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また、明日。  作者: 蒼空


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第十二話  『朝のない世界』

「また明日」


その言葉は、

未来を約束する言葉だと思っていた。


でも本当は。


”終わりたくない今日”から、

目を逸らすための言葉だったのかもしれない。

白い光が、

世界を飲み込んだ。


何も見えない。


何も聞こえない。


ただ。


最後に見えた梨乃の笑顔だけが、

頭から離れかった。


『一緒に、

  学校行こうね』


その言葉が、

胸に刺さったまま。


意識が沈む。


沈んでいく。


まるで、

深い海の底へ落ちるみたいに。


その時。


誰かの声が聞こえた。


『ーー対象世界を初期化します』


『エラー因子を消去』


『記憶を再構築』


機械みたいな声。


でも。


今までより、

近い。


すぐ耳元で聞こえているみたいだった。


『朝比奈悠真』


名前を呼ばれる。


『あなたは、

  本来存在してはいけない記憶です』


「......は?」


気づけば、

声が出ていた。


真っ白な空間。


上下も分からない。


その中で、

悠真は一人立っていた。


「......どこだよ、

   どこ」


返事はない。


代わりに、

空間に無数の文字が浮かぶ。


【ERROR】


【LOOP FAILED】


【MEMORY REMAINING】


ノイズ混じりの文字。


その中央。


一つだけ、

赤い文字が浮かんでいた。


【柊梨乃:削除中】


「......っ!」


心臓が跳ねる。


「やめろ!!」


叫んだ瞬間。


空間が揺れた。


『感情異常値を確認』


『対象:朝比奈悠真』


『再構築を開始します』


その瞬間。


頭の奥へ、

大量の記憶が流れ込んできた。


夏祭り。


放課後。


コンビニ。


病院。


笑う梨乃。


泣く梨乃。


怒る梨乃。


全部。


全部、

悠真の大事な記憶だった。


『また明日』


何度も。


何度も。


何度も繰り返した言葉。



「......っ」


膝をつく。


思い出してしまった。


悠真は、

病気で死んだ。


0時直前。


駅前で。


梨乃に、

「また明日」と言って。


そして。


死ぬ瞬間。


願ってしまった。


『まだ終わりたくない』


『梨乃を一人にしたくない』


『また会いたい』


その願いが。


世界を、

狂わせた。


「......俺が」


呼吸が苦しい。


「全部、

  壊したのか」


静かな声が響く。


『肯定』


その瞬間。


白い空間の奥に、

巨大な”目”が現れた。


今まで空に見えていたもの。


その本体。


人間ではない。


感情もない。


ただ、

世界のルールそのものみたいな存在。


『本来、

  死者に明日は存在しません』


「......っ」


『あなたは、

  終わるべき時間を固定しました』


冷たい声。


でも。


間違っていない。


悠真は、

終わりを拒絶した。



そのせいで、

梨乃は終われなくなった。


『柊梨乃は、

  あなたの願いに巻き込まれた被害者です』


胸が痛い。


何も言い返せない。


すると。


空間の奥で、

小さなノイズが走った。


そして。


聞こえた。


『......悠真』


梨乃の声。


悠真が顔を上げる。


白い空間の向こう。


消えかけながら、

梨乃が立っていた。


「梨乃!!」


駆け出そうとする。


でも。


足元が、

黒く崩れ始める。


『最終選択を開始します』


世界が揺れる。


巨大な”目”が、

静かに悠真を見下ろした。


『あなたは、

  今日を終わらせますか?』


その瞬間。


梨乃が、

泣きながら笑った。


『......ちゃんと、

  明日に行って』

債十二話読んでくださってありがとうありがとうございます!


今回は、

ついに悠真自身が、

”ループの始まり”を完全に思い出す回でした。


ここから物語は、

”終わらない今日”を選ぶのか、

”別れのある明日”を選ぶのか、

その決断へ向かっていきます。

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