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また、明日。  作者: 蒼空


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第十三話  『最終選択』

人は、

失うと分かっているものほど、

強く抱きしめたくなる。


たとえその先に、

終わりしかなくても

『あなたは、

  今日を終わらせますか?』


白い空間に、

その声だけが響いていた。


巨大な”目”は、

感情もなく悠真を見下してる。


足元は、

少しずつ崩れていた。


黒いノイズが、

世界を侵食している。


でも。


悠真の視線は、

ただ一人だけを見ていた。


「......梨乃」


空間の向こう。


消えながら、

梨乃が立っている。


輪郭が薄い。


今にも、

消えてしまいそうだった。


「......来るな」


梨乃が、

泣きそうに笑う。



「もう、

  時間ないから」


「ふざけんな......!」


悠真は叫ぶ。


「なんで、

  そんな簡単に諦めんだよ!!」


声が震える。


怖かった。


また失うのが。


やっと、

全部思い出したのに。


『選択を要求します』


巨大な”目”が、

静かに告げる。


『ループを終了した場合』


白い空間に、

映像が浮かぶ。


朝焼け。


動き出す街。


学校へ向かう人々。


”明日”だった。


『世界は正常化されます』



映像が切り替わる。


そこには。


一人で歩く悠真が映っていた。


「......え」


『柊梨乃に関する記憶は削除されます』


時間が止まる。


「......は?」


『世界整合性維持のため、

  エラー因子を修正します』


理解が追いつかない。


「記憶を、

  消すって......」


悠真の声が震える。


巨大な”目”は、

淡々と告げた。


『存在しない時間の記憶は、

  保持できません』


その瞬間。


梨乃が、

静かに目を伏せた。


「......やっぱり」


「梨乃?」



「前、

  同じだったから」


胸が止まりそうになる。


「......前?」


梨乃は苦しそうに笑う。


「一回だけ、

  ループが終わりかけたことあるの」


白い空間が、

静かに揺れる。


「その時、

  悠真ーー」


梨乃の声が、

少し震える。


「私のこと、

  全部忘れた」


息が止まる。


「......え」


「学校であっても、

  知らない人みたいだった」


その言葉が、

胸に突き刺さる。


「だから私、

  怖くなったの」


梨乃が、

泣きそうに笑った。


「また、

  一人になるのが」


静寂。


全部、

繋がった気がした。


梨乃は、

”未来”じゃなく。


”忘れられること”が怖かったんだ。


『選択を要求します』


また、

あの声が響く。


『ループ継続を選択した場合』


映像が変わる。


23時46分。


駅前。


何度も見た景色。


そして。


何度も死ぬ悠真。


何度も泣く梨乃。


終わらない今日。


『世界崩壊を確認』


映像の中で、

空が完全に砕け散る。


人々が消えていく。


街が、

黒いノイズに飲まれていく。


『最終的に、

  全てが消滅します』


悠真は、

拳を握り締めた。


選べと言われている。


”梨乃を忘れて明日へ進む”か。


”梨乃を守って世界ごと壊す”か。


そんなの。


選べるわけがない。


「......悠真」


梨乃が、

小さく名前を呼ぶ。


振り向く。


彼女は、

泣きながら笑っていた。


「もう、

  終わりにしよ?」


その言葉が、

痛い。


「.......嫌だ」


気づけば、

そう言っていた。


「忘れたくない」


胸が苦しい。


「お前がいたこと、

  全部なくなるなんて」


怖かった。


また。


全部失うのが。


すると梨乃は、

少しだけ目を見開いて。


それから、

優しく笑った。


「......うん」


涙を零しながら。


「私も、

  本当は嫌だよ」


その瞬間。


白い空間に、

大きな亀裂が走る。


『感情異常増幅を確認』


『世界維持限界を突破』


巨大な”目”が、

初めて僅かに揺れた。


そして。


悠真の脳裏に、

一つの記憶が蘇る。


病院の屋上。


夕焼け。


泣きながら、

梨乃が言った。


『もし、

  忘れちゃっても』


『私は、

  もう一回好きになるから』


その瞬間。


悠真は、

ゆっくり顔を上げた。

第十三話読んでくださってありがとうございます!


今回は、

物語の大きな選択肢が提示される回でした。


ここから、

悠真が”どんな明日”を選ぶのか、

物語はクライマックスへ向かっていきます。

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