第十二話: 年明けの決意
渚が連れ戻されて、年末に私は一人部屋に残された。
何もする気が起きない。
このままでは渚は結婚してしまう。大学に行かせてあげたい。私が幸せにしてあげたい。
私も渚と幸せになりたい。
しかし何もできることはなく、呆然とするしかなかった。
そして年が明けた。私はベットに横たわり天井を見上げていた。
その時、スマホが鳴った。画面に表示された電話番号は渚の両親のものだった。
通話ボタンを押すと受話器の向こうから母親の声が聞こえた。
「…先日は本当にごめんなさい。渚を無理やり引き離すようなことを」
「渚は元気ですか?どうしてますか」
「…ひどく落ち込んでます。でもあんなに激しく私たちに反抗するほど、あの子が力強く元気なのは初めてです…」
ひとときの間があった。そして渚の母親は震える声で切り出した。
「灯さん、渚にはあなたが必要なようです」
「…」
「明日からxxにある別荘へ向かいます。住所は後で送ります。」
「えっ、それって会っても良いと?」
「…あなたに任します。ただし、これで最後にしてください。
強く別れを告げてください。関係を終わりにしてください。」
「そんな」
「これが親である私たちのできる最後の譲歩です。これ以上は祖父が絶対に許しません。」
翌日、私は示された住所へ向かった。冷たい潮風が吹き抜ける海岸に立つ、瀟洒な洋館。
呼び鈴を鳴らす間もなく、重い扉が開いた。
「灯さん!」
そこに立っていたのは涙を浮かべる渚だった。
私たちは言葉を交わす間もなく、抱きしめあった。彼女の震えと熱が伝わってくる。
渚の両親は何も言わずに奥の部屋に消えていった。
私たちが二人だけになる時間を与えてくれたのだ。
別荘の窓からは、景観ががよく海や山並みが見えた。
部屋の中は高そうな家具や暖房設備、絨毯が敷かれていた。
最後にこんな素敵なところに二人で過ごせてよかった、と思いたかった。
しかし、砂にまみれの地面に横たわったり、肩を寄せ合って焚き火で暖をとっていた
あの島で生活していた時の方が何倍も自由で幸せだった。
その夜、私たちは最後に最高に熱い夜を過ごした。
暗闇の中、肌を重ね、互いの鼓動を確かめ合う。
もうこれで終わりなのかな。いや絶対に終わらせない。
私は彼女のそばで決意を固めた。




