世界はゲームでできている
説明回
ロンクーに死に場所を与えるという約束。
この時の俺が約束を果たせると確信を持っていた訳はその日から数日遡る。
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その日の俺はリキア王国について学びに車庫を訪れていた。
別に深い理由があった訳じゃない。
自分の所属する国のことなのだから少しは知っていた方がいいだろうという軽い気持ちだった。
だからまさか文字通り世界の真実に触れることになるとは思ってもいなかった。
違和感を覚えたのは王国の地図を見ていた時だった。
初めて見るはずなのに地名に覚えがある。
見る前から地名を言うことができる。
更に4大侯爵家の家名、スレイヤード、アルミス、オルディア、グラード。
家の名前単体では流していたが地理と合わせるとやはり既視感がある。
俺はこの世界を知っている。
その考えが確信に変わったのはとある村を発見したときだった。
ディパの村
スレイヤード領から少し東にいった場所にある非常に小さな村である。
吹けば飛ぶような弱小貴族の領地の一部で普通であれば目に留まることのない程の寒村。
だが俺はこの村を見た途端一つの言葉が浮かんだ。
「勇者………」
ここに勇者がいる。
俺の前世の知識がそう告げる。
まさかと思いながら周囲の国にまで視野を広げ俺は全てを理解した。
「この世界はゲームの世界だ」
かつて俺が生きていた世界にあったゲーム『閃光の軌跡』の世界とまったく同じだったのだ。
「王国だけじゃない、周囲の国の名前もわかる。もはや疑いようがない」
落ち着きを取り戻した俺は改めて地図を見ていた。
生まれ変わった時以上かもしれない衝撃だったがあることに気づいた。
ゲームのようにこの世界も進んでいくのかということ。
『閃光の軌跡』はよくある王道のRPGだ。
勇者が仲間とと共に戦い最終的には世界の危機に立ち向かうありふれたストーリーだ。
幸い俺にはこのゲームの知識が相当あった。
それが正しければ今後の俺にわかっているだけで二つの苦難が訪れる。
一つはもちろん世界の危機だ。
この世界には人類を滅ぼそうとする存在がいる。
もしゲーム通りに進むのであれば人類は滅びの危機に面していることになる。
だがその時はこちらにも勇者の存在があるはずだ。
物語通りに進め世界を救って貰えばいい。
対処法はある意味明確だ。
だがそれでは解決しない問題があった。
それが二つ目の苦難。
一つめに比べてスケールは小さい、だが俺にとっては生死に関わる問題であった。
ゲーム自体は13歳になった主人公の村に西の隣国ディーンの兵士が襲いに来るところから始まる。
チュートリアル戦闘みたいなものでここで主人公が勇者の力に目覚める。
その力で敵兵を退けた主人公は王立の学園へ入学が認められ、仲間と出会い強くなっていく。
それはいい。
ここで問題なのがスレイヤード領の西にあるディーン王国の兵士が東のセス村を襲っているのかということ。
ゲームでは勇者の出現を知ったディーン国王が停戦を申し出リキアも態勢を立て直すためこれを受ける流れとなる。
この時の国境線はセス村の西。
つまりこの時点でスレイヤード領はディーン王国に攻め取られているということになる。
俺のいるスレイヤード家はゲーム開始時に滅びているのだ。
詳細は公式で語られていないのでわからない。
家族の生死すら一部を除いて不明である。
この件に関して勇者は当てにならない。
家族を守るためには俺が死力を尽くすしかない。
理想は敵の侵攻を押し返すこと。
だがこれはガキ一人増えたぐらいでどうにかなるものではない。
ならば最低ラインとして家族を守って逃げる。
残された時間としても可能性があるのはこの辺りか。
できると信じて目指すしかない。
偶然か必然か俺は『閃光の軌跡』をやり込んでいたらしい。
他にも知っているゲームに比べて覚えている知識が桁違いだ。
「やってやる。なんの因果でこんなとこにいるか分からねえけど思い通りになると思うなよ」
問題は多い、それでもやらなければならない。
「まずは自分が強くなること。そういう意味でロンクーの指導を受けられているのは大きい」
ゲームでもキャラクターの成長はかなり自由だった。
その知識も役立つかもしれない。
「ゲームに登場した時のあいつの年齢は確か………」
今後に思考を巡らせる。
勇者なんか待っていられるかよ。




