閉じた。


スマホを見る。


23時52分。


梨乃の顔色が変わる。


「......もうこんな時間」


「おい」


「今日は場所が違う」


「は?」 


「踏切じゃない」


意味不明な言葉。


でも梨乃は本気だった。


辺りを見回す。


まるで、

”何か”を探しているみたいに。


その時だった。


駅前の大型ビジョン。


本来なら流れているはずの広告が、

一瞬だけノイズ混じりに止まる。


画面が乱れた。


そして。


『ーーまた明日』


一瞬だけ、

黒い画面に白い文字が映った。


「......え?」


周囲の人間は誰も反応していない。


俺だけが見えているみたいだった。


次の瞬間。


梨乃が、

血の気の引いた顔で呟く。


「......なんで」


「何が」


「今までは、

  こんなの出なかった」


その声には、

はっきりとした恐怖が混ざっていた。

第三話読んでくださってありがとうございます!


今回は、

”ループの違和感”と”主人公の記憶”を中心に進めてみました。


少しずつ、

「今までのループと何かが違う」

という不穏さも入れ始めています。


ここから少しずつ、

物語の”ズレ”が大きくなっていきます。

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