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その5 小さな石
女の子が、小さな石を拾った。
ぼくも、その石を見る。
「これ、いい感じじゃない。」
女の子は石を手のひらで転がしながら、
少しだけ歩いた。
その歩みは、どこか背伸びをしているようにも見えた。
そして――
そっと地面に戻した。
まるで、
「もう、これはわたしの宝物じゃない」
そう言っているみたいだった。
ぼくは、しばらくその石を見つめた。
……そうか。
女の子は、少しだけ大人になろうとしている。
でも、
そんなに急がなくてもいいのに。
ぼくは、胸の奥でそっとつぶやいた。
ぼくは、こっそり石を自分の中へ沈めた。
すうっ。
石が消える。
女の子は気づかない。
気づかなくていい。
ぼくは知っている。
あの石を戻したのは、
もう子どもじゃないふりをしたかったから。
だから、ぼくが預かっておく。
いつかまた、
「これ、いい感じ。」
そう思う日が来るかもしれないから。
影の中で、
小さな石はゆっくりと沈んでいった。
まるで、
揺れる女の子の気持ちを、
そっと抱きしめるように。
影は、
女の子が置いていった“子どもの気持ち”を
静かに預かっている。
それは、
いつかまた必要になるかもしれない
やわらかい心のかけら。
ぼくはそれを、
影の奥でそっと守りながら歩き続ける。




