第十一話 『0時の先』
終わりは、
いつだって突然やってくる。
だから人は、
「また明日」を信じたくなるのかもしれない。
駅の時計が、
0時を指した。
その瞬間。
世界から、
音が消えた。
風も。
踏切も。
ノイズすらも。
全部。
完全な静寂。
「......梨乃?」
掠れた声で名前を呼ぶ。
返事はない。
目の前で。
梨乃の身体が、
少しずつ崩れていた。
砂みたいに。
ノイズみたいに。
「......やめろ」
足が震える。
理解したくない。
でも。
黒い手が貫かれた部分から、
確実に消えていった。
「梨乃!!」
駆け寄る。
抱きしめる。
冷たい。
でも、
ちょんとそこにいる。
「......なんで」
呼吸が苦しい。
「なんでお前が消えるんだよ......!」
梨乃は、
泣きそうに笑った。
「......だって、
ループを繋いでたの、
私だから」
心臓が止まりそうになる。
「......え」
「悠真の願いだけじゃ、
ここまで続かなかった」
夜空ノイズが、
ゆっくり広がっていく。
世界の輪郭が、
少しずつ崩れていた。
「私が、
何度も繋ぎ止めてた」
その声は、
どこか諦めていた。
「君が消えるの、
見たくなくて」
胸が痛い。
苦しい。
でも。
それ以上に。
怖かった。
「......嫌だ」
気づけば、
そう言っていた。
「お前が消えるの、
嫌だ」
梨乃が、
少しだけ目を見開く。
その瞬間。
頭の奥で、
また記憶が流れる。
病院の個室。
静かな夜。
『もし、
俺が先に死んだらさ』
ベッドの上で、
悠真が笑う。
『ちゃんと、
明日に行けよ』
梨乃は泣きながら怒った。
『無理に決まってるじゃん......!』
『なんで』
『だって私はーー』
そこで、
記憶がノイズに変わる。
聞こえない。
でも。
その時の梨乃が、
だれだけ泣いていたかだけは分かった。
「......俺、
最低だな」
掠れた声で呟く。
「一人だけ、
勝手に怖がって」
忘れたくなかった。
死にたくなかった。
だから。
梨乃を、
この終わらない今日に閉じ込めた。
「......違う」
梨乃が、
弱く首を振る。
「私も、
同じだったから」
その声は、
消えそうなくらい小さい。
「悠真がいない明日なんて、
来なければいいて思った」
静寂。
その言葉が、
胸を締め付ける。
空から、
またあの声が響いた。
『ループ崩壊を確認』
『最終修復へ移行します』
次の瞬間。
夜空の”目”が、
ゆっくり開いた。
ぞわっ、と寒気が走る。
それは、
人間なんかじゃなかった。
巨大すぎる。
世界せのものみたいな存在。
『原因因子を排除します』
空間が歪む。
駅前の景色が、
ガラスみたいに砕け始める。
「っ......!」
立っていられない。
でも。
梨乃だけが、
静かにその”目”を見ていた。
「......来ると思ってた」
「梨乃!?」
彼女は、
ゆっくり悠真を見る。
そして、
少しだけ笑った。
「ねえ悠真」
「......なんだよ」
「もし次、
ちゃんと朝が来たらさ」
その言葉に、
心臓が止まりそうになる。
朝。
つまり。
ループの終わり。
「......一緒に、
学校行こうね」
その瞬間。
空の”目”が、
ゆっくりこちらを見下した。
そして。
『ーー世界を初期化します』
真っ白な光が、
夜を飲み込んだ。
第十一話読んでくださってありがとうございます!
今回は、
梨乃が”ループを繋ぎ止めていた存在”であること
が明かされました。
ここから、
二人は”終わらない今日”ではなく、
”本当の明日”へ進めるのかが大きなテーマに
なっていきます。




