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第十三話: 本当のサバイバル

別荘で目覚めた朝、暖かな光が二人を包み込んでいた。

隣には穏やかな表情で眠っている渚がいる。

二人で生きるためには私が彼女を救い出すしかない。


朝の支度をして渚と二人でリビングに向かうとすでに渚の両親は待っていたようにそこにいた。

不安そうな表情をして私と渚を見つめている。


私が渚を救い出すには彼女の祖父の望みを叶え、従うことも必要だ。ならば、

「私はこの後も渚さんと一緒に生きていきたいです。」

「…今日が最後という約束だったでしょ、お願いだから聞き分けて」

「聞き分けられるくらいの想いではないんです。だから代わりに…」

私は一呼吸置き、渚を見る。渚はじっと私を見つめてくれる。

微笑んで私を信じてくれている。私は両親に向き合う。


「私が渚さんのパートナーになって、血筋を絶やさないようにします。

彼女の重荷もやらなければならいないことも私はやり通します。」

私は両親に思いを伝えた。

両親の顔に驚きが走った。

「あなたではダメだ…自分でもわかってるでしょう?」

「分かりません。私が誰よりも渚さんを幸せにできます」

「お父様、お母様、お願い…。灯さんとなら私はどんな未来も怖くない。一緒に生きていきたいの」

震えながら真っ直ぐに訴える渚の姿に両親は驚いていたが、

暖かな表情に変わっていた。


「…そこまで言うなら、私たちもあなたなら渚を任せられます。

私たち以上にあの子に命を吹き込んでくれたのだから。けれど祖父が許さないでしょう。」

祖父の話をするときに両親は少し怯えた表情をした。

「認めてもらいます。仮に何度跳ね返されようとも」

両親は諦めたようにでも微笑みを浮かべた

「わかりました。これが最後のチャンスです。ですが祖父に認められないなら諦めてください。」

脅されるように言われたが、私は覚悟している。

渚の手をぎゅっと掴むと、渚もぎゅっと握り返してくれた。


私と渚は両親共に付き人の運転する車で祖父の元へ向かった。

車はかつて渚を連れ戻した時に行ったあの巨大な屋敷に到着した。

かつては林の外から見上げるしかなかったが、今日は内側へ通される。


そして一際大きな建物の中に入っていく。

両親が大きな扉をノックし、扉を開いた。

「二人を連れてきました。」

部屋の中では厳しい顔をした祖父がいた。到底許してしてもらえる雰囲気ではない。


「まだ、性懲りも無く関係を続けているのか。いい加減にしろ」

祖父の怒声が部屋に響く。

「私たちの関係はこれからも続きます。認めてください。」

「はぁ。一体なぜこんな不毛なことを。

お前たち、なんでこれを許して、ここまで連れてきたんだ」

怒りの矛先を向けられた両親は萎縮している。

私は一歩前に出た。


「お願いします、私たちを認めてください。後継者が必要なら私がその器になってみせます。

血筋も立場もなんとかします。」

「滑稽だな。お前に何ができる。」

「…少なくとも私は渚さんを幸せにすることはできます。」

「話にならん。君は女だ。男であればまだ利用価値はあっただろう」

祖父の嘲笑が突き刺さる。悔しさに視界が歪む。言い返せない。

自分の努力ではどうしようもない壁に絶望しかけていた。


「待ってください。」

その時、私の前に小さなけれど今は誰よりも強い背中が立ち塞がった。渚だった。

「おじい様、私も灯さんを愛しています。二人ならどんな困難も乗り越えられる」

渚は祖父の鋭い視線を正面から受け止めて言い放った。

祖父も両親もまさかのことで驚いている。


「あの日、海に落ちて死んでもおかしくなかった私に生きる力をくれたのは灯さんです。

私を連れ戻すと私は動かない人形のように生きるだけ。ずっとではなくていいです。

将来のことは私たちも考えるから二人で過ごす時間をください」

かつて病弱だった孫娘の劇的な変化、その生命力の源が目の前の女にあることを老人は感じ取ったのかもしれない。

祖父は考えていた。沈黙が流れる。


「…わかった。一時的に認める。」

一瞬、聞き間違いかと思った。祖父の口元には微かな笑みが浮かんでいた。

私は渚の方を見ると渚から私に抱きついてくれる。私もそれに応え抱きしめ返す。

そばに祖父と両親がいるにも関わらず気にせずに抱き合った。

祖父は不思議と満足そうだが、両親は不埒な行動におどおどしていた。


そして解放された私たちは元の小さなアパートへ帰った。

渚は猛勉強の末に見事に志望校へ合格することができた。

そして大学近くの少し広めのアパートへ移った。

祖父から与えられたのは卒業までの4年間の期限だ。

本当のサバイバルはこれからだ。

私たちは社会の荒波にのまれ、祖父の試練に耐えて生き残る必要がある。

それでも今の私たちに恐れるものはない、疑いもなく幸せに満ちた未来がある。

あの島で灯した火は今も私たちの胸の中で爛々と燃え続けているのだから。


おわり

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