第二十三話 『最初の失敗』
人は、
何度でも同じ間違いを繰り返す。
でも。
それでも誰かを救いたいと思ってしまうのが、
きっと”好き”なんだ。
「......39回目?」
教室が、
静まり返っていた。
蝉の声だけが、
遠くで聞こえる。
悠真は、
目の前の少女を見る。
白いカーディガン。
感情の読めない笑顔。
そして。
梨乃の、
震える横顔。
「......梨乃」
声をかける。
でも。
梨乃は、
返事をしなかった。
ただ。
信じられないものを見るみたいに、
少女を見つめている。
少女は、
そんな梨乃を見て、
小さく笑った。
「そんな顔しないでよ」
その声は、
どこか寂しそうだった。
「別に、
久しぶりって言っただけじゃん」
「......なんで」
梨乃の声が震える。
「なんで、
まだ残ってるの......?」
その瞬間。
教室の空気が、
一気に冷めた。
少女は、
少しだけ首を傾げる。
「残ってる、か」
そして。
小さく笑った。
「それ、
梨乃が一番言っちゃダメの言葉だよ」
「......っ」
梨乃には、
意味が分からなかった。
でも。
二人だけ、
”何か”を知っている。
そんな空気だった。
昼休み。
屋上。
熱い風が吹いている。
でも。
空気は、
息苦しいくらい重かった。
「......説明しろよ」
悠真が言う。
フェンスの前には、
梨乃とあの少女。
少女は、
楽しそうに空を見上げていた。
「説明って?」
「38回目とか、
39回目とか」
悠真は、
拳を握る。
「なんなんだよ、
あれ」
沈黙。
梨乃が、
ゆっくり口を開いた。
「......私、
全部思い出したの」
その瞬間。
風が止まった気がした。
「......え」
「昨日の夜」
梨乃は、
震える声で続ける。
『世界がまた壊れ始めて、
その時ーー』
彼女は、
苦しそうに目を伏せる。
「全部戻ってきた」
23時46分。
白い空間。
巨大な”目”。
何度も繰り返した死。
何度も失った悠真。
「......39回目」
悠真が呟く。
すると。
白い少女が、
静かに笑った。
「正確には、
38回失敗した、かな」
背筋が凍る。
「......失敗?」
少女は、
フェンスへ寄りかかる。
そして。
まるで、
昔話でもするみたいに言った。
「梨乃、
毎回悠真を救えないんだよ」
その瞬間。
梨乃の肩が震えた。
「やめて......」
「だって本当じゃん」
少女の声は、
どこまでも静かだった。
「どれだけ頑張っても、
悠真は最後に死ぬ」
「やめて!!」
梨乃が叫ぶ。
その声に。
悠真の胸が、
ズキッと痛んだ。
少女は、
少しだけ悲しそうに笑った。
「ほらね」
「......っ」
「だから、
この世界壊れたんだよ」
静寂。
蝉の声だけが響く。
少女は、
ゆっくり悠真を見る。
その目には。
少しだけ、
同情みたなものが浮かんでいた。
「悠真くん」
「......なんだよ」
「君、
なだ勘違いしてる」
風が吹く。
少女の髪が揺れる。
そして。
彼女は、
静かに告げた。
「ループを始めたの、
梨乃じゃないよ」
時間が止まる。
「......は?」
悠真が固まる。
少女は、
笑わなかった。
「最初に世界を壊したのは、
君」
その瞬間。
頭の奥で、
何かが弾けた。
病院。
真っ白な天井。
泣いている梨乃。
そして。
死にかけの自分。
『嫌だ』
『終わりたくない』
『まだ、
梨乃といたい』
その感情。
願い。
執着。
全部。
全部。
世界を壊すほど強かった。
「っ......!」
悠真は、
頭を押さえて膝をつく。
苦しい。
でも。
止まらない。
すると。
少女が、
静かに続けた。
「私はね」
その声だけが、
やけに優しかった。
「”最初に壊れた世界”の梨乃だよ」
その瞬間。
梨乃の顔から、
血の気が引いた。
第二十三話読んでくださってありがとうございます!
今回は、
”ループの本当の始まり”へ踏み込む回でした。
ここから、
ループの事実と、
”最初の世界”で何が起きたのか明かされていきます。




