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第九話: 隔離

動物園で会った日から、渚と会うことができなくなった。

動物園での不埒な行動がゴシップ屋に撮られ、両親が多額の口止め料を支払う羽目になったのだという。

権力者の孫で未成年、社会的に見ても私達は不適切な行動だったのかもしれない。

両親の怒りは当然で、許してもらえるわけはなかった。連絡すら途絶えてしまった。

でも渚からだったしのりのりだったし…と反論してもたいが、火に油を注ぐだけだろう。


そして二週間経ったが、渚と渚の両親とやりとりは一切ないままだった。

もう渚との接点は全くない。渚からも音沙汰はない。

会いたい。日に日に想いは募るばかりだった。

年端の行かない女の子にここまで気持ちが揺すぶられるなんて。

動物園で振れた彼女の温もりを思い出すたびに全身が焼けるように熱くなる。


向こうから来ないなら、こっちから行くまでだ


私は渚の住所を記憶に残していた。

サバイバルから生還したときに、救助隊が身元確認したときに彼女が書類に書き込んだ住所を

私は記憶に焼き付けていた。自宅に戻ってからも地図アプリで調べもしていた。

我ながらストーカー気質があると思うが、理屈では止められない。


返送のために帽子を深くかぶり、仕事用の眼鏡と厚手の服を着て向かった。

高い塀、生い茂っている林に囲われた大きな屋敷があった。

呼び鈴をならしたいが、連絡を禁じられている身だ。

監視カメラもついていて、近づくことも避けたい。


ならばと林の中に入り、館の中を覗いてみるが、渚の姿は見つけられなかった。

じっと時を待つことにした。

あの島での一周間に比べれば一晩の林の中の生活などたいしたことではない。

そして夜までまった。


館の二階の窓に渚の姿が見えた。外を眺めているようだ。

私は手を振る。暗闇で見えないようで大きく振ってはみたが、気づくそぶりはない。


そうだ火をつけよう。もしものためにライターを持ってきたのだ。

私は枯れ枝に火を灯した。不自然に揺らめく赤い光、そしてそれを大きく振る。


窓越しに渚が大きく身を乗り出し、手を振り返したように見えた。

そして渚の姿は消えた。

気づいてくれた?私は火を消して静かに待つことにした。

さっきまでと打って変わって待ち遠しかった。


ガサガサと、人が歩いてくる音がする。

大きな荷物を抱えた人影が転がるように現れた。

月に照らされて顔が見えた、それは渚だった。

頬が赤く目には涙が映っていた、美しい顔だった。


「渚ちゃん」

「灯さん!」

駆け寄った私は彼女を強く抱きしめた。渚も抱きしめ返す。荷物は手から滑り落ちる。

彼女の体は驚くほど柔らかく、香水の香りと、それを突き抜けるほど良い香りの彼女自身の匂いがした。


月明りの下でお互い見つめ合う。渚は眼を閉じた。私たちは顔を近づけた。


「本当に会いたかった」

「私もずっとずっと会いたかったです」

「よく見つけてくれた。一週間は待つ覚悟だったのに」

「火が見えたので、灯さんだとすぐにわかりました。」


そして彼女が落とした重い荷物に目をやった。

「この荷物は、もしかして…」

「今度は準備万端ですよ。次のサバイバルに出かけなきゃと思って」

渚はいたずらっぽく、けれど最高に楽しそうに微笑んだ。

私はその荷物の半分を持ち、彼女の手を握り締めた。

私たちの行く先は決まっていない。

けれど私たちはどこだって二人で生きていける。

新しい生活へと足を踏み出した。

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