不穏な風
シンク・スレイヤード7歳の誕生日。
この日は珍しく家族揃っての食事になった。
普段忙しくてあまり会えないハードリックとまず一緒に食事などしないカザリア、グシンもいる。
「兄上、もうすぐ入校ですね。おめでとうございます」
「ありがとうシンク。ちょっと緊張するけどね」
バースは今年12歳。
この国の貴族は13歳になると王都にある学園に通うことになる。
教育の目的もあるがどちらかというと人脈作りが主なので次期当主のバースには重要な期間となる。
「へっ」
グシンが馬鹿にしたような笑いを浮かべる。
こいつは今もスレイヤードの時期当主は自分が相応しいと考えている。
穏やかな性格の兄上が気にいらないのだろう。
確かに父上ももう少し覇気があればと言っていたが、
(グシン、お前は論外だ)
こいつはバースのように当主としての教養、知識を身につける訳でもなく侯爵家の立場を使って好き勝手している。
取り巻きの貴族を使って領民を虐げたこともあった。
そのあまりの放蕩ぶりにカザリアも最近はグシンを当主にしたいとは言わなくなった。
シュリに対する嫌味も収まったのでいい傾向ではある。
「父上、ディーンの様子が良くないと聞いたのですが」
作中で明確な時期は示されていないがディーン王国はもういつ動いてもおかしくない。
ロンクーに命じて探っているが限界がある。
この機にハードリックから情報を仕入れようと考えていた。
「シンク、お前が心配することではない」
「しかし、国境付近で不穏な動きがあると聞きました」
ハードリックの様子が変わる。
「どこで聞いた?」
「町で噂になっています」
「はあ、またお前は無断で町に出たのか」
「ロンクーが付いてます」
「そういう問題ではない。………まあいい」
ハードリックがため息をつく。
「確かにディーンの動きは活発化している。だがそれはここ最近のことではない」
気づけば全員が聞いている。
「国境近くの砦にはデュバルを入れてある。あいつがいれば安心だ」
デュバルはスレイヤード傘下の貴族でハードリックの旧友でもある。
国境のクーガ城砦は敵国と接していることもありかなり堅固なものだ。
ゲームでは敵に奪われており、プレイヤーが攻めることになるが確かに強固な要害だった。
それがこちらにあるというのは頼もしいが逆に言うとこれから奪われるのだ。
「まあ学園入学の前にバースの初陣は済ませようと思っている」
「父上?」
バースの顔に緊張が走る。
「そう構えるな。戦場の経験があった方が箔がついて学園生活も円滑になるだろう。その程度のものだ」
ハードリックが笑い飛ばす。
「あなた、大丈夫なの?」
普段あまりハードリックの決定に口を挟まないシュリだがやはりバースが心配なのだろう。
「初陣といっても国境をうろつく小部隊を突くだけだ。私も付いて行くから心配いらん」
「父上っ、俺も連れてって下さいっ」
グシンが急に名乗り出る。
安全が確保されて戦功を得られると知り便乗しようと考えたのだ。
「ダメだ。お前は残れ」
「何故ですか!?」
考えが見え見えだがらだ。
グシンは食い下がるが当然無視される。
(………どうするかな)
グシンではないができれば俺も今のうちに戦場を経験しておきたい。
だがまだ7歳のガキを連れて行くとは思えない。
「父上、私をクーガ城砦まで連れて行ってもらえませんか?」
考えた末、妥協案をとることにした。
「お前もか………」
ハードリックが呆れた声を出す。
「戦場までとは言いません。しかし私も将来は兄上の片腕となる身。戦場の空気くらいは感じておきたいのです」
「む」
ハードリックが考え込む。
元々俺に軍事方面を期待している以上意義はあるはずだ。
「わかった、私たちが出陣している間お前はデュバルに預ける」
「ありがとうごさいます」
頭を下げる。
「なら父上っ、俺も」
すかさずグシンが食いつく。
「………砦の中も戦場だ。勝手なことをすれば軍紀をもって処罰するぞ」
ハードリックの言葉にグシンがたじろぐ。
戦場となれば親子の情も及び辛くなる。
「は、はい」
ともあれグシンも付いてくるようだ。
面倒がなければいいけどな。
「あなた、私も行きます」
「シュリ、な、何を言うんだ」
さすがに予想外だったようでハードリックが慌てる。
「子供達の初陣。今回だけは一番近くで見守りたいのです」
常ならぬシュリの強い眼差し。
ハードリックは止めるが。
「これだけは譲れません」
その意志の強さに最新的にはハードリックが折れることになった。
「あ、あの、私は………」
「カザリア、お前はここを守ってくれ………」
「は、はい」
その言葉にカザリアが安堵の表情を浮かべる。
ハードリックはその反応が普通だと思った。




