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第五話: 二人だけの家

近くに助けを呼べるものはなかったので救助が来るまでこの場所で持ち堪えなければならない。

今は非常食があるけれど、それが尽きれば自力で食料を探さないといけない。

さらに天気も心配だ。今は快晴だが雨が降れば体は冷えるし焚き火も消えてしまう。

雨風をしのげる屋根のある簡易でも住居を作りたい。


手元にあるのは木の枝と葉っぱ、わずかな紐しか見当たらない中でどこまで作れるか。

原生林の中に行けばたくさんの木と枝は手に入るが、奥には危険な動物やいるかもしれない。

ポケットのアーミーナイフに手を触れる。もしもの時はこれで戦わないといけない。

考えても仕方がたない。行動しないと。


「渚ちゃん、簡易テントを作ってみよう思うの。」

私が提案すると渚はパッと表情を輝かせ、うなづく。

「私も手伝います。」

「じゃあ一緒に使えそうなものを探そう。あと食料探しも一緒にしよう。」

「はい!」

彼女の明るさに私の心も少しずつ軽くなり楽しくなっていた。


私たちは手を取り合い原生林の入り口へと足を踏み入れた。

地面に蛇がいないか慎重に確認する。小さい虫はたくさんいるが気にしてられない。

渚は服装からも奥深くに行けないし無理をさせないように森の手前で整地を頼むことにした。

彼女は木の棒をスコップのように使い、一生懸命に地面を均してくれる。


私は森の奥から太い枝を運び込み、三角の支柱を組んだ。

二、三人は入れる程度の空間を作ると壁には隙間なく木の枝を並べていく。

さらに並べた枝の隙間を埋めるように土と葉を塗り合わせた天然の粘土を塗りこんでいくことで

雨や風除けにできるはずだ。


気がつけば空は燃えるような夕焼けに染まっていた。

「今日はここまで。渚ちゃん、お疲れ様」

お互い泥だらけになった手を取り、一緒に海岸へもどる。

簡易テントの側はまだ十分に整地できておらず、壁もないからここで夜を過ごすのは怖い。

柵や壁の構築は明日だ。

渚は一日働いて疲れてはいたが、とても満足そうだった。


翌朝、渚の顔色が悪いことに気がついた。

「私も手伝う」と言うものの視線が定まらず立ち上がるとフラフラと足元がおぼつかない。


「昨日頑張りすぎたみたいだから、今日は休んでて。長丁場に無理は禁物だから」

しかし渚は変に興奮していて「それでも何かしたい」と聞き入れてくれない。

「わかった。じゃあテントのそばで住みやすい環境を作ってくれる?」

「うん!」

役割を与えられ、頼られて彼女は嬉しそうにうなづく。本当に良い子だと思う。


私が周囲の整地を終えて戻ると驚く光景が広がっていた。

テントの床には綺麗な砂が敷き詰められて、寝そべることができる空間になってた。

さらに地面には小さな穴が掘られ、空気の通り道まで用意された暖炉が用意されていた。

そこに葉と木の枝を入れて火を灯すと私たちの家に光が宿った。

渚はその火を満足そうに見つめた後、うとうとし始め、そして横になった。

よっぽど疲れたのだろう。ぐっすりと眠っている。


私は彼女を起こさないようにテントを出ると、この場で眠れるように付近に

木の枝で作った簡易的な柵や石を積んで作った石壁を作る。これで動物も簡単には近寄れないはずだ。

飲み水を入れたビニールを運び、テントに運ぶ。

これで今日はこのテントで過ごせるはずだ。

海岸の火は朝まで燃え続けられるように在らん限りの木と葉をくべておく。

船が近くに来たら気付ける明るさだ。


夜になった。私は焚き火を見ながらこの3日間を思い返す。

最初にこの場所にたどり着いた時には困惑しかなかったが、今は安心感と満足感があった。

何より自身が自分の頭で考えサバイバルできたことが自信となり成長を実感する。


「…うにゃ」

変な擬音と共に渚が眼を覚ます。

「こんばんは、ぐっすり休めた?」

「あ、夜だ。あ、お家ができてる」

「渚ちゃんが内装を整えてくれたおかげだよ。これからはここで住めるね」

気がつけば私は横になっている渚の頭にそっと手を置き撫でていた。

渚は驚いたように目を見開くが拒む様子はない。


「灯さんがここまで仕上げてくれたんだね。」

仕上げたと言えばそうだが一人ではここまでできた気がしない。

「二人で作ったテントだよ。よく頑張ったね、私たち」

私がそういうと渚は満足そうに微笑んだ。


その夜、私たちはテントの中で寄り添って眠りについた。

海岸だと焚き火を間にしていたから、ここままで密着したのは初めてだ。

何日も同じ服を着ているせいでお互い匂いはするが不思議と不快な匂いではなかった。

とは言っても明日は石鹸で体を洗うのも良いだろう。淡水を確保しないと。

非常食も少なくなっているが、隣にいる渚の体温を感じながら、

私は不思議となんとかなると思い始めていた。

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