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勇者なんて待てるかよ!!  作者: 星屑
第二章
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王城問答(陥穽)



フェリオは黙ってその場を見ていた。

今日この場はシンク・スレイヤードの非を追求するために用意された舞台であったはず。

国王であるデルウッドと共に万全とは言えずとも準備は怠らなかった。


しかし今目の前で繰り広げられている光景はどういうことか。

シンク・スレイヤードがデルウッドに迫っている。


確認と言いながらもシンクの言葉はデルウッドを非難していた。

それも今回我らグラード家が追求したかった当主ヘイゲルの死の責任をも暗に王家にあると言っているのだ。


自身は兄の死を悼み、それに憤って見せることで完全に疑いを逸らしている。

フェリオは知らず身震いをした。


「へ、陛下………」


哀れにもゾンドが情けない声を出す。


そうだ。

たちが悪いのは今回シンクがデルウッドに逃げ道を用意していることだ。


「………確かに私は無益な争いを避けるために後継者争いを禁じた」


例え誘導されていると知っていてもデルウッドは選ぶしかない。


「だが私は使者のやりとりまで禁止しろと命じてはおらぬ! ゾンド、お前の軽挙が取り返しのつかない事態を招いたぞ!」


激昂するデルウッド。

それが演技とわかる者にはわかる。

だが指摘するものは誰もいない。


「ゾンド。お主への沙汰は追って言い渡す。衛兵、捕らえよ」

「へ、陛下!」


言葉を許されることなくゾンドは連行されていった。





「………シンクよ。使者の独断とはいえ、私の配慮が足りなかった。許してほしい」

「いえ、私こそ少しでも陛下に疑念を抱いたことをお許し頂きたく思います」


白々しいやり取りが行われる。

どちらも真実が別にあると気付いている。

だが誰も何も言うことはない。


これでスレイヤード継承問題についてはゾンドの暴走が原因と片付けられる。

王家もグラード家もスレイヤード家も責を追うことはないが、間違いなくこの場で勝ったのはシンク・スレイヤードだ。


デルウッドはシンクの助け舟により責を逃れた。

今後は間違いなくシンクに遠慮せざるを得ない。


グラード家もこのままでは何も残させない。

ヘイゲルの死で影響力は失われていくだろう。



だがフェリオはそれでいいのではないかと考えていた。

シンク・スレイヤードは間違いなく父と同じかそれ以上の怪物。

この僅かな間で自分では遠く及ばないと痛感させられた。

確かに父は死んだがそれ以上のことはない。

あとは自分が少しずつ立て直していこう。

そう考えを変えていた。


「陛下! お待ち下され!」


だが今までの立場を簡単に捨てられない者たちはいる。

声を上げたのは父の下で権力を行使していた貴族の一人だった。


「例え事故であるとしてもスレイヤード家が原因でヘイゲル様がお亡くなりになられたのは事実! なればシンク殿とスレイヤード家にも相応の処罰がなければ我々は納得できませぬ!」


そうだそうだと貴族の一部から声が上がる。

全て父の深い繋がりがある者たちだった。


「む………」


デルウッドは押し黙る。

先程の問答でシンクを敵にすることを少し躊躇ったのだ。


「あなた方はヘイゲル候と親しかったのですか?」

「無論だ! 我々はヘイゲル様と共に国難に当たっていたのだ!」


彼らはシンクの問いに高々と答える。

フェリオは嫌な予感がした。


「皆さま、今回は不幸な事故でした。グラード家はこれ以上追求致しません」


咄嗟に出た一言だった。


「何を弱気なことを! ヘイゲル様は誰よりも国家のために働いておられた! 我々はそれを側で見てきたのです!」


フェリオの言葉でも彼らは止まらない。


「ではあなた方はヘイゲル殿の考えを全て知っていたのですね?」

「何度も言わせるな! 我々よりヘイゲル様を理解していた者はいない!」


その時フェリオにはシンクが笑ったように見えた。


「なるほど。確かにヘイゲル候の死はスレイヤード家が原因であったかもしれません。ヘイゲル候が不運にも巻き込まれてしまったというのなら貴方方の言い分ももっともでしょう」


シンクの言葉に勝ち誇ったような笑みを浮かべる貴族達。

フェリオはその愚かさに呆れていた。


(彼らは先程の光景を見ていないのか!?)


いくらヘイゲルの死に動揺しているのはいえ、自分の傘下の貴族の盲目さにフェリオは頭を抱えたくなった。


「しかし」


淡々と冷たい声が響く。


「それはヘイゲル候に非が無い場合の話ですね」

「な、何を言うか! 貴様は自らの責任をヘイゲル様に転化する気か!?」


シンクは怒声にも怯むことは無い。

それどころか先程と同じ。

貴族の方を見てすらいない。


「陛下、証拠を提出したく思います。御許可を頂きたい」

「うむ」


デルウッドの許可を得て、シンクは小さな魔道具を取り出した。


「あれは………」



シンクの手にあるのは会話を記録するための魔道具。

既に製造技術が失われた魔導具の中で比較的多く現存するものだ。

それでも捏造を許さない記録は外交の場などで大いに活用されていた。



何が記録されているか。

その場にいる全員が注目した。

聞き覚えのある起動音とともに音声が再生された。


『くそ、ふざけんなよ!!』


聞こえてきたのは聞き覚えのある声。


『ディーンの野郎約束を破りやがって。これじゃ親父を殺した意味がねえだろ!!』


その瞬間謁見の間に動揺が広がる。


『親父たちを国境に向かわせてこの砦をくれてやれば俺がスレイヤード当主になれるって話だっただろ!!』


もう聞くこともないと思っていた甥の怒声を聴きながらフェリオは全て諦めた。



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