第二十五話 『最初の23時46分』
もし、
過去をやり直せるとして。
あの日と同じ言葉を、
もう一度言えるだろうか。
空の”目”が、
静かにこちらを見下ろしていた。
『最終修正を開始します』
その声と同時に。
世界が、
崩れ始める。
校舎が軋む。
窓ガラスが割れる。
空には、
黒いヒビが広がっていく。
悲鳴。
ノイズ。
終わりかけの世界。
でも。
白い少女だけは、
静かだった。
「時間ないよ」
その声に、
悠真は顔を上げる。
「......最初の23時46分って、
どうやって行くんだよ」
少女は、
少しだけ笑った。
「簡単」
そして。
悠真の胸を、
そっと指差す。
「全部、
思い出せばいい」
その瞬間。
頭の奥に、
激しい痛みが走った。
「っ......!!」
視界が歪む。。
ノイズ。
大量の記憶。
38回分の夜。
38回分の死。
38回分の「また明日」。
「うぁ......っ!!」
悠真は、
その場へ膝をつく。
苦しい。
息ができない。
でも。
止まらない。
『また明日』
『悠真』
『死なないで』
『忘れても、
また好きになる』
全部。
全部、
流れ込んでくる。
すると。
梨乃が、
慌てて悠真へ駆け寄った。
「悠真!!」
その手が触れた瞬間。
世界が、
真っ白に染まる。
雨の音。
ぽつ、ぽつ、と。
静かな病室。
白い天井。
消毒液の匂い。
そして。
ベッドの上には、
弱った悠真がいた。
「......ここ」
掠れた声が漏れる。
思い出した。
ここが。
全部の始まり。
最初の世界。
まだ、
ループなんて存在しなかった夜。
窓の外を見る。
時計。
【23:41】
あと5分。
悠真は、
ゆっくり呼吸をした。
この後、
自分は死ぬ。
そして。
世界が壊れる。
その時。
病室のドアが、
勢いよく開いた。
「......悠真!!」
梨乃だった。
制服のまま。
息を切らしながら、
涙目で立っている。
その姿をみた瞬間。
胸が、
苦しくなる。
懐かしい。
会いたかった。
でも。
今の梨乃は、
まだ何も知らない。
ループも。
未来も。
終わりも。
「......なんで、
そんな顔してんの」
悠真は、
苦笑する。
梨乃は、
何も言えなかった。
ただ。
涙を堪えるみたいに、
唇を噛んでいる。
「......死なないで」
その声。
最初の世界でも、
同じことを言っていた。
悠真は、
静かに目を閉じる。
分かってる。
ここで。
自分が間違えた。
”終わりたくない”と願った。
だから世界は壊れた。
なら。
今度こそ。
ちゃんと終わらせないといけない。
「......梨乃」
悠真は、
ゆっくり彼女を見る。
震えそうになる。
でも。
笑った。
「ちゃんと、
明日に行けよ」
その瞬間。
梨乃の瞳から、
涙が零れ落ちた。
「嫌だ......!」
時計の針が進む。
23:45
あと1分。
悠真は、
静かに息を吐く。
怖い。
本当は、
めちゃくちゃ怖かった。
消えるのも。
忘れられるのも。
でも。
もう逃げたくなかった。
「......また明日」
最初の夜と、
同じ言葉。
でも。
今度は違う。
”終わりたくない”じゃない。
”生きてほしい”って願いだった。
23:46
その瞬間。
病院の窓の外で、
空が大きく揺れた。
第25話読んだくださってありがとうございます!
今回は、
ついに”最初の23時46分”へ辿り着きました。
ここから、
物語はいよいよ最後の選択へ向かっていきます。
第25話から1日1話投稿になります




