歴史が動く時
多忙で全然投稿できません。
今後も自己満足的な投稿になってしまいますが、それでもよければ見ていって下さい。
スレイヤードとグラードの若き当主による一対一の会談が行われた。
王都の姿は常と変わらない。
しかしそこに凄む者たちには大きな変化を与えていた。
翌日、スレイヤード家とグラード家の当主が改めて直接和解を約束したという話は貴族の間に瞬く間に広がった。
両者としても別に隠すことでもなく、フェリオの方は貴族を牽制するために積極的に流布していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お父様っ、どういうことですか!?」
そんなフェリオはまたも娘に詰め寄られていた。
「どうもこうもない。お前には関係のない話だ」
アルテナは父が仇であるシンク・スレイヤードと和解を約束したと聞いて父の執務室に駆け込んできたのだ。
折しもちょうどフェリオが腹心の者たちに指示を出そうとしているところだった。
「関係ならあります! 相手はお爺様の仇なのですよ!」
真実を知らないアルテナからすればそれが事実。
彼女にとって今の父親は仇に迎合しているようにしか見えなかった。
「何度言えばわかる。お前が関与する話ではない」
フェリオはまだ幼いアルテナに祖父の汚れた話は聞かせたくなかった。
もう少し分別がついてからあらためて話すつもりだった。
しかし、顔を合わす度に騒ぎ立てる娘にやや辟易していた。
「出て行きなさい」
「でもっ………」
「聞こえなかったのか?」
珍しく冷たい父の言葉に唇を噛み締めながらアルテナは部屋を出て行った。
「ふぅ。しょうがないやつだ」
フェリオは深いため息を吐いた。
「ははっ、父親ってのも大変ですね」
フェリオの側に立つ大男が茶化すように言う。
「うるさいぞ。アルバンド、お前にわかるか」
「そりゃ、俺は結婚なんてしてませんからね」
アルバンドの言葉は主人に対するものとは思えない。
しかしそれを咎める様子は誰にもない。
「お嬢様に真実を知らせるべきでは?」
臣下の一人が提案する。
「それも考える必要があるな。だが今優先すべきは別にある」
部屋にある者たちが頷く。
「父に近かった傘下の貴族が失脚し、スレイヤードとの確執が一先ず落ち着いた今、領内の不穏分子を取り除く絶好の機会なのだ」
「こう言ってはなんですが、スレイヤードとの和睦がよく成立しましたね」
アルバンドが興味深そうに問いかける。
「ああ、スレイヤードもこちらと同じく爵位継承後の領内の掌握を優先させたのもあるが、当主であるシンク殿が理知的な人物であったのが大きいだろうな」
「へぇ、シンク殿、ですか?」
「まだ子供と侮れば容易に足元を掬われるだろうな。あれでアルテナと同じ歳というのだから世の中わからない」
「へぇ、随分と買っておられるのですね」
「可能であればこれからもスレイヤードとは争いたくはないな。そのためにある程度要求は受け入れるつもりだったが………」
「何か問題でも?」
「いや、要求してきたこと自体は難しいことではない。ただ、変わった内容だった」
「どんな要求だったんですか?」
臣下の一人の質問にフェリオは答える。
「我が領土にあるディバという村を知っているか?」
「ええ、スレイヤードとの境に最も近い村ですな」
「その周囲の地域で人材を集める許可が欲しいと言ってきた」
「………はぁ?」
アルバンドが思わず声を上げる。
「………失礼。その要求はどういうことなんですか?」
「分からん。ただ今回のことで失った人材の補充がしたいと言っていた」
フェリオの言葉に納得した様子を見せた者はいない。
フェリオとてシンクの真意を見抜けていないのだから当然の反応だった。
「その言葉に嘘はなければ領地の割譲を要求しそうなものですが」
それなら人も含めて全てスレイヤードのものになる。
こちらに気兼ねする必要もないはずだった。
「………正直シンク殿の真意は読めん。だが今はまず彼と手を結ぶことが大事なのだ」
「では要求を認めるので?」
「ああ、スレイヤード領が落ち着いたら書簡が届く。その時は快く迎えるのだ」
フェリオの言葉にアルバンドも含めて臣下たちが頭を下げた。
「………許さない。スレイヤードの企みは私が潰してみせる」
部屋の外に気配に誰も気づくことはなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
とある村。
そこに住む一人の少年がいた。
「でりゃあぁぁぁぁぁぁ」
まだわずか7歳。
しかし、彼は村に現れた魔物に怯むことなく斬りかかる。
「ギィィィッ」
一体また一体と次々に魔物を屠っていく。
魔物中で最弱言われるゴブリンといえど子供が簡単に倒せるものではない。
「す、すげぇだ。ロラン、また強くなっただな」
「へへ、こんなの大したことないさ」
ゴブリン達を一掃し、友と笑い合う。
ディバの村で神童と呼ばれる少年ロラン。
いずれ勇者と呼ばれる彼の物語も今静かに動こうとしていた。




