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第八話: 動物園へ

渚の両親に連絡を入れると意外な返答があった。

私に連絡が取れず会えないことに渚が珍しく拗ねているとのことだった。

島で会話した記憶から渚はうさぎなど動物が好きだったようなので、動物園を案内すると申し出た。

申し出るや否やすぐに承諾が取れた。


そして約束の日になり、動物園の正面前に向かうとすでに両親に付き添われた渚の姿があった。

渚はあの時と同じ白いワンピースを着ていた。

汚れや破れが見当たらないことから、新品を買ったのだろう。

夏らしい陽気に映える色と、渚にぴったりな衣装だ。

ついつい見つめてしまうと渚は少し照れくさそうに両親の後ろに隠れる。

とてもかわいい。


「渚ちゃん、久しぶり。また会えて本当に嬉しい。」

「…私も嬉しいです、灯さん」

頬を赤らめて囁くように渚は言った。

そして私は渚の手を取り、動物園の中へ二人で入っていった。


「…」

けれど、いざ二人きりになると何を話せばよいのか分からず、沈黙が流れる。

「…なんだか、よそよそしい感じで少し寂しいな」

「だって、なんだかあの時のことが全部幻だったような気がして…」

渚の言葉にあの時のことを思い出す。私は島での最後の日に渚と熱い抱擁を…

途端に顔が熱くなった。いやいやそうじゃない。


「あの時のことは一度置いといて、今日は動物園を楽しもう」

そう言い、渚の手を引いて、動物たちを見て回る。


カンガルー、ゾウ、トラといった動物園の人気者を見て回る。渚は楽しそうだ。

レッサーパンダの愛くるしさにも渚はうっとりと瞳を輝かせている。

やはり小動物が好きそうだ。ならば、ふれあいコーナーへ向かった。


「ここにいる動物には触れられるみたいだよ。」

「うさぎさん、触りたいです!」

そういうやいなや渚はゲージ内に入る。

そしておどおどと差し出した彼女の指先がうさぎの柔らかな毛並みに触れる。

うさぎは嫌がる様子もなく、エサを食べながら、大人しく撫でられている。

「かわいい…」

そう呟きながら、渚はうさぎの頭を何度も撫でている。

その様子があまりに愛らしかった。

「かわいい」

私は気づけば渚の頭を撫でていた。

きょとんとする渚に、私はうっとりした気持ちで真っすぐに視線を合わせて囁く。

「かわいいよ、渚ちゃん」

彼女は一瞬だけ驚いていたが、微笑んだ。

そのまま二人して幸せななでなでタイムを過ごした。


そして、ライオンの展示へたどり着いた。

強いはずのライオンが頑丈な檻の中に閉じ込められている。


「…ここにいる子たちはみんな閉じ込められているんですね」

唐突な渚の言葉が重く響いた。

「…閉じ込められているかもしれないけどご飯は出てくるし、危険はないし安全だよ」

「閉じ込められるくらいなら、たとえ危険な目にあったとしても自由になりたいです。

でも辛いことにも立ち向かわないといけないですよね。」


渚が少し歩き出し、そして振り返った。

「…私つらいことは耐えれないと思っていました。でもあの島で分かったんです。」

渚がじっと私を見つめる。

「私でも、耐えきれるし、自由になれる。隣に一緒にいてくれる人がいるなら」

私はたまらず渚を抱きしめる。渚は嫌がる様子もなく抱きしめ返してくれる。

見つめ合い、唇を重ねる。

ライオンや動物達に祝福されながら、私たちは人目もはばからず抱きしめ合った。


渚の帰宅時間になったので動物園の入り口に向かうと、渚の両親が既に待ち構えていた。

両親と事務的な挨拶をすまし、車に乗り込む彼女を見送る。

また会いたいと伝え、窓越しに見えなくなるまで渚は手を振り続けてくれた。

私も負けんばかりに渚に向かって手を振り返した。


すごく寂しい。でもまた会えるよね。

胸を締め付けるような寂しさを抱え、アパートに帰宅した。

今日の思い出を思い浮かべる。とてもたのしく幸せを感じる。

そのまま眠りにつこうとした。その時電話がかかってきた。

こんな時間に珍しかった。電話番号は渚の両親のものだ。

嫌な予感がした。

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